昨日は家族サービスの予定だったが、急遽Oさんから支部に行くと連絡を頂いたので、僕も例会に顔を出す事にした。
娘がお手伝いしたいというので、一緒に用事をしていると出発の時間を少し過ぎた。
嫁に帰りロールケーキを買って来てくれと頼まれる。
30分遅れで支部に到着すると、いつものじいさんは指さずに隣の対局を観戦していた。
前と比べて弱い子供が少なくなったように思う。
じいさんとよい勝負の子供はほとんどいなくなっていた。
僕と5局ほど指して、じいさんは帰っていった。
なぜか最近、そのじいさんと自分の父が重なって見える時がある。
前回に続き普段見ない子が何人かいた。
また隣の支部が休みなんだろう。
その支部の子らは段級のわりにめちゃくちゃ弱い。
あくまで僕の推測に過ぎないが、教える側の肩書と、本当の棋力に差があるとこの現象が起きやすい。
前回に続き有段者の女の子と2枚落ちをしたが、定跡手順を一切踏まない。
それで勝てるなら問題ないが、まず不可能だ。
その子の2枚落ちという申し出を聞いて、前回僕が勝った事を知らない支部長はあきれたような声をあげたが、これでもまだ手合いが違う。
中盤で負けない形となったが、最後緩めて勝ちを譲った。
これは僕の悪いクセかもしれない。
同じ支部で5級だという子と指す事になった。
その子は負けたくないらしく、席に着くまでなにやらウダウダと言っていた。
その子に支部長は最高に気の利いたアドバイスをした。
「じゃあ絶対勝てる手合いでやったら?」
絶対勝てる手合いってなんなん?
僕は思わず横で指していたAちゃんに、冗談めかしてこぼした。
その子がやって来て、僕に元気よく言った。
「裸玉!」
いやもう帰れよ……とはさすがに言わなかったが、そんな気持ちにはなった。
んじゃ8枚でやる?というと、その子は食い気味に「うん!」と答えた。
負けるはずないと思ったのだろう。
実際5級相手だと僕も8枚ではきつい。
しかし、A支部の5級である。
10手進んだあたりで、その子は1つ手順前後をした。
それは悪手ではなく、数手後にはもとの形に戻る一見何でもない手なのだが、その子の将棋を測る目安になる。
ああ、これは負けないな、と思うには十分だった。
40手くらいで必勝形となったので、僕の持ち駒の金をあげると、嬉しそうに受け取った。
僕はどうでもよくなると駒をじゃんじゃんあげて勝たせるので、まぁ絶対勝てる手合いではあった。
おそらく平手でも負けただろう。
この支部に行ってしまったHちゃんの行く末が気になる。
帰り、教室内の時計が止まっている事に気付かず遅くなってしまう。
外が薄暗い。
携帯のメッセージには、ケーキやっぱりいりませんとあった。