AKB選抜総選挙とは?
AKB48の特定のニューシングルに参加するメンバーを選抜するために2009年から始まったCDの購入者やファンクラブ会員等からによる直接投票制ファン投票。選挙対象者はAKB48・SKE48・NMB48(第3回から)のメンバーとその研究生の全てのAKBメンバーが対象となります。
メディア選抜:1~12位までが優先的にテレビ等のメディアに出演できる
選抜メンバー:1~21位までがニューシングルに参加
アンダーガールズ:22位以下定数が、シングルのカップリング曲を歌唱することができる。
そして1位がAKB女王の称号である「センター」ポジションの位置を担う。
もともとは特定のニューシングル参加メンバーを決めるためだけの制度だったようですが、毎年恒例となったことから、選挙からの1年間がメンバーのAKB内での人気順位付けのようなものになった感があります。
アイドル界、いや芸能界のタブーを打ち破る
なぜゆえ、このAKB選抜総選挙が始まったのか?2008年までにはシングル曲もオリコン上位の売り上げを誇り、マスコミ、メディア等への露出も多く個々のメンバーもAKB外で活躍するようになり、地下アイドル的な扱いを脱却し、メジャーアイドルグループ(ほかに突出したアイドルグループがいなかったのも事実)としての地位を得ていたはずです。
そう、なぜゆえ、2005年から約3年という歳月で苦節の時を経て勝ち取ったある程度の地位を揺るがすような、「グループ間の内での順位付け」というアイドル界のタブーに打って出たのか?
プロデューサーの秋元康がインタビュー等でいつも語られる「AKBにNGはない」「常に誰も見たことのないことをやるのがAKB」ということを忠実に実行しただけかもしれませんが、実行するのはあまりにリスクが大きすぎる博打だったと思います。
ごちゃごちゃ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや!
確かに、当時、ファンから最も意見というか苦情が多かった運営側が気に入ったメンバーしかメジャー曲に参加させないとか、プロデュースしないという「運営推し」(今でもネット等で騒がれるネタ)がるのでは?という非難が多くがありました。
「だったらあなたたちファンの人気順でシングル曲メンバーを決めてやるばい、そしてついでに順位もつけちゃうよん」と....。
この選抜総選挙が行われると判明した瞬間、聡明なプロレスファンなら誰もが前田日明がかつてリング上で叫んだ伝説の名言「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや!」を思い出したはずです。
そう、これは「AKBメンバーよ、そしてファンのみなさま、俺の壮大なアングルにガチで答えてみせろや!」と秋元の最大の挑戦状だったのでしょう。 ウォー、秋元康・天才!
不安と恐怖の選抜総選挙
AKBファンには各々好きなメンバーを「推しメン」として応援するという不文律があります。しかし、それはファン個々が楽しむことであって、他のメンバーとの人気あるないは関係ないこと。
それゆえ、ファンは自分の好きなメンバーがAKB内においてどのくらいの位置にいるか?は興味がある反面、複雑な思いもあったでしょう。
一番、不安というより恐怖を感じたのが当のAKBメンバーだったでしょう。秋葉原のヲタクアイドルからやっと新しい形のアイドルグループというポジションを得た矢先に....この企画。
確かにAKBは自分達の夢をかなえるための登竜門であり、いつかはファンの人気を自分だけに集める必要が。でも、同じ夢を追うAKBメンバーという仲間があったからこそ、つらいことも耐えられてきたことも事実。そんな苦楽を共にしてきた仲間の間で順位付をさせられるなんて....。
彼女達にとって、競争原理が働く現実社会の厳しさと残酷さを初めて面と向う出来事だったはずでしょう。それも、公衆の面前でその人気順位を晒さなければならない。なんという過酷な試練。
これがガチンコだ!世界最高のノンフィクション・ドラマ
そして、迎えた2009年4月26日『AKB48 13thシングル選抜総選挙「神様に誓ってガチです」』inNHKホール。順位をみればほぼ順当どおりかと思いますが....。
しかし、ここからとんでもない、AKBという大河ドラマが始まるとは、メンバーもファンもマスコミも世間も、そして仕掛け人・秋元康も誰も想像しなかったはず。
前田vs大島の頂上対決という構図。選抜落ちする、創世記メンバーの思い。ファンからの強烈な愛とそれに身を削って応えようとする佐藤亜美菜と報われない愛の物語(通称、亜美菜ショック)。事実上の伝説の「神7」の誕生。SKE48のW松井の躍進。等々、個々のメンバー全員にある隠された物語が露になっていく。
今でも続く選抜総選挙の物語はAKBのアングル→ガチの壮大さは、三沢が初めて鶴田に勝ったり、川田が三沢からピンフォールとったり、蝶野がG1連覇したり、前田がアンドレにシュートを仕掛けたり、長州の顔面蹴り飛ばしたりした、あの頃のプロレス以上です。
前田敦子はエンタメ界を変えるために生まれたきた
順位つけされ票数を見ることで、ファンの数を実感する。そして、自身の不甲斐なさやこれからの努力の約束、そしてなにより、ファンへの感謝を改めて真摯な言葉で話すメンバー達。その表情は喜びと安堵、嬉しさと悔しさ、プレッシャーとエモーション。その全てが彼女達一人ひとりの表情から見える。
そして改めてAKBのセンターとなった前田敦子はこう思ったはず「選ばし者の恍惚と不安、我にあり」。これは前田日明がリングス旗揚げ興行にさいの冒頭の挨拶の言葉です。
この日、前田敦子は「AKBに自分の人生捧げる」宣言をしたことでAKBは新たなステージへ進んだはすです。そう、この日を境にAKBは日本の、いや世界のエンタメをガラリと変えた瞬間でした。
コレを観て私は「プロレスこそ最高のアングル」を持ったエンターテイメントだという自負が消え去りました。完璧にエンターテイメントのアングル、そしてガチでも負けたことを痛感しました。