イメージ 1

『ルビコン―共和政ローマ崩壊への物語』(トム・ホランド著・中央公論新社)
を読みました。

非常に面白い本です。

 元老院にとっては、これが我慢の限界だった。1月7日、非常事態が宣言された。
ポンペイウスは即座に軍隊をローマに入れ、護民官には今後の身の安全は保証されないという
警告が与えられた。まるでドラマの1シーンのように、アントニウス、クリオ、カエリウスの3人は、
奴隷に変装し、荷馬車に隠れて北のラヴェンナ目指して逃走。そこではまだカエサルが、
1個軍団とともに待機していた。ポンペイウスが非常大権を握ったという知らせは、
10日に届く。即座にカエサルは1部隊を割き、南へ向かって境界を越え、イタリア本国に入って
最初の町を占拠せよと命じた。しかし、兵を出発させておきながら、自分は午後になると入浴し、
宴会に出ると、まるで心配事などどこの世に何もないかのような態度で客とおしゃべりに興じた。
夕方になり、ようやく長イスから起き上がる。そして曲がりくねった暗い脇道を馬車に乗って急ぎ、
ついにルビコン川の岸で先遣部隊に追いついた。カエサルは、ここでしばしずいぶん迷った。
しかし、ついに決断し、増水したルビコン川を渡ってイタリアに入り、ローマを目指した。
 この時点ではだれも知る由はなかったけれども、実はこのとき、460年続いた自由な共和政は、
終焉に向かって動き出していたのである。(375頁より引用)
日本でローマ史といえば、
塩野七生氏の『ローマ人の物語』ですが、
その壮大さのわりにどこか説教じみていて、
個々の人物がどんな人間だったのかが伝わってきません。

この本では、カエサル、ポンペイウス、キケロ、クラッススといった役者たちが、
著者ホランドの確かな知識に裏打ちされたローマ共和政という劇場において、
めくるめく「政治」の「人間ドラマ」を展開していきます。
モンタネッリの「ローマの歴史」(中央公論社)に近いです。

ポンペイウスは吠え、キケロは苦悩し、カエサルは決断した。
独創的な切り口と熱い筆致と鋭い歴史眼とで新たに語られる、
壮大でスリリングな歴史絵巻。

帯のコピー通りでした。

日本語訳が素晴らしいです(小林朋則氏訳・本村凌二氏監修)。
また装丁も素晴らしいです。カエサルの象徴でもある赤いマントに
装丁も赤で合わせるところが心憎い演出です。