既存店売上高は18カ月連続のプラス!!
今回は、「JINS」のブランドで低価格のメガネ販売を手がけるジェイアイエヌの田中仁社長(47歳)に登場していただきました。
「昔はやんちゃだったんだろうな~」。外見からは、思わずこんな風に感じてしまったのですが、話をうかがっていると、経営者としての責任感や覚悟が伝わってくる。不思議な魅力を持ち合わせているおしゃれなお兄さん的な方が、田中社長です。
好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」。
苦しい時にはチャンスがある一方で、上手くいっている時には思わぬ落とし穴にはまってしまうこともある。実際にそうした人生を歩んでこられたようです。
高校時代から起業志向のあった田中社長は、経営者になるための学びの場として、卒業後に群馬県にある前橋信用金庫(現・しののめ信用金庫)に就職しました。そこで直面したのが商売の厳しさ。
取引先の経営者が、資金繰りに行き詰まり自殺する。そんな出来事も1度や2度ではなかったそうです。「会社経営は甘くない」。起業への思いが揺らぐこともあったそうです。
それでも熱い思いは消えることなく、1987年に服飾雑貨の製造卸の「ジンプロダクツ」を創業、88年にジェイアイエヌに社名を変更しました。起業までの実体験、覚悟が若くして重い社長像を作り上げているのでしょう。
「ユニクロ」の柳井社長から受けた質問の内容とは
韓国で見かけたメガネの安さにインスパイアされ、2001年にアイウエア、つまりメガネ販売の関連事業に進出し、福岡の天神に「JINS1号店」をオープンさせました。当時の田中社長はユニクロを展開するファーストリティリングの柳井正社長の本をバイブルに、オリジナル商品の企画、製造そして販売を手がけました。衣料業界に普及しているSPA(製造小売り)システムをアイウエアの業界に導入を図ったのです。
月が変わる度に次々と新商品を投入していくためにマーチャンダイジングの手法を工夫し、顧客のニーズを先回りして満たすための改革を進めました。「メガネっ娘」や「メガネ男子」といったメガネブームも追い風となり、2006年にはヘラクレス市場に上場を果たしました。
しかし「人間万事塞翁が馬」。急成長の時期から業績が伸び悩むことも。田中社長は次の一手を模索していた2008年の冬、柳井社長に直接会うチャンスが訪れました。そこで柳井社長からこう問われました。
「あなたの会社の事業価値はなんですか?」
柳井社長のこの質問にうまく答えられなかった田中社長は、幹部合宿を開催し事業価値について徹底的に議論しました。そこで練り上げたのが「メガネをする全ての方に、よく見える×よく魅せるメガネを、史上最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」というものでした。
視力補正だけではない
「視力が1.5以上の私には、その恩恵にあやかれませんね」。そう投げかけると田中社長は嬉しそうに「次はそういう人がターゲットなんです!」と。
単価の下落とメガネ購買人口の減少でメガネの市場規模は減少傾向ですが、視力がいい人もターゲットに市場自体を拡大すると。その名も「1兆円構想」。
マラソン、サイクリング、山登りなど紫外線にさらされるスポーツを楽しむ人々、また日々デジタルディスプレイと向き合っている人々は莫大な数になります。田中社長によれば、現在、国内のメガネの市場規模は約4000億円。ですが、視力の補正にとどまらず、それぞれのシーンで適したメガネを作り出せば、市場拡大の余地は十分にある、と田中社長は見ています。
JINSは今後、こうした新しい市場で目を保護する高機能商品で、攻勢をかけていく計画です。確かにメガネの低価格化は進んでいますが、ゴルフ用のメガネはまだ高価格です。「芝目が良く見えるメガネが低価格で購入できたら、持ちませんか」と田中社長は問いかけます。
「新しい産業を作り出す気概がないと成長できない」。そう強調する田中社長は新製品や新しい事業展開のアイデアが次々と浮かんできているそうです。売り出したい商品はいっぱいあるが現場がパンクするから抑えている。そう話すトップの目は、とても輝いていました。