読書記録「裏世界ピクニック4」宮澤伊織:ハヤカワ文庫JA | ありえの雑記帳

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先日(結構前ではありますが)アニメ化が発表されましたネットロアを拾っていくSF小説、その4巻です。

 

個人的にはこの巻から結構潮目が変わってくる契機になるのかな、といった印象ですかね。

 

あとついでに言うと僕のネットロアの知識だけでは対応できないバリエーションが空魚の前に立ちふさがる怪異に生まれてきて、こちらの知識が追い付かなくなってきました。

 

【感想など】

 

●あの牧場の件

 

二人が裏世界に繋がる中間地点を自由に動こうと画策するエピソード。

 

今でこそ大きな組織と知り合ってある意味強い後ろ盾を得ている空魚と鳥子ですが、本来的には自由にできる居場所を求めていたような側面もありますので自分たちにしかできないことをしようとする訳ですね。

 

作中でも彼女たちの理解者である小桜が若干の懸念を見せていたようにだんだんと現実世界から裏世界に踏み込んでいく傾向が強い雰囲気が漂ってきています。

 

 

●隣の部屋のパンドラ

 

この章では珍しく空魚の自宅の様子が描かれています、そして隣の部屋で怪異が巻き起こるというとんでもない事態に。

 

隣の部屋に聞き耳を立てると空魚を名指しにしたセリフが聞かれ、ヤバいなぁ(小並感)、と。

 

そんな不気味な隣の部屋、鳥子と共に乗り込むと「パンドラ」と呼ばれるネットロアをモチーフにした怪異が存在しており、二人でその部屋の怪異を潰して終結となります。

 

この章で、初めて明確に怪異の側が空魚を名指しでターゲティングした描写が出てきたのですが、これが一体何を意味するのか。

 

そして、空魚と鳥子の関係性も若干怪しい動きを見せ始めます。

 

 

●招きの湯

 

空魚と鳥子、二人だけで温泉に行くのが気まずい(何故?)とのことで小桜を交えて温泉旅館に旅行に行くお話です。

 

ここでは夜中に大量のマネキンに追いかけられるという恐ろしい夜を空魚と鳥子の二人で過ごすこととなります。

 

このエピソードでは怪異よりは、二人の関係性を注視した方が良さげです。

 

広義的に行くと百合に分類されるであろうこの作品ですが、何となくガチめの百合に突っ走ろうという気配が見受けられるようになってきました。

 

 

●裏世界夜行

 

タイトル通り、裏世界で夜を過ごそうという思い切ったアクションを起こす、こちらも一つの大きな分岐点となりそうなエピソードです。

 

これまで殆ど能動的に夜の裏世界には関わろうとしなかった二人、というのも夜の裏世界は昼の比ではないほど脅威度が増すので表世界の人間ではかなり厳しい環境であるためです。

 

その一方で、裏世界へのアクセスが特定の場所でしか行えない現状、夜を裏世界で過ごすことで行動範囲を広げようという欲求が彼女たちに生まれているのもまた事実、結構ハードなチャレンジになりますが実行に移すこととなります。

 

案の定と言うべきか、夜の裏世界は人間の認知を強く歪めるような環境にあるようで、空魚が強く影響を受けてしまいました。

 

怪異に囚われた空魚の意識を覚醒させるために鳥子が思いっきりキスをするシーンがあり、もう完全に一線を越えてしまったね、という感じでした。

 

まあ結局色々あったのですが、無事(?)に夜を切り抜けた二人、これからの物語に幅が生まれそうな成功を収めました。

 

 

●雑感

 

上記していますが、まず完全に百合ものとしての舵が切られたような一冊でした。

 

これまでも絶妙な塩梅で空魚や鳥子の感情描写を介してさながら両片思いみたいな関係性はクローズアップされていましたが、4巻では二人の矢印が完全に激突するような方向になっていましたね。

 

怪異の内容もバリエーションが増え、二人の関係性は変化し、そしてより自由に裏世界を駆けられるようになり、五巻以降がこれまでより自由度の高い二人の描写が出来そうで期待値が高まります。

 

 

またアニメの方についてですが、空魚を花守ゆみりさん、鳥子を茅野愛衣さんが務めるというキャスティングになっています。

 

外見的には典型的陰キャの空魚と陽キャの鳥子という取り合わせですが、キャスティングとしては正直意表を突かれた感じもあって驚きましたね。

 

ただお二人とも実力ある声優さんなので、どのような空魚と鳥子に仕上がってくるのか今からとても楽しみです。

 

とりあえず原作読まずにアニメを見よう、という方はネットで読める都市伝説や怪異系の話を抑えておけば楽しみが増すと思うので、是非予習をお勧めします。