昨夜、Twitterである方と「図書館」についての議論をさせていただきました。

昨今、出版業界で問題となりつつある「図書館での新刊本への大量の予約」が今回の議論の背景にあります。
そして、私もその方も「新刊本は書店でお金を払って購入してほしい」という点では最初から一致していました。

そこから始まった議論を踏まえ、
私なりの図書館と図書館ユーザーへのスタンスを
昨夜のツイートを元にここにまとめておきますね。

視点としては「書籍・出版というコンテンツビジネスの中で図書館と図書館ユーザーのあり方」です。
つまり、ユーザーでも図書館でもなく、出版界からの視点で捉えています。

まず基本的には。
「図書館は必要」というのがあります。

理由1
高価な人文、学術専門書は書店が置きたがらず読者も買いにくい。
そうした書籍を主商品とする小規模出版社には図書館は主要取引先の一つである。

理由2
郷土史本などその地域でしか入手できない貴重な研究本が蔵書&閲覧できる

理由3
児童書などにより幼い頃から気軽に本に馴染める

これは図書館でしかできない機能ですから、必要だと思います。

ただ一方で。

利用者増加を目指して一部図書館がメジャーな新刊本を志向する風潮は、「図書館本来の機能」を損なうものであり、これは書店、書店を主戦場とする大手出版社、著者と利害関係がバッティングするため、かえって不要論が出かねません。

つまり、こういうことです。

・高価な専門書を売る小規模出版社
→書店ではなかなか置いてくれない本を購入してくれる、ありがたい取引先

・書店で大量販売できる大手出版社
→一回の購入で後は無料で多くの読者が接するため、本来あるべき利益を侵害しかねない場

専門系の版元は図書館は書店と並ぶ主戦場の一つだけど、大手の主戦場はあくまで書店ということになります。

たとえば拙著に関して。
実はかなりの汗をかいて「一円でも安く」定価にできるようして努力おりますし、多くの書店で入手しやすい形式にしてます。
なので、書店で「購入」してほしい。図書館で読む方ばかり増えるとキツくなります。図書館でしか読めない本を読んでほしいし、そういう本をもっと置いてほしい 。
これが偽らざる気持ちです。

なので、
「図書館に入るのを待ちます」
「予約、~人待ちでした」
「待って図書館で読みました」
・・・と言われるとモヤモヤしてしまう部分があります。

ですから図書館についての大きな問題は
「書店で簡単に手に入る本でもタダで読みたいユーザー」
からの多数のリクエストを聞いてしまうため、本来図書館に置かれるべき専門書や郷土史本の枠が圧迫されることだと思います。
それにより大手版元は読者を奪われる結果となり、
小規模版元は取引枠が減る結果となる。

つまり、そういう状況だと出版側からすると図書館の存在ってメリットがほとんどないといいますか、それどころか・・・な感じということになります。

図書館をただの「無料書店」としか思っていないユーザーが少なからずいることが大きな問題といえますし、とにかく利用者増加ばかり狙ってそうしたユーザーへの配慮を図書館に強いる一部の行政も大きな問題といえるでしょう。

整理しますと・・・

・小規模版元の高価な本は書店が置いてくれにくい上に置かれたとしても買われにくい。そのため図書館が「購入」してくれることが大きなプラスになる。だから読者は無料で読むとしても出版社や著者にプラスは大きい。

・大手の新刊本は書店売りが主戦場。書店で読者に買ってもらうべく最大限の努力をしている。そのため図書館の購入一回でその後は何人もの読者が無料で読むと、書店で得られるかもしれない利益が削がれる。だから読者には書店で買ってほしい。
言葉には出さなくとも、そう思っている著者は少なくないことでしょう。

そして、拙著は後者になります。

以上が私なりの図書館問題へのスタンスということになります。