私の親しい友人に、「愛の伝道師」との称号を与えたくなる程の、 恋愛心理のプロがいます。
ここんところの私の記事がやたら恋だの愛だのといったテーマに偏りがちなのは、間違いなく彼女の影響です。
先日、「ストーカー加害者」という本を一気に読了しました。 1行で内容を語れば、 ストーカー加害者とされる3名にインタビューを敢行したのがこの本。
この本は間違いなく、あらゆるレベルで私的に衝撃度& 影響度として今年ナンバーワンになると確信しましたね。 その話は後日詳述。
ストーカーって、自分達とは全く理解不能な特殊な心理を持った、恐ろしい犯罪者(予備軍)だと思っていませんか?少なくとも私はそんなイメージを漠然と抱えていました。
でも、違うんですよね!それが全くの誤解だということが、この本を読めば分かります。
私は興奮しながら我が「愛の伝道師」に疑問をぶつけました。
「この本を読んだらストーカーと普通の恋愛の境目が分からなくなった」「だって、ストーカー自身に語らせたストーリーはどれも、普通の、ただの恋愛ストーリーなんだもの!」
伝道師曰く
「そんなの当たり前。だって、ものすごく好きになってしまったら普通にストーカーと同じ行動を するでしょ?ストーカーか否かは受け手側の見方の問題というだけだもの」
そして、イギリスのロックバンドPolice( Stingスティングと言った方が良いかもしれない) の世界的に有名な殿堂入りソング「見つめていたい」(Every breath you take)が、ストーカー達からBiblesongとして密かに支持されている ことを教えてくれました。
たとえば次のフレーズなんて、正しくストーカー。
Every breath you take(君の吐く息一つ一つも僕は見続けているよ)
へぇ~。歌詞の意味なんて、考えた事もなかった!
早速調べてみると、この曲は、スティングが別れた妻への想いを切々と歌い上げたものだというのです。 確かに先入観を持って聴けばストーカーチックな歌詞に背筋がゾクッ。
さて、明日のライブを前に予習を諦めた私は、この35年間の角松敏生への想いを確認すべく、やっぱりこの一枚だよなぁとmy Bible albumである“あるがままに”を堪能することにしました。
奇しくも本日7月1日は、1992年「あるがままに」リリースからジャスト24年目になります。
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あるがままに 1992年7月1日リリース。音楽史に金字塔を打ち立て、今尚色褪せることなく燦然と輝きを放ち続ける角松敏生最高傑作。これは最早大衆音楽ではなく、音楽界における「純文学」だ。
24年間聞き続け、プレイ回数数百回どころか千回に達しているであろう私のバイブル“あるがままに”。
昨日聴きましたら、なんと。スティングばりにストーカーのBibleAlbumとして充分、行けるではありませんか!ていうか曲の全てがそうとしか聴こえなくなりました。
浅野さん追悼BAJでかの“サンタが泣いた日”をプレイした際、角松さんも「これは実体験です。まるでストーカーだよね」と自嘲気味に笑っていた通り、“サンタが泣いた日”の直後に作られたアルバム“あるがままに”は更に、ストーカー度が高まっているのですよ。ディープなファンの皆様ご存じの通り、このアルバムは基本、「ただ一人の女性の為だけに創られたアルバム」ですし、ね。
というわけで、華々しく盛大な祝祭である35周年ライブ前夜に何やってんだと叱られそうですが、最高傑作である“あるがままに”を独断と偏見に基づいたストーカー的視点で勝手に捉え直して聴きなおしてみました。
尚、ここでは「ストーカー」とは、世間一般で言われているような犯罪的かつ反社会的な行為を意味するものではなく、「相手から拒否されているにもかかわらずどうしても諦めきれず愛を貫こうとしている、主観的には純愛で客観的には偏愛的な行為」を意味するものとします。(★は、曲の評価ではなく、ストーカー度です)
1.さよならなんて絶対言わない(★★★★)
まず表題が凄い。さよならなんて「絶対」言わない、という決意表明。角松作品には「さよなら」という言葉をタイトルに使う事が多いのですが、この使われ方は異色中の異色。「さよならは愛の言葉」「さよならを言わせて」「サヨナラは口ぐせ」・・・だけどこれは「さよならなんて絶対言わない」。さよなら確定なのに「絶対」言わないもん!って、まるで駄々っ子みたい。
しかも曲中繰り返される“さよならなんて絶対いわないから”の連呼、“さよならなんて絶対いわないでよ”の懇願。“どんなに遠くても愛し続けていくから”“I find away my love”いかなる物理的距離心理的距離をもものともせず、絶対なんとかしてやるという決意表明。
いやーこの曲をアルバム冒頭に持って来た意味が、24年目にしてようやく分かりました!これは、決意宣言だったのですね!(たぶん違う)
2.夜をこえて(★★★★)
5年前の30周年記念ライブACT1でもプレイされた、シングルカットのこの曲。超余談ですがこのシングル盤収録のインスト「ハミルトンの夏休み」って謎すぎる。この24年間ファンの間で一度も話題に上らなかったような気がするけど、どういう意味で創られたのか、ご存じの方いらっしゃいます?
