いつだったか在籍していた会社の
忘年会幹事の一人に選ばれた
幹事と言っても
余興の司会進行だったけれど
人前で喋るなんて
最も苦手な事だから
逃げても良かったのだけれど
その時の自分にはなぜか
それを引き受けて過去のトラウマを
解消したいという欲求が生まれた
高校生の時学校祭で
無理やりカラオケを歌わされ
緊張し過ぎて全く歌う事も出来ずに
恥をかいて依頼
人前には絶対に出ないと決めていた
それがなんの気まぐれか
その幹事の役割を乗り越えれば
嫌な思い出を良い思い出へと
上書き出来るかもしれない
そう思って散々迷った挙げ句
意外と前向きに引き受けた
思い返せば
その時の社内の雰囲気が
高校生の時の学校に似ていた
要するにガラが悪くて
上下関係はあっても
そこそこ仲が良いみたいな感じ
そもそも忘年会の余興に
その会社の常務が
毎年趣向を凝らすのが好きで
その年に流行った芸人の扮装を
幹事と呼ばれる生贄にさせては
ビンゴなどの宴会ゲームの
賑やかしをさせるのが恒例で
その順番が回って来ただけの話
その職場は
居心地は悪かったけれど
安定した生活が出来ていたから
辞めたくは無かったけれど
今思えば職場を変えても
何かしらのストレスを感じる場所だと
いつの間にかその会社を辞める事が
目標になって貯金をしたりして
退職出来る体制を整えるのという
不毛な努力の繰り返しで
ちょうどその幹事役を
引き受けた時にはいつ辞めようかと
タイミングを見計らっていた時で
伝えられた時には
退職して逃げてしまおうと思った
その会社を辞めようと決めたのは
入社初日だった
直属の上司とモメたから
ここには居られないと覚悟したら
その上司が辞めてしまい
担当が居なくなるから
辞められなくなっただけ
入社して一ヶ月もしない内に
後輩が入社して来て
その人とも初日にモメるというほど
人付き合い能力が無いから
毎日顔を合わせるのが憂鬱だった
それでも半年もすると
仕事内容も楽だし
それまでの時給月給暮らしから
月給暮らしへと変わり
毎月同じ金額が振り込まれるという
そんな天国暮らしから
抜け出せなくなっていた
その後輩が辞めるまでの3年半
ほとんど話す事も無く冷戦が続き
幹事に任命される前年に
その後輩が幹事となり
何かの着ぐるみを着せられているのを見て
来年は自分の番だと気が重くなった
しかし彼がやり切ったのに
こちらが逃げるのも癪だと思った
元々入社してから3年は
石の上に齧りつこうと決めたから
我慢して続けて来たのだけれど
幹事に任命される数ヶ月前に
丸3年が過ぎて
もう辞められない理由は無くなった
けれども何となく
逃げたと思われるのも癪だという思いと
高校生の時のトラウマを乗り越えたい
それらの思いが重なり引き受けたら
袖無しのGジャンと
膝丈ジーパンという出で立ちで
忘年会の余興ゲームの司会をさせられ
余計なトラウマが
また一つ増えただけだった
けれどもあの夜の私は
たがを外し過ぎてワイルドだったせいか
思い出すのは嫌いじゃない
そして今年はおそらく
そこら中の会社で
長袖をくださいを言わされる
そんな生贄がたくさん居るだろうと思い
一人ほくそ笑んでいる
個人的には
ナメられてたまるか!のほうが
好きなのだけれど
ノミネートもされていないから残念
まぁどちらにせよ
やり過ぎは良くないとは思うけどね