ウクライナとロシアの戦争は悪化の一途を辿っています。
戦線は膠着し、両国ともに国力による総力戦の殴り合いになってしまいました。
ロシアの人的被害も甚大ですが、ウクライナの被害も第二次世界大戦でイギリスが失った兵士をすでに上回ってしまっています。
こういった総力戦となれば、もはや領土の奪還に拘る必要はなく、どちらがより多くの敵兵士を損耗させるかで戦争の勝敗が決まってきます。
まさに第一次世界大戦のような泥沼の長期戦ですが、そうなれば、外資に頼らず、自国内で閉鎖的に国家を運用するロシアの方が有利に思えます。
アメリカや西側諸国は民主主義に基づく国際社会という大きな経済圏の中にいます。それらはグローバルである一方で他国への依存度も高くなり、他国の不景気は自国にも波及する弱点があります。また、近年のアメリカはIT産業を発展させる代わりに製鉄などの工業力や農業などの一次産業の一部は失墜しつつありますが、ロシアはこれらを自国内で生産し、消費しています。確かに中国などへの輸出先もあるとはいえ、だからこそロシアは他国からの経済制裁の影響を受けにくいという強みを持っています。
そして、ロシアは開戦初期の電撃戦失敗を認めて戦略を長期戦に切り替えてしまいました。また、ウクライナの大規模反転攻勢が失敗に終わった今、ウクライナも勝ち筋を長期戦に突入するしか無くなってしまっています。しかし、この戦い方はロシアの土俵であり、ウクライナがこの戦い方でロシアに勝利することは非常に難しく、もし勝てたとしても国家としてウクライナが破綻する可能性があるでしょう。
だからこそロシアは計算高く、あえて現ウクライナ政権を生かしつつ、ウクライナ軍と現政権内に揺さぶりをかけ、疲弊させているようにも思えます。
ウクライナへの軍事支援は最早、ウクライナ軍の軍事予算を遥かに超えています。つまりこの戦争はウクライナとロシアの戦争というよりも西側諸国対ロシアの構図となっていて、ウクライナはベトナム戦争や朝鮮戦争のような代理戦争の当事国となってしまいました。
よって、もし、ウクライナが負ければ、それは西側諸国の敗北でもあるため、欧米諸国の発言力は低下し、反対にロシアや中国は一層発言力を増す結果となるでしょう。
日本もこの代理戦の当事国にならないためには、現在の日本の防衛戦略上、アメリカが強国でいられるかで変わってしまいます。仮に日本が当事国となった場合、かつての大日本帝国が行った日清、日露の両戦役の意味を現代人は身をもって理解することになるでしょう。
話しを宇露戦争に戻し、ロシアの目的を考えると、ウクライナの非軍事化であることは開戦当時から明白ですが、その裏で民主主義への反発も理由に考えられます。
つまりロシアは、アメリカ率いる民主主義を否定して干渉されたくない。それに巻き込まれたくない。国家の主権はあくまでロシアにあり、軍事面、経済面でも独立したいと考えているのです。
それは現在の世界秩序(民主主義国家圏)から各国の多極化を意味していますが、そうなれば世界は中世に逆戻りして、各国の協力や国際関係はなくなり、紛争が激化する国家が出始めることになるでしょう。そして、民主主義とは違うイデオロギーと経済圏を持つ中国やインド、アフリカ諸国はその中で大きく影響力をもちますが、逆にアメリカも黙って現在の席を譲るとは思えません。
そうなった時の日本はアメリカと運命をともにするのか?かつての主権を取り戻そうとするのか?それを100%予想することは出来ません。(現実的に確率が高いのはアメリカと運命をともにすることだと思いますが...)
また、現在の日本に世界史の大きな流れに影響を与えることは出来ませんが、いずれにしても、いずれ来る激動の渦の中で、生き残るための分かれ道を決断する時が近づいています。
そして、仮にアメリカ失墜の未来が待っていて、日本がアメリカと運命をともにするとすれば、先の大戦に負けたこと、逆に言えばそこまでして戦う価値は十分にあったことは現代だからこそ見えてくるのではないでしょうか。
敗戦後、アメリカ率いる民主主義と国際社会に入ったことで日本が得た恩恵は多大にあります。
しかしそれは、アメリカ失墜を前提に考えれば、長い目でみて長期スパンのどの時代だったかによりますし、個人からしてみれば、どの時代に生まれたかで、アメリカへの評価は変わってくるでしょう。
敗戦後の日本で、アメリカ主導の民主主義が当たり前になったことと、負けたことで主権を失ったことは、今後、前述した未来が待っているとすれば、今を生きる世代から客観視すると、敗戦が悔やまれます。(戦勝国となった大日本帝国のたられば話を抜きにすればですが...)
未来を予想することは非常に難しいですが、歴史をみれば、戦争から逃れられることが出来ないことは分かりますし、戦争を経験せずに人生を終えられることはとても幸せなことに感じます。
しかし、かつての先人たちも自分の生まれた時代を精一杯に生きてきました。
だからこそ今があり、生まれた時代を選べない以上、先人を見習って強く生きていくことが大事だと、宇露戦争から飛躍して考えさせられました。
確かにウクライナは反転攻勢という最大のチャンスを逃してしまいました。
しかし、ウクライナはこれまでも不利な戦いを耐え抜いてきました。この戦争が始まった時も、誰もがウクライナの早期敗北を予想して、欧米はしたたかに戦勝国となったロシアとの関係を維持することを開戦当初から模索していました。その中でウクライナは自らの力で首都防衛を成し遂げ、耐え抜いたからこそ、各国は支援を決定しています。そのことからも、各国の支援と国民の士気が続く限り、ウクライナが諦めることはないでしょう。
そして、日本も有事の際には、ウクライナが首都防衛戦の時に見せた意地を欧米に示さなければ、国際社会が日本に協力してくれることはないのではないでしょうか?