この曲がストーカーチックなのは、「君が僕を捨てたのは間違いである」「君はその過ちに気付いていない」「君に真実の愛とはこういうものだと、僕が気付かせてあげる」という一見至極真っ当かつ極めて論理的な三段論法が、恐ろしく根拠のない自信に基づいている点です。「気付かせてあげる」って・・・なんと傲慢な。
“君の心へ一番大切な事を伝えよう 今こそ気付いて”“真実なら届けこの想い”遠く去って行った恋人に捧げるこの美しいフレーズも、自由が欲しいと言って捨てていったけどそれっていつか空しいと気付くし、それはホントの自由じゃないんだよと「気付かせてあげる」という超上から目線な言葉とセットで聴けば、思い込みの激しいウザい人としか。でもこれ、自分の愛が真実の愛だと疑ったことのない人にとっては、当然のことなんですよ。えぇ、よく分かります、よぉく分かりますとも。
3.モノレール(★★)
記憶では15年前の20周年記念ライブで歌われたのが最後だと思われる、レアな一曲。アルバム中、この曲のみ別の女性に宛てて歌われたと言われているようです。そのせいかどうか分かりませんが、他の曲に比べて粘着度は薄く、ノーマルな追憶ソングに聞こえますね。強いて言えば“こわれかけた愛を取り戻したくて 仕事に出かける君を追いかけたけど”あたり?でも、背中で告げる「さよなら」をあっさり見送っちゃう。
でもね、“叶わぬ時をもう一度だけ 蘇らせておくれよ すぐにも”の後、最後にトシキがcome back to me!と小さくシャウトするの。曲本編が終わった後に捨て台詞のようなこのシャウトに全ての本音が凝縮されてるようで、堪らない。
4.香港街燈(★)
これは私・角松敏生の全作品中生涯不動のナンバーワン、というよりナンバーゼロ、な生涯で最も好きで、最も聴き込み、最も愛する我が偏愛曲ですね。DNAレベルで好きなので説明不要です(過去記事でウザい程勝手に思い入れを語ってますので興味があればそちらをご覧下さい)。
ストーカー目線で聞き直すと、普通。ていうかひたすら追憶ってる曲なので、絶対諦めずに何とかどうにかしようという動機が微塵も感じられません。
5.せめて無事な夜を(★★★★★)
単なる美しいバラードなんかじゃありません。ストーカー度満点のこの曲、歌詞の全てがキてます。歌詞だけ貼り付けければ良いのですが、それではあんまりなので、“あなたはまだ愛を知らない”“あなたに愛を教えてあげよう”が“夜をこえて”の続編というか進化形というか。今頃誰かと暖かな時を過ごしているんだろうなぁと妄想しつつ、「それはホントの愛じゃない」「僕こそ真実の愛」と、世界の片隅で一人孤独に叫んでいる。今は追いかけても無駄だけど、いつか君が気付くときまで、こうして僕はただ君を待つ・・・今もまだ愛してるから、“君の全てを受け止めてあげよう”って、どうやって受け止めるっていうの!?ただ世界の片隅で一人孤独に想念を放ち続けることしかできないという絶望的な状況に於いて、この自信、この思い込みの激しさ。諦めの早い人は是非見習うべき。
“もしも君が深く傷ついたなら もどっておいですぐに包んであげる”相手によってはすごく言われてみたい愛の言葉。でも受け手の気持ち一つでこんなに逆に振れる言葉もないでしょうね。
6.君がやりたかったSCUBA DIVING(★★)
ファンから根強く絶大な支持を受けている、美しすぎるバラード。角松さん自身の思い入れも強く、SOUND MOVEISでも映像化されています。角松ファンは基本、夏と海が大好物なので、この曲にやられない筈がないのです。勿論私も、香港街燈に次いで大好きな曲です。
君がやりたいと言っていたスキューバダイビング、海の中で君の気持ちを想い、君に抱かれ、君と一体化していく(←このあたりが偏愛的)・・・うちに無我の境地に至るプロセスを描いた曲。“今僕は何もいらない”“沈んでゆく・・・浮かび上がる・・・”そしていつしか静寂の深海、悟りの境地に。
7.君を二度とはなさない(★★★★★)
こちらもアルバムリリース後、地味にシングルカットされています。そして「さよならなんか絶対いわない」に続く決意表明、第二弾!君を二度とはなさない&もう何処にもいかない、そしてこれからは“永遠のメロディーを君のために歌う”、と!
これもし相手が拒絶してたらどうでしょう、自分への永遠の想いを永遠に歌われてしまうのです。冗談じゃないですよ!?
私らファンは、こんな言葉をトシキから言われてみたい!と身悶えしながら渇望するのですが、こんな究極の愛情表現も受け手の気持ち一つでストーカーになっちゃうんだ、という分かり易い例です。
8.あるがままに(なし)
そんなこんなの偏愛も、極め尽くせばあるがままにの境地、すなわち悟りの境地。どんな愛であっても、それが真実の愛ならば、辿り着く場所はただ一つだということを、24年前に角松敏生は教えてくれた。
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角松さん、デビュー35周年おめでとう。一万人のファンの「永遠に変わらない想い」を明日届けるから、待ってて!