この人間社会に存在する「問題」というのは、
すべて「人間の問題」だと思うのです。
そして、「人間の問題」というのは、つきつめていくと
「人間のココロの問題」であるというところに辿り着くと思っています。
ということは、つまり、「ココロの問題に対処する」ということこそが
人間の問題を根本的に解決する方法なんじゃないのかなって
思うに至って、もう何年も経っています。
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ちかごろ、自己啓発とか、心の悩み相談とか、
そういう発信がものすごく増えていると思います。
そういうものの多くは、自分を認め、自分を許し、
頑張った自分を癒すことでやる気を出させたり、
この世の中とうまくやる、というようなもののように、私には感じます。
そういう自己肯定の中で、
「怒りたいときには、怒っていいんだよ」というような考え方に対して、
私はずっと「なんかちがうんじゃないかなぁ」と感じていました。
なんでか、というと、人間が苦しいのは、
つまり苦しみの根源にあるのは、
「自分の主軸がいつも自分にあるから」なんだと思うんですよね。
「自分が、自分が」という感情のことです。
そして、「自分の主軸が自分である」ということから生まれる
「他者への怒り」という感情が、
人間社会をズタズタにしているように思っているのです。
つまり、「ココロの問題に対処する」とは、
いかにして「怒り」という感情に対処するか、
具体的に言うと、「怒りをいかにスルーするか」という
スキルなのだと思うのです。
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自分の感情というものと、自分の存在は、
一体のものだと、普通は思われています。
「いま、私が怒っているは、私が怒っているからだ。」
誰だって、ふつうはそう思います。
疑問すら抱かないですよね。
けれど本当は、感情を持つ自分より
もうワンサイズ大きな自分がいるんですよ。
感情の自分は、その大きな自分の中に入っているのです。
ふつうは感情が高ぶると、心がいっぱいいっぱいになるので、
その外側に、大きな自分の存在があるということは、気づきにくいのですね。
人によっては、一生気付かずに終わる場合もあると思います。
でも、いるんです。本当に。
私も最初は気づかなかったけど、今は気づいています。
確かにいます。
「感情の自分」よりももうワンサイズ大きい、「大きな自分」が。
でも、その存在を感じるスキルを磨かないと、見えなくなってしまうんですよ。
これは、スピリチュアルな話ではありませんよ。
誰の心の中にもデフォルトで備わっている「機能」の話です。
で、ですね。
「感情の自分」というのが、自分を苦しめる自分です。
「大きな自分」というのが、「感情の自分」から自分を解放して
ラクにしてくれる自分です。
つまり、「自分」というココロの主導権を、「感情の自分」に握られていると、
人は苦しむことになってしまうんですよね。
※
じゃぁ、苦しまないために、どうすればいいのか。
感情の自分が、「腹が立つ」とか、「悲しい」とか、
なにやらネガティブなことを言い出して騒ぎ出したら、
その声が大きくなる前に、
大きな自分が「大丈夫、大丈夫!へーき、へーき!」と対処してあげると、
感情の自分は静かになります。
このとき、できれば心の中で具体的なイメージを持つといいと思います。
自分のイメージしやすいビジュアルをイメージすればいいのですが、
例えば、感情の小さな炎がロウソクに灯ったなら、
それを「フッ」っと吹き消してしまうとか。
感情を言葉にしたメールを、送信せずに消去する、とか。
このとき感情の自分に対して、
「どうして怒ってるの?」とか、
「怒っちゃダメだよ」とか、そんな声かけをしてはいけません。
「怒り」という感情に取り合わない、ということが重要なのです。
「怒り」の存在そのものは無視しません。
「怒ってるの?そっか、怒ってるんだね。」で終わりにするのです。
そのあとに言葉をつづけたくなっても、そこで終わり。
あとは空っぽにするのです。
「そっかぁ、俺は腹が立ったんだね。そうだったんだね。」
ただ、そう言って、あとは空っぽにする。
火を吹き消す。消去する。
心を静かにして、しばらくジッとしていればいいのです。
ゆっくりと呼吸だけはしますが。
そうすると、本当に負の感情は、走り去っていきます。
そのとき、去っていく負の感情を、決して自分から追いかけていかないこと。
これ、だいじです。
※
これが、感情を理性がコントロールした状態と言うのだと、私は思うのです。
これがやれるとですね、精神のステージがワンランク上がったように感じて
実はとても気分がいいのです。
それと、このとき、実は
「自分の主軸が、感情の自分から、大きな自分にズレている」
ということに気づくでしょうか。
これが重要なんですよね。
大きな自分は、常に穏やかな自分です。
思いやりがあって、人の立場になれる自分です。
「あいつはけしからん!」と感情の自分が叫んでも、
「あいつも、つらいのかも知れないよ」と視点を切り替えられるのが
大きな自分です。
少なくとも、自分の感情が高ぶりそうになったとき、
大きな自分の存在を意識できると、30分後の未来は変わると思います。
実はこれは、禅の考え方です。
完璧にはならなくても、意識していると
本当に気持ちが穏やかになっていきますから、是非、お試しください!

