コソヴォに始まったバルカン周遊の旅。
僕たちは7か国目、最後の訪問国セルビアに入国した。
まず訪問したのはモグラ・ゴラにある鉄道シャルガン8の始発駅だ
急峻な山肌を8の字を書くように登るからシャルガン8。
レール幅670mmの狭軌。全行程13.5㎞、11のトンネルを抜け、5つの橋を渡る。
観光客に人気の鉄道だ。
旧ユーゴスラビア時代はセルビア首都ベオグラードから、
ボスニア首都サラエボを通り、クロアチアのリゾート地ドゥブロクニクを結んでいた。
今はセルビア国境エリアを走るのみ。やはり戦火の影響があるのか。
かつてはユーゴスラビア連邦を構成していた三つの国。
再び鉄路で結ばれる日を来ることを僕は願わざるをえない。
それは異邦人の取り留めもない夢なのだろうか。
この鉄道、冬場は運休している。
わざあざ僕たちがやって来たのは、駅そばのレストランでランチを取るため。
急峻な山岳地帯、レストランはここにしかないのだ。
ランチはありきたりな3コース。
野菜スープに始まり、羊のソテー(ほかに料理法はないのか)、デザートはパイ。
可もなく不可もなく。
観光客の来ない冬場に食事を提供してくれるだけでもありがたい。
ビールは2ユーロ。五つ星ホテルのレストランをのぞき、どの国でも同じ値段だった。
まさか国境を越えて、価格カルテルを結んでいる? いや、それは下種の勘ぐりだろう。
シャルガン8は運休しているが、かわいいSLが停まっている。
僕は鉄っちゃんではないが、写真を撮りまくる(これを「撮り鉄」と言う)。
午後3時、僕たちは最後の訪問地セルビア首都ベオグラードに向けて出発した。
雪の深い山道を1時間ほど下ると、平野が広がった。
バスは高速道路に入り、しばらく走ってドライブインでトイレ休憩。
90ディナール。ディナールがセルビアの通貨で1ディナール=1.1円。
僕はディナールを持っていない。そこで5ユーロ札で支払う。
お釣りは、もちろんディナール。
500ディナール札と20ディナール札が1枚ずつ返ってきた。
これでビール代(2回分)と旅友へ出す絵葉書の切手代になるだろう。
僕たちのバスはベオグラードをめざし、高速道路を快走する。
ベオグラードは人口170万人の大都会、行き交う車が多い。
ベオグラード市街地に到着したのは午後7時過ぎ。
夜の帳に包まれ、街の様子は全くわからない。
<セルビア>旧ユーゴスラビアの宗主国。ユーゴ時代の首都はベオグラード、いまのセルビアの首都だ。面積は北海道とほぼ同じ約7万7000㎡。人口730万人。セルビア人が80%強を占め、アルバニア人、ハンガリー人など。国民のほとんどがセルビア正教。公用語はセルビア語。