【マルチ商法的な就活塾で学んだこと-2 完結編】
[研修編-3 地獄]
会場に着き、いよいよ研修が始まった。
(この時点ですでに携帯は没収されている。)
この研修では指導者となるべく、様々なプログラムが用意されていた。
が、その一つ一つが地獄のようだった。
研修というよりも「洗脳式」と言った方が正しいかもしれない。
名前を呼ばれたら全力で返事しなければ、「声が小さい!!!」と怒鳴られ、やり直しさせられる。
また、全力でダッシュして行動しなければ「遅い!!やる気あんのか!!あ!?」とやり直しさせられる。
このダッシュの際、友達から借りたジャージのファスナー部分が壊れていて、ファスナーの金具が足の裏に刺さって痛かった。痛みをこらえてダッシュしている際、ふと頭によぎった。
…俺はいったい何をやっているんだ?
そして研修中一番キツかったプログラムがはじまった。
それはどんなプログラムだったかというと、心身共にダメージを与えられる、とても辛いものだった。
具体的に何をやったかというと、
「俺の人生!
俺がやらねば誰がやる!?
今やらねばいつ出来る!?
俺はやる!
いつ!?
いま!!!」
このセリフを、あるダンスと共に1000回叫ばされた。
(今このブログを読んで笑ってるお前!ガチでキツかったんだからな!笑
嘘だと思うならやってみろよ!これを1000回!)
しかも、人格を否定されながら。
「だからお前はダメなんだ!そうやって甘えてるから医学部に落ちて、兄貴に比較されるんだろ??
このクズが!!」
なぜか個人情報が漏れていた。
この若ハゲのおっさんには話していないのに。
このプログラムは全員で輪になって行われた。
中央の輪には鬼の形相の社員が配置され、参加者と向かい合う形で行われた。
私の前には常に若ハゲがいた。
はじめの段階では真剣にやっていたが、人格を否定され、怒鳴られている内に、どうしようもない怒りが込み上げてきた。
「…クソ野郎。ぶっ殺してやる…。ハゲの癖に舐めんなよ…」
500回を超えたあたりで意識が朦朧としてきた。
ダンスも腰を低くして行うので、腰に激痛が走った。
少しでも腰を上げると怒鳴られる。
声もガラガラで、まるで硫酸を飲まされた豚の様だった。
私は目の前の若ハゲが憎くて仕方なかった。
私も鬼の形相で睨みつけ、ガンを飛ばしながらセリフを唱えていた。
すると若ハゲが
「…タケダ!お前、いい目してるな!!頑張れ!!」
と褒めてきた。
若ハゲ。
だからお前はハゲるんだ。
この地獄のようなプログラムもようやく終わった。
すると、鬼の形相だった社員がみな拍手をし始め、
「おめでとう(^_^)☆」
と、まるでエヴァンゲリオンの最終回のように参加者を讃え始めた。
そして参加者全員に一本のポカリが手渡された。
「どうだ?ポカリ、美味いか?
こうして頑張ったあとのポカリは美味いだろ?」
と若ハゲ。
他の参加者はもう洗脳されたのか、笑顔で返事していたが、私は怒りがおさまらなかった。
「コノウラミハラサデオクベキカ…!!!」
そんなこんなで研修も終わりを迎えた。
社員から参加者全員に温かい言葉とプレゼントが渡された。
それがこれである。
「俺の6万円…。」
6万円で得たものは一枚のカードと豚の声である。
帰りのバスの中から富士山が見えた。
これから私は富士山を見るたび、この研修を思い出すのだと思うと富士山に申し訳ない気持ちになった。
[後記]
人間の心理とは面白いものである。
今の私ならこんな研修なんか絶対行かない。
もし行ったとしても、若ハゲを張り倒し、うなじのメアドを聞いていただろう。
しかし、この当時の私は切迫していた。
何がなんでも就職しなければ、と。
この焦燥感に付け込まれたのである。
馬鹿な学生の心理的焦燥感に漬け込むだけで6万円が稼げるのだから、楽な仕事である。
このブログを読んでいる人は絶対に引っかからないであろうが、心理的に何か追いやられていたり、負い目があったりすると人間は弱い。
何かにすがりたくなる。
その対象は宗教であったり、マルチ商法であったり、風水であったり、学歴であったり、恋人だったりする。
私の場合それが就活塾であった。
人の心の隙間に漬け込むビジネスは世の中にあふれている。
我々がその顧客とならないためには、就活で行われるような自己分析を行うのではなく、日々、自己を振り返り、何物にも依存しない、自律的な生き方をしていくべきなのではないだろうか。
fin
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