2023年1月25日にドイツはウクライナへの自国製戦車レオパルト2の供与を決定し、強力なドイツ製戦車がドイツだけでなく、同盟国であり、レオパルト戦車を保有するフィンランドやポーランドも同じくウクライナに供与することが可能となりました。 
 しかし、ドイツは当初、供与を即決できず、保有国の供与にも慎重な姿勢を見せていました。 
 同戦車保有国が供与出来ないのは、戦場でロシアに鹵獲された場合、国家機密である軍事技術がロシアに流出する可能性を孕んでいるため、輸出国であるドイツの許可なしには供与出来ないのが理由ですが、戦局打開に期待のできるドイツ製主力戦車の供与をドイツが躊躇っていたのはどういった心境があったのでしょうか? 
 その理由は大きく分けて3つほどあると自分は思います。 
 まず1つ目の理由はドイツがウクライナへ強力な戦車を供与することで、ロシアを刺激し、ロシアが大規模な動員令を下令、かえってウクライナの戦局に悪影響を及ぼす可能性があったこと。 
 しかし、この理由はロシアが供与前に動員を行い、自らその理由の1つを潰してくれました。 
 2つ目の理由は供与をすることで、ドイツがこの戦争に巻き込まれる可能性があることです。ドイツは二回の世界大戦をいずれもロシアと戦い、このことに責任を感じています。また、ロシアからはそういった歴史的にみて恨みをかっているため、ドイツ国民も供与には意見が分かれていました。 
 しかし、現在のドイツ首相は親米派であり、大多数のドイツ国民もウクライナに同情しているため、この理由は次に説明するものと同様になんとか解決させました。 
 そして、3つ目の理由は、ウクライナと三カ国(アメリカ・イギリス・ロシア)間の覚書にあります。 
 ウクライナはかつて、世界屈指の核保有国でした。ウクライナに核を放棄させたのは、三カ国(アメリカ・イギリス・ロシア)ですが、放棄の際に三カ国は覚書に署名しています。 
 これは、ウクライナが核を放棄する代わりに、ウクライナの安全保障の確保と安全保障上の問題があれば、三カ国はウクライナに支援を行うという内容です。 
※当然ロシアはこの覚書を既に破棄しています。 
 ウクライナはこの覚書を頼りに地政学上、危険な場所にあるにも関わらず、核を放棄してしまいました。 
 さて、この覚書の中で注目するポイントは、ドイツはこの内容に含まれていないという点です。 
そのため、極端に言えば、アメリカやイギリスは今回の侵攻を受け、覚書に基づき国連安保理に依頼し、ウクライナを絶対に支援しなければいけない立場ですが、ドイツは正直どちらでもいいのです。 
 それでも、ドイツがウクライナを支援しているのは、地政学的観点と欧州の安全を守るためですが、2つ目の理由があることから、「強力な戦車を供与するのなら、まずアメリカが率先するのが筋でしょうが!」と思っている訳です。 
 実際、アメリカもこの当時、自国の主力戦車であり、世界最強の呼び声の高いM1戦車は供与していませんでした。 
 その理由はドイツの理由1、2と一緒のはずなのに「ドイツにそのリスクを背負わせるのはおかしいでしょ?」と言っていた訳です。 
 そのため、供与を決定した時はドイツだけでなくアメリカも供与を発表しました。 
 ドイツもギリギリの選択肢の中から、決断を下す必要があり、裏ではこのような難しい判断と葛藤があったのです。 
 ドイツは支援国の中で3番目に多くの軍事支援をこれまでも行ってきました。そのため、ウクライナの戦況変化には、日本以上に国民的関心も高く、民主主義である以上、ワントップだけの判断では、すぐに決断を下すことは出来ないのです。 
 また、覚書の件から、他国に安全保障を任せる、若しくは依存しすぎるということが、いかに危険かということをウクライナから学び取ることが出来るのではないでしょうか。