大東亜共栄圏...それはかつて大日本帝国が掲げたアジア諸国の共存共和を唱えたスローガンであり、欧米植民地となった東南アジアを帝国が解放するというものでしたが、その大義の裏には帝国の軍事行動を正当化する思惑があり、儚く短命な理想となりました。

 しかし、ある意味この理想はアジア諸国に勇気を与え、短命でしたが、長らくこの地域を支配してきた西洋人が絶対的な存在ではないと言うことを世界に証明しました。

 敗戦後の日本国は西側陣営に加わり、第二次世界大戦を戦った国々から構成されるG7にもアジアで唯一参加しています。

 こうした現在の日本国の立場は、かつて大東亜共栄圏を唱えた戦時下の大日本帝国とは真逆の立場にいると言えるでしょう。

 さて、少し話しは変わりますが、5月18日から広島で開催されたG7サミットと時を同じくして、中国もあるサミットを開催しています。

 それは、中央アジア5カ国を招いた中央アジアサミットです。

 これは中国が主導する経済圏構想である一帯一路への招待国の協力を求める狙いとアメリカが中心である現在の国際秩序への対抗姿勢を世界にアピールしたい狙いがあると思われます。

 さらに、サミットの中で中国は各国を運命共同体と呼び、アジアでの中国の影響力と世界の多極化をこのサミットから感じることが出来ました。

 現在の中国の動きは前述した理想とある意味で似た側面を持ち、欧米諸国から支援を受け、大日本帝国に抵抗したかつての中国が、現在は欧米諸国と対立し、逆に、現在は欧米諸国側の陣営にいる日本国の立場は、正反対となったことがよく分かります。

 大東亜共栄圏も大日本帝国がアジアを代表して戦ったと見れば、大戦時のアジア諸国の中で、他に誰が欧米と戦う力を有していたでしょうか?現在の東南アジアに植民地が無いことを考えると、極端な見方をすれば、かつての大日本帝国も、この理想のもとアジア諸国の独立を助けたという見方もできます。

 そう考えれば、現在の中国も、アメリカが中心的で有利に出来ている国際秩序に異を唱え、植民地はないですが、アジアを代表してそれと戦おうとしているという見方も出来るのではないでしょうか?

 前述の大東亜共栄圏のように、それを大義名分にしているだけ!や、そのために何千万という犠牲が出た!と言うことも紛れもない事実ですが、大事なのはそういった見方も「出来る」若しくは「出来てしまう」ということを知ることです。

 そして、アヘン戦争や日清戦争から始まる大国清の崩壊が、現在までの中国にどれほどの衝撃と影響を与えたのかを考えれば、現在の日本を含めた欧米諸国に対して、中国がどのように思っているかは明白です。

 かつての大日本帝国も、現在の中国も否定することは簡単ですが、水槽の内側から外を見るように、相手の立場から物事を覗かなければ、いつまで経っても相手を理解できず、対立ばかり深めることとなるでしょう。相手を否定するにはまず、相手の立場に立ってみることが大切ではないでしょうか。

 そして、現在のアジア各国でアメリカに挑戦することが将来的に可能なのは、中国とインドだけとなり、現在のインドは中立的に見えますが、上海協力機構に加盟しており、どちらも積極的に行動して行くこととなるでしょう。

 「出る杭は打たれる」と言いますが、かつての杭が大日本帝国で、現在の杭は中国と言えます。そして、打つ金槌は、今も昔もアメリカですが、打ち続けた金槌が、壊れない補償はどこにもありませんし、打つことをやめる可能性も十分あることでしょう。