前田敦子が「AKBを誕生させるために」、この世に生を受けたのだとしたら、指原莉乃は「AKBをさらに」発展させるために、この世に生を受けたのでしょう。いや、アイドルやスターと呼ばれてきたジャンルを改革するために生まれてきたのかもしれません。
指原莉乃世代
2007年、AKB48 第二回研究生(5期生)オーディション合格。同期に石田晴香(チームB)、内田眞由美(チームK・第一回じゃんけん選抜女王)、北原里英チームB、Note yet)、小原春香(現SDN48)、近野莉菜(チームB)、中塚智実(チームK)、仁藤萌乃(チームK)、宮崎美穂(チームK)がいます。
この指原莉乃世代は伝説の研究生公演を初めて披露したメンバー。また、初めて劇場でアンコールのかからなかった苦汁の公演も経験しており(AKB公演史の中でたった一度のみ)初期メンバーとは違った意味で辛い経験が多い娘達です。それゆえか、この世代は他の世代より度胸が座っていて長続きするメンバー多く、固定ファンが多い。
ゆえに、この世代が中堅どころとして現在のAKBの屋台骨を支えていているので、13期までいるAKBにおいて、この年はAKBきっての「豊作の年・プラチナ世代」と呼ばれています。
取り得ほぼ0のごく普通可愛い娘
最近では珍しくなくなりましたが、指腹は当時のAKBメンバーでは数少ない地方出身者の一人。大分県という地方から上京しAKBに入りました。平成の「東京で一旗上げてやるぜ!」という思いが強いド根性娘なのですが....。
しかし、そのド根性経歴とは裏腹に、本人も自称するように、まったくもって取り得ゼロで、どちらかというと目立たない普通のどこにでもいる田舎娘。さらに人見知りで、アイドルヲタク、妄想壁があり、歌もダンスもイマイチ(というよりイマ二、サン)、顔もちょっと可愛いくらい(AKBのオーデションで受かるので一般レベルでは極上)で、特別な特徴もあるわけじゃない。
性格も引っ込み思案でちょっぴり根暗。調子に乗っていたかと思えば、すぐにヘコむし、泣いてしまう。根性あるかと思えば、思った以上にへたれっぴ(彼女の大躍進のキーワードとなった)。
そんな彼女がなぜ、今ではAKBの顔の一人ともいえるほどのスターになったのだろうか?
たしかに、アイドルスターにとって致命的な「へたれ」や「よごれ」に徹するという逆転の発想は見事かもしれない(そのへたれ度とよごれ具合が徹底している)。ブログ1日、100回、200回更新とか様々なお笑い芸人真っ青の罰ゲームやムチャ振りに応えるのもすごいのかもしれない。
でも、そんなことより、たぶん彼女の優しすぎる人間性ってヤツが見る人に元気を与えているのだろうか?うーん、でも、彼女を観れば見るほど、その魅力が分からなくなる....
その答えは、ファンもおろかスター発掘の才人・秋元康さえわからない。一番分からないのは当の本人がわからないのかもしれません。
人が必ず失ってしまうものを持ち続ける難しさ
人は成長していき、ある程度の成功を収めると、それは自身の努力の賜物だと思い、それが自信となり、更なる向上へ向うのだが、多くの人は過信となり溺れていくだけである。
そして、失敗に直面したとき、自分だけではなく、他の何かのせいにしてしまう。チャンスがないとか、周りが認めてくれないとか、誰もわかってくれないとか...。
指原莉乃は言う。「チャンスはいつでも与えられていて、それをものに出来ないのは自分の不甲斐なさだけ」「自分が選抜に入れないのは自分の努力の足りなさ」「選抜に入れたのはファンのみなさんの力だけです」。彼女は絶対に、ダメなときに他の誰かのせいにはしないし、良かったときには周りのおかげと言う。
『実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな』 =人格の高い人ほど相手に対して態度が謙虚であるという諺を若くして体現している。成功したとき、人が失いがちな心をいつも持ち続けている人である。
個性がないから、いや持とうとなんてしないから愛される
彼女はよく泣く。自分が悔しいときより、他の人が嬉しいとき、悲しいときのほうが、よく泣いている。自分の努力や辛いことを話すのは不得意のようだ(自虐ネタは得意だが)。それより、他のメンバーの努力や凄さを話すときのほうが活き活きしている(ときたま毒も吐くが...)。そして、常に自分のことより相手のことを深く考えてしまう。
「個性が大切」「自己アピールが必要」と狂ったようにのたまう現代社会人とは真逆の人だ。
彼女は自分を売り込むことがなにより優先な芸能界....いや「自分重視」と考えがちな、現代社会において最も生き難い人種なのかもしれません。
それゆえか、彼女は誰からも愛される。尊敬や憧れは少ないかもしれないけれど、メンバーからもスタッフからも、ファンからもAKBの中で最も愛されているのは指原莉乃、その人なのかもしれない。
ただ、愚直に真正面から物事に懸命に取り組むだけなのに。
AKBの奇跡・指原莉乃
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そう、スターとなる人間にとって絶対ともいえるほど必要なエゴが欠落している。TVのバラエティでガンガン前に出るイメージがあるが、そこに自身のエゴが見えない。スターになるには致命的な欠点かもしれない。しかし、そのエゴが本当に0だからこそAKBの指原莉乃は誕生したのかもしれません。
生き馬の目を抜く芸能界、残酷なほど競争原理が働く現代社会において指原莉乃はアイドルの神が使わした唯一の安らぎと優しさなのかもしれません。天才・プロデュサー秋元康も奇跡との一言しかいい表せない指原莉乃が今後のAKBを、そしてアイドル界を革命していくのは間違いない。
彼女を追っていれば必ず、奇跡をみせてくれる。指原莉乃の今後の軌跡を追うべし。
注意:でも、そんな指原莉乃を本気で追っちゃうと全てを彼女に注ぎ込みたくなるので、「推しメン」にするには、その覚悟を決めてからにしましょう。人生狂います