ちょっと前に読んだ5分間SFをボリュームアップさせた一冊です。
以前もそうでしたが短編が並ぶと個人的な当たりはずれは出てくるものの、結構印象に残る短編が多かったです。
【感想など】
今回も印象に残った短編を抜粋。
・カツブシ岩
研究者たちが訪れた地域では「カツブシ岩」と呼ばれる万能食材が存在していました。
カツブシ岩が一体どのような仮定で生成されるのか、そしてその供給の仕組みを調査するために研究者たちは現地に存在する巨大なカツブシ岩に挑みます。
現地の人間は小さいカツブシ岩を食すものの、大きなカツブシ岩には不思議と手を出さないという点に大きな疑問が。
研究者たちが大きなカツブシ岩に手を付けたその時…。
現地人はその秘密を知っていたが、自分たちのためにそれを秘匿していたという最後のどんでん返しが勢いが良い。
・免許停止
とある男が法廷に立ち、何らかの交通違反で免許の停止を命じられる。
一見すると暴走行為に基づく違反とのことで悪質であれば免許の剥奪もあり得る状況だと推察可能であるが、どうも我々の常識の範囲で考えると歯切れの悪いような印象。
男が剥奪された免許の正体に驚かされる一編。
・チューリング・テスト
宇宙空間にて、複数のダミーと共に一人の人物が遭難。
それぞれのダミーは人格プログラムをインストールしており、遭難者への呼びかけにさも人間であるかの如く正確性を持ち、かつ曖昧性をもつ回答ができるという高性能っぷり。
人間と機械の差が詰まるとこのようなことも起こりうるのであろうなと感じさせられる。
・パラム氏の多忙な日常
この一冊最後の一編。
タイムマシンによるトラベルが可能である世界が舞台で、主人公のパラムは様々な時間を分単位で行き来しながら動くという多忙を極めた日常を送っている。
そんな彼が妻との待ち合わせにとある時代が設定するが、妻の方が結構スケジュールにルーズで違う時代に飛び出したりとパラムの予定を乱すような動きを繰り返す。
そんな彼が妻に出会ったとき、妻はニアミスした時代でタイムトラベルをしないまま彼を待っていたことが判明。
タイムトラベルによる多忙な日常を離れて彼も過去の時代で少しゆっくり過ごすことの大切さを見出す。
・雑感
前作よりボリュームアップしたため、設定にも幅と深さが出た一方、作者の作風が似ているなと思う短編も含まれている一冊。
僕は結構読むのが遅い方だと自負しているので、7分間と言われたところを10分くらいかけて読んでいた気がします。
個人的に最も印象に残っているのは最後の「パラム氏の多忙な日常」。
前作ラストの「ユビキタス」同様、テクノロジーが発展した世界の中で、敢えてテクノロジーから距離を置くようにしたという内容が共通しており、SFでありながらアナログな感じに終わる辺りに勝手に深みを感じたりしています。
短編集は区切りよく読んでいけるのでいいですね。
