アシュラ | be careful not to trip

アシュラ

1970年に発禁処分となり賛否両論を巻き起こした
漫画家・ジョー­ジ秋山氏の原作漫画をアニメ化した映画です。
15世紀中頃、飢饉や戦で食糧のない時代に、
ただ生きるためにやむなく人を殺し食べる主人公アシュラが
絶望の中で見いだす運命が描かれています。

キャラクターは氏の作品らしいのですが、少し苦手でした。
ですが、背景は大変に素晴らしかったです!(よくあるパターン)
冬から春に季節が変わるシーンを、鳥瞰で表現したシーンは格別です。

原作と映画の内容は大分異なるようです。
漫画は読んでいないので感想のしようもありませんが
映画は、良かったです。
内容は陳腐ではありますが、分かり易くシンプルに表現されており
メッセージが受け取り易かったです。

以下も転載ですが、この文章を読んで興味が湧いたことが
この映画を見る切っ掛けとなりました。

飢えと殺人と人肉食が繰り返される......日本の少年誌ではもう見られないであろう『アシュラ』が描いたもの

今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!『アシュラ』は1970年から「週刊少年マガジン」(講談社)で連載されたジョージ秋山のマンガだ。このマンガのテーマは、人類最大のタブー、"人が人を食べること"である。
 
人肉食には2つのパターンがある。1つ目は、人肉に特別な思い入れがあって食べるパターン。佐川一政がオランダ人を食べた『パリ人肉事件』などはもろにあてはまる。宗教儀式で食べたり、薬効をもとめて赤ちゃんの死体を食べたりするのも、このパターンだ。2つ目は、ほかに食べるものがないので、仕方なく食べるパターン。遭難して人肉を食べたり、飢饉による飢餓で人肉を食べる。趣味趣向はなく、しかたなしに人の肉を食べる場合だ。『アシュラ』では、2つ目のパターンが描かれている。舞台は平安時代であり、猛烈な飢餓のシーンから始まる。

死屍累々、腐った死体が転がる描写が10ページ以上続く。少年誌ではもう2度と見ることがないであろう地獄絵図である。18ページ読み進めて、ようやく生きた女性が登場する。やっと出てきたマンガ的キャラクターだけど、もろに狂っている。「ガハハ ガハハ」と笑いながら人肉を食べて、犬のションベンを飲む。しかも妊娠している。人肉を滋養にして、子供を産む。出産後は乳をやって育てるが、それでも食べる物がなくなってしまい、飢餓のあまり、子供を火にくべる。その悲惨な子供が主人公、アシュラである。

......数あるマンガキャラクターの中でも、屈指の悲惨な産まれである。死んだ母親から生まれて、育ての親に売春をさせられてたベルセルクのガッツですら、いい生まれに思えてしまう。奇跡的に生き延びた子供は、やっぱり死体を食べながら、残酷な時代を生き抜いていく。1話目から強烈すぎる内容だったため、1話目が載った「週刊少年マガジン」は全国的に有害図書指定され、未成年の販売が禁止された。ジョージ秋山は『アシュラ』の直前に、これまた大問題作の『銭ゲバ』を「週刊少年サンデー」で書いていたところだったということも、問題が大きくなった一因だったと思う。

しかし、そんなに大問題になったのに、2014年現在子供もふくめて誰でも読めるようになっている。そればかりか、『アシュラ』は2012年にアニメ化されているし、『銭ゲバ』は2009年に映画化されている。本当にひどい内容だったら、たかだが40年で処置が変わるとも思えない。騒がないでもいいことで、大騒ぎしただけである。発禁だの有害図書だの騒いでる連中は、今も昔も、しょうもない人たちなんである。(拙著『こじき大百科』が発禁になってるから言ってる訳ではないよ!!)とまあ、それはさておき、大問題になった『アシュラ』であったが、連載は僕が生まれる1年前に終わっている。『アシュラ』の存在を知ったのはたしか中学生くらいで、『銭ゲバ』『アシュラ』共に幻の作品になっていた。読めないとなると、読みたくなるのが人の情。学校近くの古本屋を回って探したが、なかなか見つからなかった。『銭ゲバ』はなんとか中学の頃に読むことができたが、『アシュラ』を初めて読んだのは、社会人になってからだった。

今回久しぶりに読み返して、冒頭のナレーションがすごくキツイことを言ってるな......と思った。鯉の共食いを見た話からはじまり、戦争中に人肉を食べた人の話題になるのだが、「その人はさいごにこういった 人肉を食べたのは正当防衛だと.........その人はなんとも下品な目をしていた」と締めくくっている。人肉食を扱う場合、カルネアデスの板が引用されることがある。カルネアデスの板とは、船が難破した時、板にしがみついてなんとか助かっていた男が、その板にしがみつこうとするもうひとりの男を水死させてしまったという話だ。この場合は、罪には問われない。つまり緊急避難、正当防衛の話だ。となると、緊急時なら人肉を食べても仕方ないんじゃないか? と思うところだが、アシュラは冒頭で「どんな状況だったとしても人の肉を食べたという業から逃げられると思うなよ」と釘をさしているのだ。

舞台設定として、飢饉が利用されるケースはまれにある。例えば手塚治虫の『どろろ』でも、どろろの母が、炊き出しの粥を素手で受けてヤケドを負うシーンは印象深い。ただ、それでもやっぱり舞台装置なのだ。物語に深みを与えるための、いち要素にすぎない。物語が進んでいくと、飢餓については描かれなくなる。妖怪を追いかけてる時に、いつも「腹減った~腹減った~」と言っていたらうっとうしいことこの上ない。しかしアシュラは飢餓、人肉食そのものがテーマだから、いつまでも飢え描かれ続ける。1巻前半の悲壮感は素晴らしい。

とある家族が飢餓によって崩壊していく様子などがリアルに描かれている。母親が死の間際に、自分の肉を食べるよう子供に言うシーンは強烈だ。ただその後、アシュラが散所(子供に強制労働させる場所)に入ってからは、物語は急に失速する。仲間ができるし、アシュラも言葉を話すようになる。アシュラの父親や母親、マドンナ的存在の女性まで登場し......なんだか普通のマンガになってしまうのだ。アシュラのセリフ、「生まれてこなければよかった」「なんでこんなめにあったおれが人間らしく生きなきゃならないんだギャア」という叫びも、平安時代の飢餓にあえいでる子供の言葉とは思えない。なんか、昭和の子供の泣き言って感じなのだ。

愛に飢えて泣くアシュラを見ても、なんだかあまり同調できない。死ぬか生きるかの飢えの時に、愛なんて言ってられないだろう......と思ってしまうのだ。最後は子どもたちだけで旅をするロードムービーになるのだが、それほど盛り上がらず、母親が死んだところで、プツンと話が終わってしまう。大人の事情はわからないけれど、打ち切りっぽい感じだ。できるならば前半戦の悲惨で陰湿で、ただひたすら飢えと殺人と人肉食が繰り返される残酷な物語をもっと読みたかった。とはいえ、もう少年マンガ誌で人肉食をテーマにした漫画が描かれることはないだろう。そんな希少なマンガをワンクリックで読めるのだからやっぱ電子書籍はいいな~。これ読んでる少年たちも『アシュラ』を読んで、トラウマ作って!!

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。


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