まるで映画のように


いやそんな映画の影響なのかも知れないが


泉田京子は10年後の1月4日にこの公園で


裕也と会う約束をした



学校の同窓会に出席する面々が


それなりに幸せな生活を送っている人々に


限られてくるように


10年という月日は


男女の約束を全うするには


長過ぎる月日にも思えた




1月3日


田崎裕也は公園で彼女を待っていた



時間は決めていない


いや決めたのかも知れなかったが


あまりにも昔の事なので思い出せなかった




近くの自販機で熱いコーヒーを3回買って


三本目は飲まず手のひらの中で冷たくなったのを


見計らってから裕也は公園を去った





夕暮れの公園で


京子はほんの少しの寂しさと


それ以上の安堵感でベンチを立った




約束はしたものの今は二児の母であり


裕也に会ったところで


何を話せばいいのか分からなかった




実際のところ裕也が約束の日を


1日ほど勘違いしてくれたおかげで


会わずに済んだのだった





あの日


大学に進まずに先に社会人になった京子が


同級生の裕也とした約束は



もうその時点で実は


結末が決まっているも同然だった




京子にとって裕也は


あまりにも頼りない存在だった


そこが愛しい部分でもあったのだけれど、、、



夕暮れの公園で


チェーンの錆びたブランコに座って


京子は裕也のにきびのある頬を思い出して


熱い缶コーヒーを頬に当てて鼻をすすった