「山と渓谷」2017年7月号に・・・
・岩と雪の殿堂
・一般登山道最難
・試練への道
そして
登山者憧れの剱岳
そんな特集が掲載されました。
私達はその剱岳に向け、今年1月から調整し、
その日がやって来ました。
扇沢からバスなど乗継ぎ、室堂へ降り立つと、
景色は素晴らしいものです。
立山三山、別山、そして大日岳と山脈は続き
広大な山岳の景観
同じ北アルプスの涸沢は鋭角の山並に取り囲まれた居ますが
ここはなだらかな山容が特徴です。
広さは涸沢の3~4倍はありそうな室堂です。
ベンチに腰掛けて周辺の山をSさんに告げ
我々が登る道を再確認します。
雷鳥沢のテント場を通り抜け
正面の山へ登ると剣御前小屋はあり、
そこから剣沢を下った所にある剣山荘が今夜の宿です。
剣山荘や剣澤小屋は
建物も新しく、シャワー設備がある快適な小屋です。
1番のバスに乗車したため時間は十分です。
「時間は十分にありますから、ゆっくり登りましょう!」
雪渓の上を歩き
ジグザグの急登をのぼり約2時間少々で峠越えです。
エネルギーを補給して山荘への道へ向かい
雪渓を4カ所ほどトラバースして
剣沢小屋のテント場など横目で見ながら
剣山荘へ到着しました。
残念なことに周辺は雲に隠れていたため
小屋は混雑の様子もなく
部屋ではゆったりとしたスペースが確保できて上々です。
小屋に入ったり外へ出たり、座ったり立ったり
空を眺めたりして時間を持て余すほど余裕があります。
Sさんは早速シャワーを使用して気分良さそうです。
部屋に戻り軽量化を図ってきたSさんに対し
もう一度荷物の見直したり、
ロープを繋いでいる時の注意点の再確認をしたりして
過ごしました。
翌日の予定は・・・
5時半食事、6時出発、昼食の弁当は小屋へ戻ってからとして、
夜8時の消灯になる頃には
身体は寝ているものの、脳がやっと動いているような・・・
今にも深い眠りに落ち込める体制で消灯を待っていました。
朝3時頃から周辺がパッキングやらの出発の準備で
私も起き出して外の天気を見に行きましたが、
小屋裏の登山道はキツネの嫁入りのように
ヘッドランプが繋がって小さく動いていました。
朝食は広い食堂に幾つかのグループだけで食事となり、
登山準備中・・・
八峰キレットは・・・
不帰キレット、大キレットと並ぶ北アルプス三大キレットの一つです。
Sさんは剱岳の後八峰キレットへ登る予定でいます。
「長い稜線ですね~!」 とため息をつくようにSさんは呟いた。
登山開始時も登山道は空いていて
登りやすい状態で歩き始めることが出来ました。
小屋でハーネスを装着し、
小屋裏の最初の鎖場でお互いをロープでつなぎ、
鉄の橋を渡り、
トラバースの鎖場を通過して
周辺は霧に包まれていました。
そのうちに空が明るくなり、
Sさんは初めて見る情景に感動で
「高橋さん、写真をお願いしま~す。」 と言い、
実際の目でしっかり虹の中にある自分の影に見入ってました。
手を挙げれば影も手を挙げ、座れば影も座り、
自分の分身のような影
「剱からの贈り物ですね!」
「きっと登頂成功の兆しかも知れません。」
空は青くなり
剱岳の山頂が顔を出してくれました。
岩と鎖の剱岳
山頂が目の前です。
自然にテンションも高くなります。
夜明け前に出発した人達が下山して来ています。
此処は標高1000Mの妙義山や秩父の二子山とは違い
3000Mの山の鎖場です。
立木など一切ありません。
安定した場所で
私は右手でSさんと繋いだロープを持ち
左手でシャッターを切ります。
ステンレスの鎖が無ければ
自らロープを伸ばすクライマーの世界となる
剱岳の別山尾根ルート
鎖があるとホッとします。
いい感じに登っているSさんへ・・・
「秩父の二子山とどっちが難しいですか?」
「まだこの先がどうだか?」
いよいよ
山頂も近くなってきたような目印が出て来ました。
「かにのたてばい」です。
(この写真は少し傾斜が緩く見えます。)
Sさんと私はロープの長さを更に短くして同時に登ります。
「ロープをたるませないようお願いしま~す。」
「は~い!」
途中で一息つきます。
下を見ると
先程道を譲ってくれた皆さんが見ています。
手を振って挨拶です!
Sさんとのロープはピンとと張られています。
「行動再開です。」
「了解です。」
鎖は終わり、
この写真だけなら、まるでアルパインクライマーです。
平蔵の頭を登る登山者
まさに岩と鎖の殿堂
試練への道
一般登山道最難
そんな言葉がピッタリな情景です。
鎖が終わり、山頂への200Mほどの登りが長く感じました。
空気は乾燥し、口は乾き、息が荒くなり、
後方のSさんは2度ほど立ち止まり、深く息を吐いて
新しい空気を取り入れています。
あと50Mで・・・
登りました。
穏やかな山頂は私達に長い休息を与えてくれました。
長かったこれまでの道のりを振り返り
自分の足と手で登った山頂
ガッツリと握手を交わし
どっかりと腰を下りしました。
「おめでとう御座います!」
「剱に登りましたね!」
Sさんは、やや下を向いて頷きました。
私も感動が伝わって来て
つい・・・。
確かな一瞬でした。
今もうつむいたSさんが思い出されます。
インスタントコーヒーが美味しい美味しいというSさん
水筒から水を絞り出して
もう一杯
計量化のために持参した乾燥フルーツも・・・
「富山湾も見えてますよ!」
自分では剱岳は絶対無理と思っていたSさん
頑張り屋のSさんは一歩一歩前進して
鎖トレ・岩トレも頑張って
昨夜は不安そうなSさんでしたが
今は最高の笑顔に包まれています。
「良かったですね~!」
同じ目的で居合わせた周囲の人と
同じ感動を味わうこと
努力の上にある感動
感動は山頂にあるんですね!
山頂ってやっぱり良いところですね!
登って来た岩稜を見下ろすSさんです。
今日は主役のSさんです。
「そろそろ帰りますか?」
1時間以上山頂でゆっくりとしました。
山頂直下に根を下ろすハイ松
厳冬期の厳しさが伝わって来ます。
それでも耐えて耐えて耐え抜いています。
水筒の水を別けてやりたいくらいでした。
かにのよこばいです。
鉄ハシゴも・・・
小さなきっかけでここへ来ることになったSさん
頑張り屋でそしてずっと不安でいたSさんです。
本当に良かったですね。
(記念に撮って貰った1枚です。)
一服剣手前で大休止
此処を過ぎると剱岳が終わってしまいそうな感じがしたため
最後の水でコーヒーをもう一杯
ゆっくりと下山して最後の鎖場を通過
ロープを解除し
ハーネスも収納して目の前の小屋へ戻ります。
剱の形をした雲が1日の終わりを告げていました。
8月4日Sさんは無理と思っていた山頂へ
登ることが出来ました。
いい1日だった。
翌日は・・・
後ろ髪を引かれるように
小さくなって行く山を何度も何度も振り返り
(剣御前小屋からの雷鳥沢です。)
この橋を渡って剱岳に・・・。
憧れの剱岳
そしてそこは試練への道ですね!
山って本当にいいもんですね!
剱岳も良い山ですよ!
登山・トレッキングのガイド「風」 (HPも宜しくお願いします。)
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「風」のガイドプラン (こちらも宜しくお願いします。)