こちらには、日露戦争の旗艦であり、武勲艦である三笠が展示されており、日本に現存する唯一の大日本帝国海軍時代の戦艦です。

 太平洋戦争終結後、敗戦国の海軍で運用された軍艦の多くは国土復興や賠償金の関係で、多くがスクラップにされていました。戦勝国である大英帝国ですら、記念艦は財政面から工面できず、大規模に保存されているのは、米国くらいでしょう。また、戦勝国となったソ連は三笠の廃艦を強硬に要求していました。

 そんな中で敗戦国である日本がこのような記念艦を保存出来ているのは、日露戦争時代の艦とはいえ不思議に思えてしまいます。

 大正時代に記念艦となったこの艦が現在でも保管されているのは、日本の保存団体とある米国海軍元帥のおかげであり、その提督は日露戦争で日本海海戦を指揮した東郷平八郎司令長官を尊敬していました。敗戦後、米国海軍の協力によりソ連は説得できたものの、国から民間企業に委託された三笠の保存状態は、国民の意識が薄れた影響で荒らされ、一時期は三笠の上に水族館やダンスホールが作られ、それら遊園施設の運営が低迷すると、ろくに整備もされぬまま、鉄屑同然の錆だらけとなっていました。それを知った米国海軍元帥は激怒し、海兵隊を出動させ、それ以上荒らされないようにし、保存費用として個人的に寄付も行いました。また、米国海軍で不要となった揚陸艦のスクラップ代も日本に寄付し、その財政援助により現在の三笠は復元され、保存されています。是非ともこの艦を訪れてた際は、寄付を行ってくれた米国海軍元帥が誰なのかを確かめてみて下さい。

また、時を同じくして日本海海戦を戦ったロシア海軍の巡洋艦アヴローラもまた現在のサンクトペテルブルクに記念艦として保存されており、これらの記念艦を訪れることで、両国が再び戦火を交えることのないために国民に何が出来るのかを考えさせられるとともに、当時、アジア諸国で誰も成し遂げられなかった欧州列強国に勝利したことで、大日本帝国が独立を確保し、アジア植民地へ勇気を与えたことの歴史的意義と現代人が忘れてしまった日本民族の誇りを、この記念艦から感じることができました。