読書記録付け始めてから一番ヤバい本(語彙力不足)に出会ったと思います。
果たしてこれはSFなのか、果たしてこれは百合なのか、読んでるこちらが不安になるような、そんな一冊。
この手の感覚には不慣れなのですが、奇書というのはこういうものを指すのでしょうか…?
【感想など】
・あらすじ…、というか設定?
物語は「少女庭国」と「少女庭国補遺」の2部で構成されており、本の大半は後者に占められています。
物語は卒業式を迎える直前に何らかの形で意識を失った中学三年生の少女が、暗い部屋に倒れているところから始まります。
部屋には卒業試験と称して、「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の数をmとする時、n-m=1とせよ」という指示のみ。
部屋にはドアがあり、ドアを開くと隣の部屋にも同様に中学三年生の少女が倒れているという。
しかも、遭遇する少女は全て同じ中学の卒業生であるにも関わらず全く面識がない(これは少女の数が1000人単位になって卒業生の母数を超えても変わらない)という、この世の理を逸脱したかの状況に陥っています。
冷静に考えるとこの試験、指示に従って殺しをすると生き残れる少女はたった一人という鬼畜極まりない試験、しかも目的は分からない。
実際に殺しを行って試験条件を達成したとして、この謎の空間から脱出できるとも限らない。
少女たちはどのように試験と向き合うのか、という思考実験のような内容です。
そして本当に救いがない
・雑感
冒頭でも言っていますがこれはヤバい本です(語彙力)。
まず前段になる「少女庭国」では最終的に13人の少女が合流を果たし、話し合いの結果生き残る者を投票で決めた後にそれ以外の者は殺されるか自死を選ぶか、という展開に落ち着きました。
が、生き残った少女は結局試験に合格したのか、またこの無限に続く部屋だけの空間から脱出できたのか、謎は残されたまま終わってしまいます。
最初に提示されたケースとなるのが前半の「少女庭国」だったわけですが、決してこれが模範解答であったという訳でもなく。
後半から始まる「少女庭国補遺」では前半以外のケースが次々に提示されていきます。
最も多いパターンは隣の部屋の少女と殺し合うもの、もうこれがほぼテンプレじみた内容になってきます。
だいたい試験内容を理解した生徒が隣の部屋の少女を速攻で殺す、反撃で死ぬ、話し合った結果殺し合う、内容は違えど結局殺し合うのが多いです。
そして、たまに違うアプローチを生み出すケースが。
殺し合いが出来ないレベルで大量の生徒を起こすことで別の共存方法を考えるというもの、最初は上手くいっているようでもありましたが結果として状況が理解できているもの、できていないものの違いや食糧問題などで破滅を迎えます。
そう、この謎の部屋が続く空間で最大の問題は食料で、結論として生み出されるのが人肉食というものだったり。
また、社会基盤を成立させるために後に目覚めた少女を奴隷として扱い、労働力として酷使した後に食料に加工するという手法など何というかこれまでの人類発展の過程を踏襲している上に凄惨な要素を追加したような、より血に塗れた内容に変貌していきます。
このような試行錯誤を経て完全に文明が栄えていたという例も観測されましたが、結局それも破滅に向かい、最後まで試験合格者が出たかどうか不明だったり。
(ちなみに合格していない生徒は年齢を重ねて老婆になった者もいるようです、ヤバすぎる。)
一言で言ってしまうと悪趣味という感じでしょうか。
少女たちの行動を神の視点にでもなったつもりで読めば楽しめるのかもしれませんが、自分は終始何を読んでいるのかと思いながら読み進めていました。
最後まで読み切った辺り、意外と読むのは苦痛でもなかったんで嫌いな本と言う訳でもないんでしょうけど。
一応この本が以前の「アステリズムの花束を」などと同じタイミングで「百合SFフェア」の対象であった訳ですが、百合って何でしょうね(哲学)。
内容についてガチガチに考察を固めれば作者の意図しない部分まで予測したものが完成しそうな感じもしますが、これを考察すると頭がおかしくなりそうなので願い下げって感じですね。
それにしても最後まで試験の目的は分からない、合格した少女がいるのかも分からない、合格した者がその後にどうなるかも分からない、というのは本当にすごいですね、全く読者として正解が見出せませんでした。
個人的には一番最後に描かれたゆるやかに破滅に向かうことになりそうな二人の少女の静かな情景が最も正解に近かったりするのかな、と思ったりしていますが。
一通り読んで考えた結果、「死こそ救済」に近い結論に至りそうな救いのない少女たちの物語でした。
奇書を読みたい人にはおすすめできそうですね、百合SFフェア楽しみたいなら他の本読んだ方がいいと思いますが。
ツインスター・サイクロン・ランナウェイを読みましょう皆さん。
