(2)EU理事会(Council of the European Union

EU理事会(閣僚理事会とも言う)は、政策分野ごと(財政、農業、貿易、環境、域内市場、等)に各国政府の閣僚が集まる政策レベルの意思決定機関である。従来はEU理事会がほぼ単独で意思決定の役割を担っていたが、単一欧州議定書以降、EU/ECの民主的コントロールを強化するために欧州議会に意思決定権限を付与する方向で改革が行われており、現在は原則として欧州議会とEU理事会が「共同意思決定機関」という形になっている。ただし、外交・安全保障分野においては欧州議会の権限は大きく制限されており、現在でもEU理事会の権限が非常に大きい。

リスボン条約により欧州理事会には独立の議長が誕生したが、EU理事会は従来通り6カ月ごとに各国が議長を担当する輪番制が維持された。これにより、欧州理事会とEU理事会の議長の間に組織上の上下関係がなくなり、2つの組織間の一貫性を保つのが難しくなったと言われる。他方で、6カ月という短い任期に伴う時系列における一貫性の問題も指摘されていたが、前議長国・現議長国・次期議長国が緊密に連携を取って議論を進める形によりこれを克服しようとしている。理事会の事務局組織は欧州委員会の事務局に比べて脆弱であり、議長国政府の処理能力が議長としての運営能力に直結するため、中小国が議長となった場合にキャパオーバーとなり、議論が進まないと言う問題点もある。

意思決定の効率化のため、EU理事会での議決においては原則として特定多数決制(Qualified Majority VotingQMV)が採用されている。基本的には、各国の人口比に基づき票を割り振り、総票数の23以上の賛成及び過半数以上の加盟国の賛成があれば議決されるというシステムだが、票の割り振りなどを巡り、マイナーチェンジが繰り返されている。加盟各国にとってはEU理事会の票割りと欧州委員会のポストはEUへの影響力の大きさに直結する死活問題であるため、票割り問題では熾烈な争いが行われている。例えばニース条約交渉時には、より人口比を反映した票割り(あるいは新たな意思決定方法)に変更するようドイツ(EU内で最も人口が多い)から提案があったが、フランス(ドイツより1800万人ほど人口が少ないが、持ち票数は同じ)が強行に反対したため、票割りの変更は実現しなかった。なお、外交・防衛分野では特定多数決制は採用されておらず、全会一致が原則となっている。