知らない土地へ行くと

行きたくなるのが高い場所

街並みを眺めるのに便利だし

単純に高い所から見える

その景色が好きだから



スマホを使うと

ナビゲーションをしてくれるから

Suicaを使い

電車や路線バス移動も

ピッとタッチするだけで

どこへでも連れて行ってくれる



駅の乗り場などで迷う事も

旅の醍醐味となり面白い

何番線から何時に発車するという

案内をしてくれても 

駅舎の中で迷って乗り遅れる

なんて事も起こるけれど

特別困る事は今までは起きなかった



その経験から

路線バスを乗るのも好きになり

都会なら本数が多いから

一本乗り過ごしても

大した問題にはならない



そんな油断が

九州旅行で打ち砕かれた

福岡の路線バスは

高速道路を走るのである

そんなの知らない

旅慣れない道産子は



このバスはこれより高速に入ります

などと突然車内アナウンスをされると



エッ!高速道路?

乗るバス間違えた!

やっちまったーと焦り

運転手さんに

どこへ行くのか聞かなければと

席を立とうとして



待てよ高速道路なのだから

走行中に歩くのはご法度では?と

妙にそこは冷静で

少し落ち着いて周りを見渡すと

確かに車内は路線バスなのだ



路線バスなんだから

そう遠くへは行かないのでは?と

思った瞬間に思い出した

いつか観たYouTubeの

高速道路を走る路線バスがこれか?



そう思い込むと

途端におぉ凄げぇとなり

逆に楽しめるのも

旅の醍醐味というもの

そんな思わぬ

掘り出し物のような体験が

次の日の悲劇を生んだ



北海道に住んでいると

新幹線など乗る機会も無いからと

必要も無いのに乗って

降りた駅から目的地へ向かう

路線バスに乗り替えるのに

一時間くらい待ち



その間のイライラが

おそらくあったのだと思われるが

それは後の祭りで

その時は何の迷いも無く

時間通りに来たバスに乗り込んだ



九州の田舎は

北海道とあんまり印象が変わらないなどと

三十分程のバス旅を満喫しながら

なんの疑いも持たず

おぉこんな峠を路線バスで走れるなんてと

喜びながら少ない乗客がすべて降車



なんか終点間近の空気を

運転手さんのアナウンスに感じて

あれ?海の方へ行くはずなのに

こんな山の中で終点?

嘘でしょなんて思ったら

知らない町の役場で降ろされた



仕方が無いから

降りる時にスンとして

戻るバスは何時かと運転手さんへ聞くと

三十分後だと言われ

まぁ戻るバスがあるならと

あたかもここへ最初から来る予定でした

みたいな顔でバスを降りた



しかし周りには

役場以外に何も無い

そりゃそうよ田舎なんだから

悪いのはこちらなのだ

しかしトイレがしたくて

仕方無いからと

役場の中へ入ると案の定

変な顔をされた



そりゃそうよ

キャリーケース転がして

役場に来る馬鹿はいないのだから

しかしもう我慢の限界だからと

トイレを貸してくださいと言うと

一番奥の右だと教えてくれた



その心の優しい

職員さんにお礼を言って役場を出て

その目の前のバス停で待った

そして三十分後に来たバスの運転手は

先程と同じ運転手さんだった



そりゃそうよ

来た道を戻るのだから

どうやらこの三十分間は

休憩時間だった様子

しかし先程スンとお済まし顔で

降りた手前とても恥ずかしかった



とても恥ずかしかったが

仕方が無いこれに乗らなければ

目的地へ辿り着けないのだから

いやぁ乗るバス間違えちゃいましたぁ

なんて言いながら乗り込むと

知ってるよみたいな顔をされた



そりゃそうよ降りる時に

行き先が真逆だと教えてくれたのだから



しかし旅の恥はかき捨て

非日常だからなのか立ち直りも早く

まぁこれに乗っていれば

目的地へは辿り着けると思うと

もう何も心配は無い



その無意識の油断が

その小一時間後

車窓を眺めるのに

夢中になり降りるバス停の

アナウンスが流れても気づかず



妙に運転手さんが

次はどこそこ〜

お降りの方いらっしゃいませんか?と 

何度も繰り返すから

うるせぇなぁと思っていたら

何の事は無い

馬鹿な道産子が降りなければならない

バス停だったのだ



慌てて降車ボタンを押すと

運転手さんのヨシッ!という

声がマイクから漏れ聞こえ

恥ずかしさを通り越して

もはや神様のように思えたから

必要以上に降りる時に

有難うございましたと大きな声で言うと

車内の乗客が一斉にこちらを見るものだから

尚更恥ずかしくなってしまった



帰りの飛行機を降りて

空港から高速バスで帰るからと

窓口でチケットを購入して

コートのポケットへ入れてから

乗車口の列に並んでいると



係のおじさんが話し掛けて来て

荷物は荷台に積みますか

この大きさなら車内でも構わないなどと

しつこく話しかけて来るものだから

面倒臭いと思いながらも

愛想を振りまいて有難うございますなんて

言いながらバスが来て



乗車口でSuicaを

タッチしてから乗り込み席に座り 

今回の旅行にタイトルを付けるなら

バスパニックだなどと

九州でのバス乗り間違えを

振り返りながら

最寄りのバス停が近づき



もう降りる準備は万端ですよと 

そうそう何度も失敗しませんよと

降車ボダンを押して

無事に自宅へ到着してホッと一息



サッサと着替えて

一杯飲みながら思い出を振り返ろうと 

コートのポケットへ手を入れると

バスチケットが出て来て

あっSuicaで払っちまったぁと

程なく気づきまた失敗



だから空港のおじさんは

チケット有りますかという意味で

話し掛けて来たのだと思い

それならはっきり聞いてよと

他人のせいにしてもまた後の祭り



この旅路のタイトルは

バスパニックなどでは無く

ただ馬鹿がパニックになっただけの話



だから高い所が好きなのかなぁと

福岡タワーからの夜景に

驚いた自分を振り返りながら酒を呑み

自分の馬鹿さにたまげたわぁと

駄洒落を言って馬鹿笑い