本のレビューを真面目に書いてみようと思います。

「東北のハワイは、なぜV字回復したのか」
 

閉塞した今の時代に、
企業が復活するためのヒントが書いてあるように感じ、

手に取りました。

 



「炭鉱から、観光へ」

 

石油へのエネルギー変革の波に飲まれ、

存亡の危機となった福島県のある町を救った、

本当にあった「復活ストーリー」。

 

常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)の起こりは、

そんなふうに語られます。

 

そして、東日本大震災。

 

2度目の危機を迎えたハワイアンズは、懸命の努力の末に

またしても復活を遂げたわけですが、そこに隠された秘密を紐解く、

というのが、この本の主旨であろうと思います。

 

その多くの部分を、この会社の

歴代のリーダーにスポットをあてて紹介しているのですが、

私は正直、違和感を覚えました。

 

優れたリーダーというのは、どんな企業にもいます。

そういうストーリーはたくさんあるし、

そんな本も巷には溢れています。

 

優れたリーダーがいることは必要ですが、

しかし、すぐれた結果を残すことができるかどうかは、

主体性をもって実施する現場の人々がいるからであって、

奇跡というのは、リーダーと同じくらい重要な「現場の人々」がいるからこそ起こるのです。


スパリゾートハワイアンズの復活劇(V字回復)の要因は、

実は言い出しっぺのリーダーだけにではなく、

それを敢行して行った現場の人々の「心意気」にこそあるのであって、

ハワイアンズを題材にするからには、

そここそが「V字回復の秘密だ」として、
スポットライトを当てて欲しかったと、私は思うのです。


 

時代はすでに、優れたリーダーを要求してはいません。

声の大きいリーダーがいても、どうにもならないのです。

 

これからの未来を変えて行くのは、実はひとりひとりの「普通の人々」です。

普通の人々が、その平均性能をあげ、底力を発揮することでしか、

物事が動いていかないのは、自明のことと思います。

 

優れたリーダーによるサクセスストーリーが旧世代のものになってこそ、

新しい扉が開かれるのだと思っています。

 

 

スパリゾートハワイアンズを運営する常磐興産という会社には、

「一山一家(いちざんいっか)」という言葉があります。

 

携わる人はみな、助け合い、協力し、ひとつの山を守る家族なのだ、

という、現代の資本主義の中でははなはだ時代遅れに見えるこの言葉にこそ、

未来を切り開いて行く秘密が隠されていると、私は確信しています。

 

これから日本人が向き合う、人類が向き合うさまざまな課題は、

そういう発想でなければ解決できないからです。

 

この言葉にこめられた言葉は決して大同団結のような単純なことではなく、

「ひとりひとりが主体であること・その集合体が力を発揮する」

ということです。

 

そして私は、そのマインドと「東北人の気質」というのが

深く関わっているのだと思うのです。

 

ハワイアンズは東北・福島県にあるからこそ、

ハワイアンズ足り得たのだと思うし、それを可能にしてきたのは、

結局、ひとりひとりの名もなき「ひと」なのだと思います。

 

もちろんリーダーは必要です。

でも、リーダーだけがいても仕方がない。

 

優秀な現場の人間だけがいてもまとまらない。

 

向かうべき道を示すリーダーと、

志を同じくする人々が信頼で結び合って、

お互いに引っ張られながら前に進んで行くことこそが、

常磐ハワイアンセンター・ハワイアンズというモデルケースだと

私は思っています。

 

そこに、東北から学ぶこともあるように、私は思っています。

 

そして、それこそが、いま、企業や、

そのリーダーたちが見つめ直すべき視点なのだと思います。

 

それは、企業が存続するためではなく、

企業に携わるものたちが、生きがいを持って、

幸せに生きるための器となるためです。

 

ちょっと辛口ですが、正直に私が思った感想は、こうです。

皆さんも是非、手にとって読み、ご自分の感想を持っていただければと思います。