当ブログのラスト3本(3曲)。

トップバッターはまさかのスキマスイッチである。

 

角松の曲を始め、あの曲この曲と最愛の楽曲たちを二度と聴かぬよう封印してしまって、聴く曲がなくなってしまったのではないか?と思われたかも知れないが、ご心配に及ばず。

最近私は専ら、perfume×中田ヤスタカとスキマスイッチばかり聴いている。

 

スキマスイッチは昨年、新海誠が大成建設CM曲に「ミスター・カイト」を起用したのを見て、そこから遡ること10年ほど前に息子と観に行ったポケモン映画のテーマソング「アイスクリーム シンドローム」っていい曲だったなと連鎖想起し、昨年5月にひたすら聴いていた。

 

 

 

スキマスイッチといえば、代表曲「全力少年」にも、また「ガラナ」のような力強い曲でさえも、サビ部分で、心に切なさをこみ上げさせる憎いメロディが仕込まれている、と思う。これは何らかの作曲テクなのかとググってみたところ、やはりそうであった。計算されたコード進行であるらしいのだ。「小悪魔コード進行」とか「泣きのコード進行」とか言うらしいが、さっぱり分からない。しかも多分、私のこの理解は間違っている可能性大だったりする。

 

ともあれスキマスイッチの曲は、メロディだけで泣かせてしまうということだけは事実である。

 

「アイスクリーム シンドローム」も、サビからラストに至るまでのメロディで、ひたすら泣かせる。というわけでこの曲は既に、5月の青い空と白い雲と一緒に闘った記憶と共に、封印した。

 

その頃、ドラマ界を席巻していたのが「おっさんずラブ」で、ドラマの大ヒットと共に主題歌「Revival」が街中を流れまくっていたのであるが、「Revival」収録のアルバム「新空間アルゴリズム」。

私が今、聴きまくっているのはこのアルバムである。

 

 

「失恋」と「追憶」、最強説。

 

たった今、私が適当に名付けた説である。

持論なのであるが、この世で「失恋」と「追憶」以上に美しいテーマはないと思う。そしてこれらは、音楽や文学のテーマになりやすい。「失った恋を追憶」する曲、それはこの世で最も美しい音楽である。

 

振り返ってみれば私が好きな角松敏生の曲ベストテンは1曲目から10曲目まで全部、「失恋」か「追憶」のどちらかを歌っている。多分、100曲目まで挙げてもどちらかになるだろう。

 

そして「追憶」とくれば、スキマスイッチの真骨頂である(たぶん。)。その名もズバリ、「Revival」。夏の記憶と共に去って行った恋人を、ただひたすら追憶しまくるだけの曲である。

 

「Revival」が他の追憶曲と際だって異なる特徴的な点。

それは、「忘れること」を決然と拒絶した潔さがある故に、かえって極度の女々しさに陥っている点だと思う。

 

 時が解決してくれるとよく耳にするけど でも

 解決が忘れることなら僕はそれを望んじゃいない

 それでもいい そうだとしても忘れたくない

 

未だかつて、ここまできっぱりと、「忘れたくありません」と宣言した曲があっただろうか。過去にしがみつき、このまま二度と戻らない恋人との記憶をなぞり続ける。

永遠に追憶し続けることを決めた男とくれば、「秒速5センチメートル」の主人公・タカキである。なるほど新海誠が、コラボ曲としてスキマスイッチを選ぶ筈である。

追憶に殉じる人生、である。女々しさもここまで清々しく開き直られると、むしろ男らしくも見えから不思議である。

 

 

もう一曲、スキマスイッチの追憶曲で隠れた名曲は、「僕と傘と日曜日」。

 

この曲の何処が絶賛に値するかといえば、「雨」というシチュエーションの使い方である。

 

以前、愛読している有名音楽ブロガーさんのコメント欄に「雨をシチュエーションにした曲は何故、別れの曲が多いのか」と問うてみたところ、「雨と涙を重ねているから」と即答された。

その時、「雨の曲には他にも隠れた名曲が多い。いつかその曲達をテーマに記事を書こうかと」と続けた。あれは何年前だったか、その時はようやく訪れた。

 

「僕と傘と日曜日」はまず、雨を「想い」に重ねる。想いが流れ落ちているところから始まる。

打ち付ける水しぶきが、とある雨の日の想い出をフラッシュバックさせる。ここでの雨は、「想い出の起爆装置」である。

想い出の中の無邪気な二人。どこか遠くの雷鳴さえも、記憶から掘り起こされる。雷鳴、それは二人の結末を予言する音。私にも、明け方の激しい雷鳴を聞きながら、別れを予感した日があったっけ。雷というのは、まるで非情な最後の審判の如く、「不吉」な行く末を暗示する音だ。

 

二人の関係がゆっくりと暗転して行き、そして訪れる別離の日。その日までの想い出をひたすらなぞる、雨=想い出の洪水に襲われ続け、なされるがままの男。

ここで追憶することを止めない男はどうするか?あたりは想い出という名の土砂降りで、洪水状態である。

 

 土砂降りの想い出たちは こんな傘じゃとても凌げない

 それならばいっそ ずぶ濡れのまま 君まで泳いでいこうか

 

何と男は、この洪水状態を利用して、彼女の元へ泳いで辿り着こうとするのである!未だかつて、こんな雨の使い方をした曲があっただろうか?私はこの雨の利用法に、激しく感動した。

 

 

続いて畳みかける想い出の洪水、恋人とは一緒に暮らしていて、あとはプロポーズするだけだったのだなと分かる。

部屋に残る「渡せずの指輪」が辛すぎる。

 

そうして最後に、「打ち付ける水しぶき」が、男の視界も音も奪い、最後のさよならの言葉の意味を、一人で噛み締めるのだ。ここでの雨は、正に男の心と同化している。追憶以外の全てのものを消し去り、救われないままの心を抱いて、「雨」ではない「涙」の滴を頬に伝わせる。

やはりあのブロガーさんの仰るとおり、「雨」=「涙」なのであった。

 

 頬を伝う雫と 声にならない声 

 なんて呼べば僕は救われるだろう?

 

それはこちらが聞きたい。こうして最後まで救われないまま終わるのであるが、コードがメジャーなのが救われる。

 

 

尚、私がが封印した曲は、「Revival」でも、この「僕と傘と日曜日」でもなく、「アイスクリーム シンドローム」1曲である。

 

 

角松敏生、ミニ・アルバム『東京少年少女』4月3日発売。