今日は遂に、女子の「暴言」による警察への被害届がなされたのだが・・・


いじめで「適応障害」と被害届提出
8月9日

愛知県大府市の中学2年生の女子生徒が、いじめが原因で頭痛などの症状が出る「適応障害」になり、教室で授業を受けることができなくなったとして、両親と共に、学校に対していじめへの対応の遅れを訴えるとともに、警察に被害届を提出しました。

中学校を訪れたのは、中学2年生の女子生徒と両親、さらに、この家族を支援している「全国いじめ被害者の会」の大沢秀明理事長です。
家族などによりますと、女子生徒は、去年の入学以降、複数の同級生から「死ね」などの暴言を言われ続け、学校にやめさせるよう訴えたものの、いじめはなくならなかったため、11月にはストレスが原因で頭痛や特定の人に会うのが怖くなる、「適応障害」と診断されたということです。そして、教室で授業を受けることができなくなり、現在は学校の相談室で個別の指導を受けているということです。
学校を訪れた女子生徒と両親は、校長と教頭に対して、生徒たちへの聞き取りなどいじめへの対応が行われたのは10月になってからだったとして、対応の遅れを認めることと、いじめに加わった生徒とその保護者からの謝罪を求めました。
これに対して学校側は、対応の遅れを認めたうえで、「いじめに加わった生徒への対処が甘かった」と謝罪しました。
女子生徒と両親は、このあと、警察を訪れ、いじめで「適応障害」になったのは傷害に当たるとして、被害届を提出しました。




今日のこの報道で、私がただ一つ懸念すること。

いじめのインフレ化である。

今までの報道は、実際に死者が出たり、暴行や傷害を主とした、
成人であれば立派な刑事事件になりうる犯罪行為であったが、
今回は「暴言」による「適応障害」という傷害を負わされたとする訴えである。
勿論、PTSD等も刑法上の「傷害」の結果にあたるとされているので(極最近からであるが)、
「適応障害」も「傷害」になる以上、傷害罪を問えるのは確かなのだが・・・
(PTSDが傷害罪における「傷害」になりうるとする裁判例はあるが、「適応障害」が「傷害」にあたるという裁判例があったかどうか、定かではないので、分かり次第訂正致します)
こういうケースこそ、警察に被害届を出させないで、学校の中で指導して、
問題解決しうるケースの筈ではないか?
一体、学校は何をしていたのか。
報道を見る限り、相手の生徒と保護者からの謝罪が未だなさそうであるが、
それでは暴言が止む筈もない。
このようなケースでさえ、警察の手を借りなければならないのであれば、
いかなる学校も、全ての学校にて、続々と被害届を出されるということになりかねない。
すると、折角、いじめ被害者に追い風が吹いているのに、
「おいちょっと待てよ、そんなのも傷害罪になるのか?」「やりすぎじゃないか?」
と、風向きが変わるような反応が出てきて、
それがこの流れを止めてしまうのではないか・・・
そんな心配をしている。




先月から継続して見ている、平成18年10月19日千葉地裁の、
少年による傷害致死事件、というよりは集団リンチ殺人に対する、加害者と加害者の親を相手にした損害賠償事件。

この事件、ただ一人、暴行には加わっていないFとその両親に対しても、
他の加害者と共に連帯して総額約1億円の損害賠償責任を認めている。

まず原告の言い分をもう一度見ると、

    【原告らの主張】
     選定者Fは,中学時代にYと同じサッカーチームに所属し,ツートップを組むような仲であったにもかかわらず,Yを助けなければならないとの気持ちは一切なく,むしろYが暴行を受けるところを是非見てみたい,見張り行為をしなければならないなどと考えて,ほかの被告少年らによるYに対する暴行の謀議に参加し,Yを迎えに行くため,所有するバイクを被告Dに提供したり,本件第1現場に赴いてYが暴行される様子を確認したり,見張りを行ったりしている。
     かかる行為に加え,選定者Fは,意識不明の状態に陥っているYが死んでしまうかもしれないと認識しながら,証拠隠滅のため,直ちに病院に搬送せず,安易に本件第2現場へYを運び,Yの発見及び救助を遅らせた結果,Yを死に至らしめた。
     これらの一連の行為は,被告A,被告B,被告C,被告E及び被告Dと同様に,共同不法行為になることが明らかである。

  


