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法と企業行動の経済分析

M&A、事業再生、職務発明等、企業活動は従来より遥かに法律と密接に関係するようになった。本書は契約理論、情報の経済学など最新の手法とケーススタディで法と経済の関係を理論・実証両面から解き明かす意欲作。

いわゆる「法と経済学」の本だが、公平性と効率性の対立といった議論はひとまずおいて、法的ルールが企業主体の行動にどのような間接的影響を与えるかを、契約理論、情報の非対称性、などの分析ツールを使って論じている。じっくり読むべき本である。

執筆者からのメッセージと本書の概要

敵対的買収を巡る議論でも明らかになったように、近年は法制度が企業活動に与える影響が大きくなってきています。そのため、どのような法制度を構築していくかは、経済活動にとって重要であり、それについて経済理論的に議論・分析しようとしたのが本書です。とりあげているテーマは多岐に渡っていますが、わが国経済を考えるうえで重要と思われるトピックスを筆者なりに選んだつもりです。全体を通して契約理論の枠組みで議論していますが、テーマによって抽象度にばらつきをもたせてあり、関心のある章、関心のある箇所だけピックアップして読んでも分かるように出来るだけ記述等を工夫したつもりです。本書によって少しでも制度設計や法制度の経済分析に関心が集まればと、願っています。

第2章から第4章までは、主にM&A問題を扱っていて、第2章(「コーポレート・ガバナンス-株主が重要事項を決められるのはなぜか」)では、基本モデルを提示し、なぜ株主に会社の所有権が与えられているのかという根本的な問いかけを行っています。第3章(「M&Aの経済学-敵対的買収・防衛策・取引所の意義」)では、敵対的買収の役割と買収防衛策のあり方を主に検討し、またそこから必然的に出てくる課題として上場のあり方を検討しています。第4章(「事業再編ケーススタディ・雪印乳業」)では、M&Aのケースステディとして雪印のケースを取り上げています。

第5章と第6章は事業再生および破綻法制に関して分析している章です。第5章(「破綻法制・事業再生」)では、債務不履行を債権者への決定権移転プロセスと考える近年の経済理論の枠組みを用いて、事業再生の役割を経済学的に整理するとともに、再建型破綻法制の役割を説明しています。第6章(「事業再生ケーススタディ・日東興業」)は事業再生のケーススタディとしてゴルフ場を経営していた日東興業のケースを取り上げています。第7章(「株式消却に関する実証分析」)では、わが国の制度改革としては、非常に大きな変革が行われてきた自己株式取得の問題について、その法制度改革の影響も含めて実証分析を行っています。

第8章と第9章は、近年わが国で注目されている事象についてやや解説的に説明をした章であり、第8章(「証券化の役割と課題」)は証券化の問題を、第9章(「職務発明」)は、職務発明の問題を取り上げています。

第10章と第11章は取引契約のエンフォースメントの問題を考えたやや抽象的な問題を扱っている章です。第10章(「取引法、契約法-契約理論との関連」)は、契約理論において、損害賠償ルールやエンフォースメントの問題がどのような役割を果たしているかを解説し、第11章(「開発経済・マクロ経済へのインパクト-エンフォースメント問題」)では通常はあまり表立って論じられることのない、法律や契約の実効性を持たせるために生じる社会的コストの問題を考えています。第12章(「政治的決定プロセス」)では、将来的な課題として、法的ルールが、どのように決定されるのか、特に政治決定プロセスのあり方について議論をしています。