岩波文庫の「アレクサンドロス大王東征記」を読んでいると敵と拮抗状態だったはずのアレクサンドロスがいつの間にか勝ってるという記述によく出くわす。過程を丁寧に読んでみると、アレクサンドロスは、敵と拮抗状態になったら、必ず自分の方から「小さく仕掛けて」、その対応で敵に生じた隙に「大きく付け入って」、状況を打開してる。

アレクサンドロス大王が、ペルシア征服前にマケドニア北方の部族を平定したのも、イッソスの戦いの後にダレイオスを追跡せずエジプトを目指したのも、後方連絡線を確保するため。猪突猛進型のアレクサンドロスでもロジスティクスについては合理的判断をしている。急がば回れ。

エジプト途上のテュロスを攻略したのはペルシア海軍の寄港地を攻略して一気にアドリア海の海上支配権を奪還し後方連絡線を確保する意図。ペルシア海軍を直接叩くのではないところが戦略的だ。

東征記を読んでいると、アレクサンドロスの軍の日々の現実が、ひたすら歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、戦う、再び、ひたすら歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、だったのがよく分かる。命懸けの競歩大会だな。

アレクサンドロス大王のガウガメラの戦いをシンプルにまとめると、敵左翼を自軍右翼に陽動して、敵中央と敵左翼の間に生じた隙間に自軍を投入して敵軍の中央を突破して分断して勝利した戦い。2000年後にナポレオンがアウステルリッツの戦いで、ロシア軍左翼を右翼ダブー第3軍団に陽動して、スルト第4軍団で中央突破したのと同じ。抽象度を高めてこうした共通点を発見するのは楽しい。

いよいよインドへ。象が現れた。

インドの王様ポロスとヒュダスペス河畔で対決。200匹の凶暴な象がポロス軍にいる。自分ならどうするか考えながら読むと楽しい。

もう歩きたくないと兵士が言い始めた@インド。演説をして反応が良くないので3日程部屋に引きこもってスネてみたが、やっぱりもう歩きたくないと兵士が言うので引き返すことに。アレクサンドロス無念。変化を受け入れるアレクサンドロスの心の柔軟性が凄い。尊敬する。

インドからの帰路は炎天下の砂漠横断60日。来た道を素直に戻るのはつまらないから。クレイジーな人がいる。

飲み会で体調崩して突然アレクサンドロス逝く。32歳11ヶ月。インドから帰還後1年後の出来事。遺された帝国は現在のギリシアからインド北東部までの空前絶後のスケール。どうすんだ。後継者についてのアレクサンドロスの遺言は破滅型の天才らしく「最も強い者へ」という弱肉強食宣言。案の定、残された将軍たちによるバトルロイヤル開始。ユーラシア大陸の取り合いのバトルロイヤル。スケール大き過ぎ。

アレクサンドロスの戦いは未踏領域の開拓という清新さがあるが、アレクサンドロスの後継者争いのディアドコイ戦争になると既得権益の取り合いになるからドロドロした政治が表に出てくる。