松本までの電車の中も登山客は私一人でした。
30分も電車に揺られ、外の景色はまたまだ夏の色。
しかし、松本駅は真夏とは違った空気感で、過ごしやすい気温でした。
バスに乗って上高地入りし、気分も若干高揚してきます。
楽しい涸沢へのトレッキング、今日も頑張って仕事を・・・と自分に言い聞かせます。
他の皆さんもここで腹ごしらえしています。
天候がやはり心配です。
仲間のガイドさんは北穂と奥穂へ登ると言ってました。
苦笑いの陰には、天候の悪化の意味も含まれているのでしょう。
明神岳や梓川は素知らぬ様子です。
私達は元気に約2時間を歩いて徳沢園へ到着しました。
いつもソフトクリームなど食べる程度でしたが、今夜の宿はホテル並みのインテリア。
玄関を入るとお香が焚かれ、広々した玄関口です。
私の想像ですが・・・昔、登山が一般化していない頃、富裕層の方々が泊まった雰囲気が伝わって来るようです。
階段、床、ソーファー、時計などの調度品はそれぞれ雰囲気あるものばかりです。
荷を下ろして外へコーヒーを飲みに出ると・・・
雨足は相変わらずです。
誰も居ないテラスで、明日のことを思うと少々憂鬱に成ってしまいます。
夕食では誕生日を祝う賑やかなグループの皆様が居て、豪華な食事で気分も変わります。
翌日は予想通りの雨模様です。
雨具を着てストレッチをして、水たまりを避けるようにシラビソの林を歩きます。
時折、雨足が弱くなった気もしますが、フードを下げると青変わらずの雨が続いています。
次の目的地の横尾も雨だろうな!
「トイレはあちらの建物です。
小休止は山荘の軒先を借りて休憩しましょう。」
しかし、軒先は僅かで女性のお客様も立ったままの休憩です。
天候を恨んでも仕方ありません。
気を取り直して頑張るか!
自分に言い聞かせます。
横尾大橋で記念撮影をする方も居ませんでした。
「いよいよ、ここから登山道が始まります。
涸沢まで今日は電車の時間を気にすることないですから、ゆっくり歩きましょう。」
幾分雨も少なくなってきた感じです。
左に屏風岩が見えて来ました。
「穂高を代表するクライミングエリアです。
主に東壁と右岩壁に分かれ晴れならクライマーが見えることでしょう。」
少し歩くと2ルンゼから大滝の様に水流が落ちてきています。
上部は雲に隠れて幻想的な雰囲気が感じられます。
「こんなところ、登るんですか!」
「恐ろしいですね!」
皆さんはカメラを向けてカシャリと撮っていました。
そんなことでまた樹林帯を歩くとキイチゴが赤く実を付けてます。
「食べられるのですか?」
「酸っぱいけれど、美味しい!」
「こっちにもありますよ!」
キイチゴを試食されて、笑顔がいっぱいに成っていました。
楽しい秋を感じることが出来て良かったです。
ゆっくりゆっくりと歩いて行きます。
本谷橋まで来たら11時を回っていました。
少々ゆっくる過ぎたかもしれません。
ここで昼食タイムです。
何だか北アルプスの感じが出て来ました。
慣れない木の橋を慎重に歩を見ていると、自分が初めてここへ来た時を思い出すようです。
あの日も雨が降っていて、独りで黙ってひたすら歩いて来た思い出が有ります。
雨も止み幾分過ごしやすく成って来ました。
お弁当を広げて楽しい時間です。
「この川は横尾谷と言います。
今まではこの川の左岸を歩いて来ました。」
「川は下流をみて右を右岸、左を左岸と呼びます。」
「これからは右岸を登ります。」
「この橋は本谷橋といいます。現在地はこの橋ですね。」
「地図を見るとこの先で沢が二股に分かれています。
次は沢の二股を目指して登りましょう。」
急なジグザグを登り樹林の中にブルーベリーを発見!
皆さんに1つ二つ取って差し上げて試食!
アチコチにありました。またキイチゴもなっています。
あそこに白く沢が見えますが、あの辺で涸沢と合流しています。
此処が二股ですから、今自分達はこの辺ですね。
「なるほど~!」
そして樹林を抜けたガレでは・・・
咲き終わったチングルマや僅かに残ったヨツバシオガマ、サラシナショウマなどまだまだ頑張って咲いていました。
向こうを見ると、小さく小屋も見えています。
「見えていても、ここからが遠いのです。」
沢は音をたてて流れています。
水流に手を入れて水を感じて・・・
いや~
岩壁を見て泊まってカシャリ。
キイチゴをみて一つまみ。
花を見てカシャリ。
ブルーベリーを見て一つまみ。
まさにのんびりトレッキングです。
周辺は雲に隠れて何も見えませんが・・・
今回のタイトルは「涸沢トレッキング」
ピークハントなしのトレッキングも楽しいものです。
朝8時に徳沢園を出て午後二時涸沢到着です。
コースタイムなんて関係ありません。
コースタイムを2時間ほどオーバーして涸沢へ登って来ました。
これぞトレッキング。
いいもんですね。
談話室では地図を広げて今回のコースを再確認。
「今自分がどの辺に居るのか。」
地図をじっと見ていると目標物がいろいろあります。
屏風岩、本谷橋、二股、ガレ・・・
そんなことも面白いことですね。
今回は雨で人通りも少ないため、立ち止まって色んなものを観察しながら登ることが出来ました。
雨の涸沢トレッキング・・・思い出の山旅となりました。
翌日も上高地まで雨の中でした。
奮発してコーヒーを頂いて、大変美味しかったです。
やった~
下山の本谷橋でなぜか、記念撮影の様になってカシャリと1枚撮りました。