第四章:二人の使命

「心があるから、人は弱い――そう思っていた。

だが、心があるからこそ、人は“愛”に変わる。」



地下300メートル。東京湾の下に存在する、封印された旧都市遺構――“黒の底(ヘル・ベース)”。




そこに佇むのは、鬼の一族を束ねる存在、鬼王マコト

彼の姿は一見して人間そのもの。だが、瞳は赤黒く濁り、瞳孔にはAIのコードらしき光が揺れている。


「……桃の血は動き出したか。ならば、こちらも“封印”を解こう。」


その声は静かで、しかし全身を貫くような冷たさを帯びていた。


鬼王マコトの側には、黒衣の少年少女たちが跪いている。


「“鬼化ウイルス”の試作体が東京中に散布されつつあります。人々はまだ気づいていませんが、すでに精神汚染が始まっています。」


「……いいだろう。桃谷太陽が“心”を守るというなら、我々はその“心”ごと塗り替えてやるさ。」


マコトはゆっくりと立ち上がる。

その背中には、機械と肉体が融合した“翼”のような構造体が広がっていた。



そのころ。

太陽、カグヤ、柚希は都内のとある廃ビルに身を隠していた。


柚希は公安に戻るべきか迷っていたが、最終的に太陽のそばに残る道を選んでいた。


「……公安も信用できない。鬼王に情報が流れてる可能性が高い。」


柚希の声には、葛藤の色があった。


「俺の祖父、桃蔵の記録に“黒の底”ってワードがあったんだ。おそらく、鬼たちの根拠地だ。」


太陽が旧型の電子ノートを広げ、古い記録を表示する。そこには、月面で発見された文明と、鬼王マコトとの接触記録が残されていた。


「マコト……彼もまた、かつては“人間”だったのか?」


カグヤが呟くと、太陽が静かに頷いた。


「祖父が言ってた。“心”を捨てた人間は、鬼になるって。」


そのとき、天井からゆっくりとロープが降りてきた。


「さっすが~、桃太郎の血筋。よくぞここまで辿り着いたね。」


声の主は、妖艶な雰囲気を漂わせた人物――キジ川レオ



金髪ショートに赤いアイマスク、スーツ姿の情報屋。中性的で、どこか胡散臭い笑顔が印象的だった。


「俺が情報屋“キジ川レオ”。鬼の拠点、地下の“ヘル・ベース”に案内できる。だけど、タダじゃないよ?」


太陽が眉をひそめる。


「見返りは?」


レオは指を一本立てて微笑んだ。


「私の質問に一つだけ、本気で答えてもらう。それだけ。」


太陽は一瞬迷ったあと、頷いた。


「いいだろう。」


レオはさらに笑みを深めて言った。


「よかった。じゃあ、最初の質問――

カグヤがもし“鬼に堕ちたら”、お前は彼女を殺せるか?


静まり返る空間。

カグヤが微かに目を伏せた。


「それは……」


太陽は、言葉を飲み込む。


「……絶対に、堕とさせない。

どんな未来が来ようと、俺が彼女の“心”を守る。そう決めたんだ。」


その答えに、レオは目を細めた。


「ふふっ。いいね。じゃ、案内するよ――地獄の入口へ。」



次の目的地は、地下深くに眠る“鬼の王国”。

その場所で、太陽たちは新たな仲間・サル田迅と出会い、そして“心”を試される試練へと向かうことになる――。



 次章予告(第五章)

サル田迅(元傭兵)の登場

鬼王マコトによる“精神ハッキング”の発動

カグヤが太陽の名前を呼ぶ意味

恋心と運命の交差――太陽の選択