最近読んだ本です。
文庫本帯のキャッチコピーに
心の底から愛した「運命の人」が隣にいない
そんな人生に意味があるのか !?
白石一文ファンとしては、読まざるを得ません。
白石一文著 翼
株式会社鉄筆刊
2014年7月31日発行
キャリアウーマン田宮理江子の仕事を軸として恋・結婚が絡んだ
企業小説かと軽く読み始めましたが、理江子に想いを寄せる
長谷川岳志が関わってから、重いテーマの流れになってきました。
「生と死、幸せとは、死にざま」という白石ワールドに
どっぷり漬かりました。
「人間は知恵や理性では絶対行動しないからね、
例外なく感情のままに行動する」
「真実の人生を手に入れさえすれば、こんな嘘だらけの人生と
きれいさっぱり縁を切ることができる」
「たとえ自分自身が死んでも、自分のことを記憶している
人間がいる限り完全に死んだことにならないなら、
逆に自分が生きていても、その自分のことを知っている
人間が死んでしまえば自分の一部が死んだことになる」
「私たち人間は、一人の例外もなく"完全なる無"にしかすぎない。
にもかかわらず、私たちはその虚無に抗いたくて、
無駄な抵抗と知りつつ愚かな繁殖行為をつづけているだけなのだ」
「人はたった一人で生まれ、たった一人で死ぬだけでなく、
未来永劫に渡って孤独でありつづけるのだ。
そして、孤独こそがまさしく無の正体に違いない」
「幸せにはきっと締め切りみたいなものがあって、
手にした幸せより先に死ねれば、
それが最高の人生でしょうね」
「どんなに愛し合った相手ともやがて分かれてしまう。
しかし、別れるからこそふたりの愛は輝くのだ。
ふたりの死がふたりの愛を永遠の記憶にするのだ。
そして、私たちの愛がその後につづく無限の人々の記憶となり、
愛を支えつづけていくのだと。
それこそが私たちがこの世界に生まれた唯一の根拠なのだ」
文中には、白石氏の「愛について」、そして「死生観」がこれでもかと
述べられています。
男の幸せとは、女の幸せとは、結婚だけとも限らない
白石氏のシャープな切り口で物語は進みます。
結末は予想外の展開で締めくくられています。
ただ、表題の「翼」の意味するところが、いまひとつ
ぼやけている様に感じました。
共感できる部分もあるし、この考え方は?と思うところもあります。
しかし、白石一文氏のどの作品も私の心の波長に合い、
これからも読み続けていくでしょう。