Fは、Y君と中学時代、仲良くサッカーでツートップを組んでいたらしい。
にもかかわらず、暴行を止めようともせず、暴行されるのを見てみたい、見張りをしなければならないと考えて、積極的に幇助し、しかも証拠隠滅を図っているというのである。
このような行為をしていれば、成人であっても立派に幇助犯ではなく、共同正犯(共犯)と評価されるであろう(幇助犯は共同正犯よりもずっと罪が軽くなる)。

これに対し、裁判所はいかなる判断をしたのか。



3 争点②(選定者Fの不法行為責任)について
   前記□のとおり,被告A,被告B,被告C,被告D及び被告Eは,電話でのYの態度が生意気だと感じたことから,Yに対して集団暴行を行うことを決意したところ,選定者Fは,Yへの電話での呼出しが行われていた間は,自室の外におり,自らYに対する呼出しを行っていない。しかし,証拠(甲第7号証の3,第8号証の2,第9号証の1,第10号証の2,第11号証の4,第12号証の1)によれば,被告少年ら6名の間では,そのうちだれかが後輩を呼び出して暴行を加える際には,具体的な命令や話合いがなくとも,一緒に暴行を行うか,少なくとも現場やその付近に赴き,見張りをしたり被害者を逃がさないように協力することが暗黙の了解事項となっていたと認められる
そして,かかる被告少年ら6名の了解事項を前提として,前記□のとおり,選定者Fは,被告AらがN8に対して集団暴行を行っている間,そのそばで見張りをするなどしていたこと,前記□のとおり,N8に対する集団暴行の直後に,選定者Fの自室でYに対する呼出しが行われたこと,選定者Fは,被告AらがYへの電話を切った後,興奮した様子でYに対する暴行を口にしていたとき,これを止めようとすることなく黙って自室にいたことを考慮すれば,選定者Fの存在が被告AらによるYに対する暴行の共同の意思の形成に少なからず影響を与えたと評価すべきである。
   また,選定者Fは,自らYに対して暴行を加えていない。しかし,前記□のとおり,選定者Fは,Yが暴行を受ける様子を見てみたいという気持ちや,仲間が暴行をしている間にその場にいないと,そのことを理由に被告Aらから自分が暴行されるかもしれないという考えから本件第1現場に向かっていること,選定者Fは,家族に告げたり,携帯電話等で警察に連絡したりしてYに対する暴行を回避する措置を講ずることが可能であったにもかかわらず,そのような行動には出ようともせず,むしろ,本件集団暴行が行われているのをそばで見ていたことからすれば,Yが暴行を受けることについて,積極的に望んではいないものの,少なくともこれを認容していたと認められる。
   さらに,前記□のとおり,選定者Fは,被告Aらとともに,Yを本件第2現場まで運んだ上,救急隊員に対して虚偽の事実を告げるなどして,本件集団暴行直後の証拠隠滅行為を実行している。
   そして,Yに対する呼出し,集団暴行及び証拠隠滅という一連の行為は,時間的,場所的に近接して行われており,社会的に1個の不法行為と評価することができるところ,この間の選定者Fの言動,果たした役割及びその主観面を総合的にみれば,選定者Fについても,全体として被告A,被告B,被告C,被告D及び被告Eらと関連共同性が認められるというべきである。
   したがって,選定者Fは,Yの死亡について,共同不法行為責任を負う。



Fという少年は、一体、この犯罪少年連中の中でいかなるポジションにいたのか?
Gのように、報復を怖れるような上下関係ではなく、むしろ積極的に加害者を支援し、暗黙の了解の下に見張り行為などに関わっているように見える。
これには少し、Fの生活状況等の背景を見ないと分からないかもしれない。


