私の先輩にこの言葉をよく使う方がいます。


 その先輩は救急救命士で、1期先輩です。


 仮にKとさせていただきます。


 私の職場は県内では一番大きく、職員数も多く、中核として他の消防本部から頼られる存在です。



 で、そのKは「うちの消防はでかいんやから、手本にならないといけない。誇りを持て!」と、よく喝を入れてきます。


 でもある日、1泊2日で42キロの山道を走るという訓練がありました。


 その日は大嵐で、途中ホースを担いだりしながら、仲間と助け合いながらいく、キツイ訓練でした。


 足を痛めてる人や、足からのケガで靴が血まみれの人もいるなか、ようやく訓練が終了しました。



 出発した翌日にゴール地点に到着し、ご飯を食べてみんなでロビーで休憩しながらお迎えのバス待ちをしている時でした。


 私は出入り口付近の長椅子でKと向かい合わせに座り、クタクタでお腹いっぱいでボーっとみんなの話を聞いていました。


 ロビーには約50人近くの新人消防人がいました。


 

 そんな中、ふと皆の方を見ると、皆が私の方を見ていました。


 私は「なんだろう?」と思いよく見ると、私の奥に皆の目線が集中し、シーンとしていました。



 私が振り帰ると、出入り口の自動ドアを出てすぐの段差で、おばあちゃんがつまづいてこけてつっぷしていました。


 ビックリしてもう一度振りかえると、だれも動かず白い目で見ていました。



 私は急いでおばあちゃんに駆け寄って、起こして怪我の有無を確認したりして少しお話をしました。


 その後、戻ると、皆なにごともなかったかのようにお話をしていました。



 失礼ですが、私は彼らを消防人としては認められない、尊敬できないと思いました。


 知識も経験も体力も応用力もなにもない新人消防人の武器は、ただ一つ。


 「人を助けたい」と思う気持ちだけですよね?



 救急救命士で知識も経験もあっても、女の私より体力もあっても、119番で指令が入らなければ人を助けない消防人なんて、消防人じゃないです。


 消防人の原動力は、「人を助けたい」という気持ちです。


 人を助けたいからこそ、訓練するし、水利調査するし、休みの日も訓練するし、休みの日も非常召集が入れば飛んでくるし、日々勉強をするし、知識を得ようとする。


 でもKはきっと消防人になった自分が好きなんだと思います。


 消防人になればカッコイイと思ってる。



 でもそれは全然違う。


 そんなのダサダサ消防人です。


 だから私はKを先輩だとも思ってないし、消防人とも認めていません。


 その場にいた消防人全員を認めていません。



 べつの先輩にもいます。


 もし自分の目の前で事故が起こっても、自分は何にもできんしって平気で言う先輩が。


 私はそれは違うと思います。



 事故ってケガしてるかもしれないし、もしケガしてなくても、不安だったり怖かったりパニクってたりするかもしれないじゃないですか。



 そんな人に「大丈夫ですか?痛いトコrはないですか?今から警察と消防に連絡するんで座っておいてくださいね。もう大丈夫ですからね。」って声をかけてあげるだけでも、きっと安心感を与えてあげられる。



 救急服を着てるときに司令室から指令がなければ出動しない救急救命士なんて、役立たずです。


 初心を忘れるべからず。


 消防人の根本を私は忘れないようにしたいと思います。



 私はぜったいKを消防人としては認められない。


 彼には人間としての優しさがないです。



 私の同期は言います。


 「風邪ひいたらおこられる」と


 確かにきつきつの人数でしてますが、仲間をいたわってあげられない人が、他人を心からいたわってあげられるハズないじゃないですか。



 私は教官に言われました。



 知識や技術はもとより、消防人としての心を学んで欲しいって


 私はそれが学べてるって



 その初心を忘れずに、頑張っていきたいと思います。




 消防人を目指してる方々へ


 技術や知識は絶対身につきます。


 そんなコトより、仲間や管内の人達を守りたいという初心を絶対忘れないで、カッコイイ消防人になってください。