
日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ
飯尾 潤 (著) 中公新書
独特の官僚内閣制のもと、政治家が大胆な指導力を発揮できず、大統領制の導入さえ主張されてきた戦後日本政治。しかし一九九〇年代以降の一連の改革は、首相に対してアメリカ大統領以上の権能を与えるなど、日本国憲法が意図した議院内閣制に変えた。本書は、議会、内閣、首相、政治家、官僚、政党など議院内閣制の基盤を通し、その歴史的・国際的比較から、日本という国家の統治システムを明らかにするものである。
独特の官僚内閣制のもと、政治家が大胆な指導力を発揮できず、大統領制の導入さえ主張されてきた戦後日本政治。しかし一九九〇年代以降の一連の改革は、首相に対してアメリカ大統領以上の権能を与えるなど、日本国憲法が意図した議院内閣制に変えた。本書は、議会、内閣、首相、政治家、官僚、政党など議院内閣制の基盤を通し、その歴史的・国際的比較から、日本という国家の統治システムを明らかにするものである。
議院内閣制に基づく首相の権力は、本来であれば大統領よりも強大だという。なぜならば、民主政のもとでの大統領制は、大統領と議会とが別々に選出され、それぞれが正統性を有しているため、民意は二元的に代表される。それに対して議院内閣制は、議会のみが民主的に選出され、その議会の正統性を基盤として内閣が成立するために、民意は一元的に代表される。つまり、議院内閣制は大統領制よりも権力集中的な制度なのである。
しかし「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」と呼びうる、いわゆる55年体制のもと、日本の議院内閣制は、政権選択選挙によって民主的正統性を付与された政権党によって首相が任命され、かかる首相に任命された大臣が政策を執行し、官僚はそれを補佐するという本来の機能を発揮できていなかったという。
本来の機能を発揮するにあたって重要な一歩となるのは次のような意味での政党政治の確立であるという。つまり、政権担当能力のある大政党が民意を体系化し政権公約(マニフェスト)を練り上げ、「政党」「首相候補」「政策」の3点セットを国民に選択肢として提示し、衆議院総選挙を政権選択選挙にすることであるという。
その意味では、リクルート事件以降の選挙制度改革(小選挙区比例代表並立制導入)、政治資金規正法成立、首相の地位強化(内閣府の設置)、省庁再編などの一連の改革は議院内閣制確立に向けてのものであるという。
理論上は大統領よりも首相の権力が強大と言われても現実は違うんじゃないか、政党が本書で言うような大きな役割を本当に果たせるのか、建前と本音を使い分けるのに巧みな日本人にマニフェスト政治は本当に根付くのか、そもそも議院内閣制が日本にとってベストな選択なのかという大前提の議論があるかもしれないが、本書は日本という国家の統治構造を理解するために必読の書と言える。