Cafe Lolita/Azabu-jyuban

ミラノを後にして、次に向かったのはヴェネツィアです。
旅も8月に入るところで、かなり気温も上がってきました。
『水の都』と聞けば響きは良いのですが水は緑色で蚊にさされるなど、なかなか過ごすのは大変です。
観光客の多さは狭いヴェネツィアが沈んでしまうのではないかと感じるほどですし、人口密度も高い上に湿度もあり暑さも数倍に感じます。そして疲れも溜まってきたのか風邪をひいてしまい寝込んでしまいました
町中の八百屋でトマトとモッツァレラチーズとパンを買い込み、じっとしていました。
『こんなところで何してるんだろう?』と弱気になったりもしましたが、そんなことすら忘れさせてくれるほどヴェネツィアは色々な顔を見せてくれます。


ようやく体調が回復してきて外に出ると街の様相が一変していました。
昼間の喧噪が嘘のように暗闇とともに静寂がおとずれています。
街は薄暗く、電灯とお店の看板の灯り、路地にあるお店からこぼれる灯りと話し声。
灯りの方へ誘われて歩いていくとBarと思われる店中で、沢山の人がワインを飲み話しています。
店主に赤ワインを一杯頼みつまみを何品か選びました。年齢層も幅広くまた犬を連れている婦人もいます。近くの老人に話しかけると世界中を旅しているオーストラリア人だとわかりました。額に入っている世界中の紙幣を見ながら日本円だとかタイのバーツだとか話は止まりません。

ミラノで見たバールと比べると様子が少し違う感じがしました。色々と調べてみるとヴェネツィア特有の文化であるBaccari(バカリ)と言う居酒屋みたいなものだとわかりました。どちらかというとスペインのバルに近い感じのもので立ち飲みが出来てショーケースに沢山のつまみが並んでいます。タコやイワシのマリネなど海が近いこともあり魚介類が豊富に並んでいます。うれしいことに宿から近いこともありベロベロになっても問題ありません。日中はうんざりしていたのですが、こういう地元の常連客に混じって旅人が会話出来る空間を見つけてしまうと虜になってしまいます。街の奥深さと言うか、旅人を受け入れる文化の懐の深さというか、さすが貿易の拠点だっただけのことはあるなと感心してしまいます。日本に帰ったらこんな感じのお店は無いんだろうなと思っていたら、新宿にある『イル・バーカロ』というバカリ風のお店を見つけてかなり利用しています。薄暗さといいワインの値段といい、ヴェネツィアの雰囲気をそのまま持ってきたようなお店です。いつも仕事帰りに赤ワイン(オンブラ ロッソ)を頼んでポレンタ、プロシュートで一杯飲むのが幸せな時間でした。

ヴェネツィアはイタリア最古のバールと言われる『カフェ・フローリア』がサン・マルコ広場にあります。カフェ好きでなくても知っているローマのカフェ・グレコ同様に有名な為に観光客でごった返していますが、そんな有名なお店ではなくても街の奥深さは感じられると思います。そして町中で見かけたカーニバルの為の仮面を売る土産物屋。実際にいつかは参加してみたいと夢見つつ、ヴェネツィアを後にしてフィレンツェへと向かうのでした。

→明日へ続く