 9 争点⑧(被告F1及び選定者F2の不法行為責任の有無)について
  □ 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,選定者Fの生活状況等並びに被告F1及び選定者F2の監督状況等に関し,以下の事実を認めることができる。
   ア 選定者Fの生活状況等
    □ 中学校時代
      選定者Fは,中学校ではサッカー部に所属していたが,中学3年に進級した直後,サッカー部は弱くてやる気が出なくなったという理由で退部し,それ以降,被告A,被告E及び被告Dら不良仲間と交遊するようになり,夜遊びをするなどして生活が乱れ始め,学校への遅刻や早退を繰り返すようになった。
      また,選定者Fは,そのころから,常習的に飲酒したり,たばこを吸うようになり,喫煙で7回補導されたことがあった。
      さらに,選定者Fは,中学校時代を通じて,10回から20回程度万引きをしたことがあり,自転車や原付自転車を盗んだこともあった。
     〔乙ヘ第7,第8,第11号証,選定者F〕
    □ 中学卒業後
      選定者Fは,平成13年3月に中学校を卒業した直後から,バイクの無免許運転をするようになった。
      選定者Fは,高校に入学したものの,学校が面白くないという理由で遅刻,早退や欠席を繰り返し,それにより単位が足りなくなって留年が決定したため,同年12月,高校を退学し,とび職などして働き始めた。
      選定者Fは,平成14年2月,バイクを無免許で運転していたところ,タクシーと衝突する事故に遭い,じん臓を摘出するなどの重傷を負った。それ以降,仕事にも行かないようになり,自宅の自室をたまり場として,毎日のように,不良仲間と夜遅くまで飲酒,喫煙,ゲーム,麻雀などをして過ごすようになった
      選定者Fは,被告Aらが,先輩に対する態度が悪いなどといった理由で,後輩を呼び出しては集団暴行を加えた現場に4回程度立ち会ったことがあり,その際,付近で見張りなどをしていた。



この経緯を見ると、恐らくFは、中学2年生まではY君と同様普通の中学生活を送っていたものと思われる。中3から徐々に転落していくのだが、高校中退以降は親もお手上げ状態だったのではないか。
このような状態では、順調な高校生活をスタートさせようとしている、後輩のY君が疎ましかったに違いない。


そして、このようなFを、親としての監督義務違反があり、その結果としてY君を死に至らしめる集団暴行があった、即ち監督義務違反とY君の死の因果関係を認めたのである。

世間の「親」に、声を大にしてお知らせしたい。
自分の子どもは、絶対に犯罪の「加害者」側に回らないという過信はしない方がいい。
そして、もし、我が子が日頃親しくしている「不良グループ」が犯罪を犯して、我が子が「見張り」等の行為を通して荷担していたら、
たとえ直接加害行為に及んでいなくとも、
以下の通り、他の加害者と全く同じ割合で、損害賠償責任を負うことになるのです。



イ 被告F1及び選定者F2の監督状況等

    □ 家族の状況等
      本件集団暴行当時,選定者Fは,被告F1,選定者F2,姉及び妹との5人家族であった。被告F1は,日曜日以外は仕事で家を空けており,勤務先の都合で,年1回,2,3か月程度海外出張することもあった。選定者F2は,週5日,朝8時ころ仕事に出て夕方帰宅するという生活をしていた。
 
    □ 中学校時代
      被告F1及び選定者F2は,選定者Fがたばこを吸っていたことを認識しており,口頭で注意をすることもあったが,改善はしなかった。
      被告F1及び選定者F2は,選定者Fが万引きしたり,自転車を盗んだりしていたことを認識していたが,特に指導はしておらず,被害弁償や被害者への謝罪等の対応もしたことはなかった。
      被告F1及び選定者F2は,選定者Fが被告A,被告E,被告Dら不良仲間と交遊するようになったことを認識していたが,選定者Fが自ら付き合いをやめることを期待して,強く注意することはなかった。
      被告F1及び選定者F2は,選定者Fが夜遊びするなどして生活が乱れ,学校への遅刻や早退を繰り返すようになったことについて,中学校の担任からの電話連絡で認識しており,口頭で注意したことがあるが,選定者Fの生活態度は全く改善されなかった。
    
    □ 中学卒業後
      被告F1及び選定者F2は,選定者Fが無免許運転をするようになったことを認識していたが,無免許運転をやめるよう指導することはなかった。選定者Fが前記衝突事故を起こしたときも,被告F1は,事故で破損したバイクを修理し,引き続き選定者Fがバイクに乗るのを黙認していた。
      また,被告F1及び選定者F2は,選定者Fが高校に入学したものの遅刻,早退や欠席が多く,余り高校に通っていないことを認識していたが,口頭で注意したのみであり,選定者Fの怠学は全く改善されず,結局高校を退学するに至った。
      さらに,被告F1及び選定者F2は,選定者Fが,自宅の自室をたまり場として,毎日のように不良仲間と夜遅くまで飲酒,喫煙,ゲーム,麻雀などをしていたことを認識していた。選定者F2は,たまに注意したものの,全く改善されなかった。また,選定者Fの自室は,裏口から直接出入りができるために不良仲間のたまり場となっていたところ,これを解消するような措置を,本件集団暴行が起こるまで何ら採らなかった。本件集団暴行の直前も,被告少年ら6名は選定者Fの自室で飲酒したり喫煙したりして騒いでいたが,選定者F2は,そのことを認識しながら,うるさいなどと文句を言うのみで,被告少年ら6名を解散させるなどの措置を講じないで寝てしまった。
     
