『少女七竈と七人の可愛そうな大人』
(桜庭一樹:角川書店)
<あらすじ>
七竈(ななかまど)の木は燃えにくく
7回竈にくべて初めて炭になるという。
いんらんの母は叶わぬ恋を忘れるため、
己を灰とするべく七人の男に抱かれ
誰の子かもわからぬ七竈(ななかまど)を産んだ後に
旅人となって家に寄りつかなくなった。
少女・七竈の異形の美貌も、
出自が知れ渡った狭い街では呪いでしかない。
白く閉じた旭川で 老いた祖父と共に暮らす七竈は
幼馴染の少年・雪風にだけ心を許す。
しかしその世界にも変化は訪れ始めていた……。
世の中の不幸には2種類あって、
一つは不幸な事件に出会うというもの。
例えば家族を亡くすこと。
もう一つは不幸に生まれつくというもの。
例えば家族が欠けた家庭で育つこと。
桜庭一樹の小説に登場する不幸は常に後者である。
前者の場合は、事件までに形成された人格と交友関係で
その不幸を乗り越えてゆくことになる。
しかし後者の場合は空気のように不幸を呼吸し、
それを血肉として育たねばならない。
それは何かのイベントによって克服できるものではなく、
日々摂取する食物で体を構成する細胞を入れ替えていくように
成長と知恵で淡々と乗り越えてゆくものだ。
そして多くの場合、その克服は少年・少女時代との決別を意味する。
桜庭一樹(女性)の描く少女像は、
基本的には少女を特別視したがるオタク的な幻想とは無縁である。
この物語の主人公である七竈は、
鉄道オタクで、古風な話し方をし、
誰もが振り向く美貌の持ち主であるという
桜庭キャラとしては珍しくデフォルメが効いているが、それでも
それらの要素がこの世界に対して無力であるという点では
他の作品と変わりがない。
しかしそれでも
その無力な少女時代との決別は、なぜか悲しい。
モノトーンの狭い世界での物語は、
影絵のようにシンプルで
影絵のように哀しい。
