さて、収差の塊である累進レンズの度数をどうやって測るのか?

 

単焦点と同じようにレンズメーターのコロナを合わせても、そこは累進帯の途中であって基本度数(遠用度数)ではありません。

 

もし、レンズの銘柄がわかるのならば、隠しマークを基準にしてチェックマークを再現し、それを元に指定された場所をレンズメーターに当てればいいし、PD(OCD)は隠しマークの中央にくる印を中心と考えて左右の幅を測ればいい。

 

イラストにすればこういう事。

 

フィッティングポイントにレンズメーターを当てるのはダメです。なぜなら、フィッティングポイントから累進帯が始まっている事と、メーカーによってはフィッティングポイントに若干の加入度数(9%とかそれくらい)が既に乗っているからです。

 

完全に度数が安定するためにはフィッティングポイントを避けなければなりません。だからフィッティングポイントの真上にある丸をレンズメーターに合わせるわけです。

 

そして加入度数は近用度数測定点を測り、遠用と近用の差を計算するわけですが、デジタルレンズメーターの場合は遠用度数を測ったら眼鏡を近用測定部までレンズメーター上でスライドさせ(傷に注意)たら自動表示される機種がほとんどだと思います。

 

そしてPDは左右のフィッティングポイント間の距離でもいいし、隠しマーク間の距離(左レンズは左側の、右レンズも左側の)を測れば左右合計PDは分かります。

 

そして、プリズム度数は「プリズム測定点」をレンズメータに乗せ、球面、円柱は全く無視して、表示されたプリズム度数が組み込まれているプリズム度数になります。

 

・・・が、それは水平プリズムのお話。

 

上下は少し違います。

 

「プリズムシニング」とか「アレジェプリズム」と言いまして、レンズを薄くするために左右同量のベースダウン(場合によってはベースアップ)が組み込まれているのが普通だからです。

 

なので、上下プリズムに関しては「プリズム測定点での上下プリズムの差」が処方されたプリズム値になります。

 

例えば・・・

右:1.25 DOWN 

左:1.25 DOWN

ならば、上下プリズムは入っていない。

 

右:2.50 DOWN 

左:0.50 DOWN

ならば、右:1.00 DOWN 左:1.00 UP・・・という事です。

 

(なので上下左右のプリズムを合成して記録に残すよりも上下、左右バラバラのまま残しておいた方がわかりやすいんです)

 

左右の球面度数が(正確に言えば垂直方向の度数差が)違えば、プリズ測定点から遠用度数測定点までの距離によってプレンティスの法則に基づいたプリズム差が発生しますから、上下プリズムが本来組み込まれていないにも関わらず、上下プリズムがあるように見えます。

例えばプリズム測定点から遠用度数測定点の中心までが7mmあった場合、左右の度数差が1.00Dあれば0.7プリズムの上下差が発生するわけです。

 

つまり、遠用度数測定点ではプリズムの測定はできません。

 

逆に言えば、遠用度数測定点ではコロナの上下左右のズレは無視するという事です。

 

単焦点レンズの場合は基本的に隠しマークがありません。(いいやつはあります)なのでプリズム測定点という手がかりが無いのですから、実は累進レンズの方がPDとプリズム度数に関しては測定がしやすかったりするのです。