  □ 前記□の事実関係に基づき,被告F1及び被告F2の不法行為責任を検討する。
   ア 監督義務違反
    □ 選定者Fには,中学生のころから,怠学,飲酒及び喫煙という非行行為がみられる。これらの非行行為は,少年期特有の内的欲求の不満や,自己顕示欲等を原因として,幼少期からの成育過程や家庭環境等から生じた悪性癖の発現であることが多いが,これを放置しておけば,更に非行性が進行することは容易に予測することができる。
      にもかかわらず,前記□イからすれば,被告F1及び選定者F2は,上記非行行為の原因や問題性を十分に把握し,改善に向けた真摯な努力をしなかったというべきである。被告F1及び選定者F2は,選定者Fの喫煙や怠学について口頭で注意をしていたが,その後の選定者Fの行状が改まるどころか,より一層悪化していったことに照らせば,被告F1及び選定者F2の指導の効果には疑問があり,到底真摯な努力をしたと評価することはできない。
      その結果,選定者Fの非行性は,中学校を卒業した後更に進行し,自宅の自室をたまり場として,毎日のように不良仲間と夜遅くまで飲酒,喫煙,ゲーム,麻雀などをするようになった。そして,選定者Fの不良仲間には,被告A,被告B,被告C,被告D及び被告Eという粗暴的傾向が顕著な少年がいたこと,選定者Fは,本件集団暴行以前に,被告Aらが後輩に対して集団暴行を加えた現場に4回程度立ち会ったことがあり,その際,付近で見張りなどをしていたことに照らせば,選定者Fがいずれ不良交遊関係の延長として,集団の雰囲気に流され,多数者による少数者に対する暴行又は弱者に対する暴行に関与するに至ることは十分予測できるところであるから,本件集団暴行は,選定者Fにとって偶発的に発生したものというべきではない。
      とすれば,選定者Fの不良交遊を背景とした上記非行行為について,相当な監督をせずに放任しておけば,いずれ選定者Fが集団暴行に関与するに至り,被害者の死亡という結果が生じることも予見できたというべきである。

    □ 選定者Fは,本件集団暴行当時,16歳という中学校を卒業したばかりの年齢であり,被告F1及び選定者F2と同居していたのであるから,被告F1及び選定者F2が親権者として,選定者Fに及ぼしうる影響力は大きかったというべきである。
      とすれば,被告F1及び選定者F2としては,選定者Fの非行性の発現がみられた場合には,早期にその原因や問題性を把握し,改善に向けた真摯な努力をすることが期待されていた。特に,被告Aら粗暴的傾向の顕著な不良仲間との交遊については,これをやめさせるため,不良仲間の保護者との連絡を密にしたり,場合によっては警察に相談するなど,あらゆる手段を尽くして然るべきである。にもかかわらず,被告F1及び選定者F2は,たまに注意するのみで,それ以上に何ら積極的な働きかけを行っていない。そればかりか,前記□イのとおり,不良仲間が裏口から直接選定者Fの自室に出入りできる自宅の構造を放置するなど,事実上の放任状態であった。
      したがって,被告F1及び選定者F2には,いずれも選定者Fに対する監督義務違反があったと認めるのが相当である。
   イ 相当因果関係
     上記のとおり,選定者Fの非行性は徐々に形成され,進行していったこと,少年の可塑性からすれば,その進行過程において,改善の可能性は幾らでもあったこと,本件集団暴行は,選定者Fの不良交遊から発展したものであり,偶発的に発生したものではないこと,被告F1及び選定者F2は,親権者として選定者Fに及ぼしうる大きな影響力を有していたことに照らせば,被告F1及び選定者F2が,前記ア□の義務を尽くしていれば,経験則上,少なくとも選定者Fが本件集団暴行に関与することを防止し得たというべきである。
     したがって,被告F1及び選定者F2の上記監督義務違反とYの死亡との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。
   ウ まとめ
     よって,被告F1及び選定者F2は,民法709条に基づく不法行為責任を免れない。




少年犯罪の民事訴訟において、両親の責任についてここまで鮮やかに、説得的に断罪した判決文を、私は見たことがない。
この責任の部分は、そのまま「学校」に置き換えてもいい位だ。


直接暴行を加えていなくとも、このように、
本人と、その両親は、損害賠償責任を負うことになる、
ということもあるんです。