「おっちゃん、ずるいよ」。
僕は叫んだ。日本語だから、おっちゃんに分かるはずもないのだが…。
ハノイ市民の憩いの場ホアンキエム湖での一幕だ。
異国の街歩きは楽しい。
あの角を曲がれば、何が待っているのか。
どんな人たちが暮らしているのか。
しかし困ることが一つだけある。
トイレだ。カフェで一休みするのもいいだろう。
この時は、湖畔に公衆トイレがあった。
きょろきょろ見回したが、トイレの番人はいない。
僕は勇んでドアを開ける。ピッカピカではないが、掃除は行き届いている。
日本の公衆トイレのように、不潔感は全くない。
僕は用を足し外へ。
どこに隠れていたのか、60歳もつれのおっちゃん、「スリー」と一言。
トイレ代3000ドン(18円)を払えと言うことだ。
どうやら僕はおっちゃんのトラップにずっぽり嵌ったようだ。
無人の公衆トイレと見せかけて、善良な観光客を呼び寄せる作戦だろう。
おっちゃんが偉いのか、僕がアホなのか。渋々3000ドンを支払った。
<注>べトナム・ドンは桁数が多いので、0を三つ省いて表現することが多い。テンだと1万ドン(50円)。ワンハンドレッドは10万ドン(500円)。スーパーでは「10K」のように表示してあることも。Kは0を三つ省いていますよ、と言う意味だ。