中国は台湾周辺海域での大規模演習以降、大きな動きを見せていませんが、中国が台湾侵攻をするにはもう時期を逃してしまったかもしれません。
ここ2年で中国の経済は低迷し続けており、高齢化の波は日本とは比較にならないほど進んでいます。もしこの状態で戦争状態となれば、若い世代の多くを失うこととなり、将来の働き手を自ら殺してしまうことになってしまいます。そして、ウクライナで見せた欧米諸国の対応は中国への牽制となっているはずです。欧米の支援はウクライナ軍がロシア軍の電撃戦を守り抜いたからこそではあるものの、中国も短期戦で台湾を降伏させられるかは地理的に難易度は高く、分かりません。
また、アメリカや日本の動きを見ても台湾有事への備えをしていますし、日本の反撃能力と世界トップクラスの海軍能力が中国の障壁となれば、尚更短期戦は厳しくなるでしょう。しかし、それは日本が限定的にでも参戦すればにかかっています。日本が参戦し、駐留するアメリカ軍の使用も許可すれば、迅速な支援が期待できます。アメリカも台湾の半導体需要がある限り参戦はすると思いますが、これらの国々がもし、ジタバタと決断を遅らせれば、遅らせるほどに台湾の事態は悪化してしまうでしょう。
いずれにしても今の中国に台湾を侵攻するリスクは高すぎると思われます。目先の利益だけを考えれば台湾を持つメリットは非常に大きいものの、今は時期を完全に逃してしまったように思えます。今はそれを押し切り実行するデメリットの方が大きいと、中国政府が冷静であれば考えられるはずです。
しかし重要なことは、欧米や日本が粘り強く戦う姿勢を見せ続け、牽制することが大事ではないでしょうか。
それでも侵攻を防ぐことができず、仮に台湾が落ちれば台湾海峡が封鎖され、海上の輸送路が脅かされた場合、輸入に頼る日本にとっては致命的打撃を負うことになります。そうならないためにも日本の安全保障関連法に台湾侵攻が該当し、そうなれば日本は自衛権を行使すると示し、中国を思いとどませることが大事です。人間である以上、こういった要因も多いに抑止力として効果があります。科学技術が進んでも、今も昔も人は変わっていません。だからこそ過去から得られる知恵と繰り返す戦争の歴史があります。
そもそも現在の日本が戦争状態となった場合は国民に戦うという意識が薄く、台湾以前に美しい日本の領土であっても、みすみすとそれを捨て、白旗を上げようとする可能性を強く感じます。
戦前の帝国海軍大将である永野修身は対英米戦を前に勝てる見込みはごく僅かとしながらも、「戦えば日本は亡国となる。しかし、戦わなくして日本が負ければ魂まで失った真の亡国となり、戦って護国に徹すれば、負けたとしても必ずや我らの子孫は再三再起するだろう」と言っていました。
この言葉も後世に生かされていないと考えると残念です。
ウクライナが各国の支援を得られたのは、ウクライナ軍が耐え抜いたからこそです。ここで戦わずに早期に首都を陥落されていれば、欧米諸国はウクライナを見捨てて戦勝国となったロシアとの交渉を進めていたことでしょう。
だからこそ、台湾有事では日本やアメリカの対応がその命運を分けることとなり、台湾はこれらの国々が来てくれるまで、耐え抜く必要があります。
未来を予測することはとても難しいことです。ロシアがウクライナに侵攻した時が台湾有事の好機だったことは、事後にこそ分かります。そして、ウクライナが短期に首都を落とされていれば、欧米諸国がウクライナに消極的対応を見せていれば、中国は軍を動かしていたことでしょう。
それでも習近平国家主席は2028年までの台湾統一を軍に命令しているので、これからも油断禁物ですが、中国上層部が冷静さを失えば、それより早く起きるかもしれません。
有事の際の対応で日本人の真価が問われます。
台湾は1945年の大日本帝国敗戦まで国際的に認められた日本の統治領であり、そのことによる国民の交流も深く、東北の震災の時には多額の支援をしてくれました。
そのことを忘れてはいけませんし、日本が台湾を見捨てても、それは一時の現実逃避にしかなりません。
ウクライナや台湾は日本より遥かに建国が新しく、国としての歴史は浅いです。それなのに日本より高い愛国心があり、国家存亡のために死力を尽くしています。その差を生んだのは歴史教育や戦後の日本の在り方でしょうが...
いずれにせよ、日本人は自分で戦えないと自覚しているのなら、牽制して戦争を起こさせないようにすることをもっと関心強く考える必要があるのではないでしょうか。中国側に日本の国民に戦う意思はないと見透かされてしまえば、遠からず台湾への侵攻を踏み切る要因をむこうに与えてしまうばかりか、どさくさに紛れた尖閣諸島への侵攻にも踏み切ってくるかもしれません。
現在の日本を取り巻く安全保障の問題は、戦後もっとも厳しくなっています。自衛隊だけでなく、国民の意識単位で国防意識を高めるべきだと思います。そうでなければ、美しく歴史ある日本を維持してきた我々の祖先たちと、後世の日本を思い夢見て亡くなった多くの英霊がただただ惜しまれます。