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戦争の世界史


軍事史においては、偉大な一人の軍事的天才が突如登場し短期的に他国を征服し尽くす時代と、そのような個人は登場しないがある国家がじわりじわりと他国を支配下に置いていく時代の2つが入れ替わり現れる。

偉大な軍事的天才に率いられた軍隊というのは、必ずしも軍事技術の優位性によって勝利してきたわけではなく、アレクサンドロス大王のマケドニア軍、ハンニバルのカルタゴ軍、カエサルのローマ軍、チンギス・ハンのモンゴル軍、織田信長の尾張軍、ナポレオンのフランス軍、ヒトラーのドイツ軍のように、いずれも軍事技術的には自軍と大差ない敵と戦い、戦場における戦略・戦術の用兵の妙によって勝利している。

ところが、軍事的天才は登場しないが、ある国家がじわりじわりと他国を支配下に置いていく時代においては、国家間の軍事技術の差というのはその覇権争いの帰趨に大きな影響を及ぼす。帝国主義時代の欧米と植民地化された国々との関係がそうであるし、現在のアメリカの圧倒的な軍事技術の優位性などがそれにあたると考えられる。

これは一面で圧倒的に軍事技術的に有利に立つ国家は、その軍事力を背景に外交戦で果実を得ることができるから、野戦での軍事的天才を必要としないからだとも言える。そして、実際に開戦にいたってもその軍事技術的な優位性から軍事的天才を必要とせず、平均的な将軍でも勝利することができるからともいえる。

覇権を狙う国家としては、自国に軍事的天才が彗星の如く突如現れるのを期待するのは、不確実性が高すぎて危険である。軍事的技術を高め外交戦を含めた総合力で他国を支配下に置いていくほうが合理的な選択といえる。

戦争の世界史というタイトルを冠しながら、軍事的天才の事跡にほとんど触れない本書を読んでこのような感想を持った。7,875円は高いが一読の価値ある。