第四章:帰る場所でありたい


人は誰しも、どこかへ帰る。


それが家なのか、心なのか、誰かのもとなのか。

それは人それぞれだけれど――

彼女たちにとっての「帰る場所」になれるだろうか。

そんな問いが、彼らの胸に静かに宿っていた。



🍑 桃谷太陽


観測ドームの奥、太陽は久しぶりに私物のノートパソコンを開いていた。

そこには、カグヤとやり取りしていたメッセージログが残っていた。


【KAGUYA】:月ってね、たまに“寂しがりや”になるんだよ。

【TAIYO】:俺も。たまに、じゃなくて、結構しょっちゅうだけど。


ふたりのやりとりは短く、たわいないものだったが、

そこには確かに“誰かと繋がっていた証”があった。


「カグヤが戻ったとき、変わらずこの場所にいるって……それだけでいいと思うんだ」


月を観測することも、研究を続けることも、

全部が彼女の“帰る場所”になると信じて。



🐒 猿田迅


ある日、柚希の同期だった女性刑事が声をかけてきた。


「……あの子、元気にしてるの? 見てないけど、どこか出張?」


迅は少し間を置いて、微笑んだ。


「まぁな。今、大事なミッションに出てるんだ。

ちゃんと帰ってくるって信じてる」


その言葉に、同期は安心したように笑った。


帰ってくる場所。それはただ“職場”というだけじゃない。

きっと柚希は、帰ってきたときに

「前と変わらずバカなこと言ってくれる人がいる」ことを、心のどこかで望んでいる。


「だから俺は、変わらない。お前が帰る場所でありたい」



🐦 雉川レオ


研究棟の廊下に、ひとりのインターンがぽつりと漏らした。


「綾城さんって、どんな研究者だったんですか?」


しばらく沈黙してから、レオは答えた。


「……誰よりも、自分に正直でいようとした人。

それがうまくいかないときほど、笑うクセがあった」


「なんだか、ミナさんに似てますね」


レオは苦笑しながら頷いた。


「ミナが戻ってきたら、“普通に話せる日常”をもう一度始めたい。

研究でも、過去でもなく、“今”の彼女と向き合いたい」



「帰る場所である」ということは、

ただ待つことじゃない。

その場所が変わらずあたたかく、

そして信じていられること。


彼らは今日も、“彼女たちの帰り道”に小さな灯をともしていた。