子どもたちの歓声が涼風に乗って流れてきた。
金曜日の昼下がり、いつものように街歩きを楽しんでいた時だった。
子ども好きの僕、いつの間にか声のする方向に駆け出していた。


小学校だった(Municipal School1)。
広い校庭では50人くらいの子どもたちが遊んでいた。
給食が終わり、昼休みの時間なのだろう。

僕は子どもたちと話がしたくなった。
ぴったりと門を閉ざしている日本の小学校と違い、進入を妨げる塀も門もない。

僕は臆することなく、校庭に歩をすすめた。

好奇心の強い子どもはどこにもいる。
すぐに2人が駆け寄ってきた。「サワディー(こんにちは)」。僕は声を掛ける。
はにかむ2人。少し遅れて「サワディー」が返ってきた。


遠巻きに見守っていた子どもたちも恐る恐る集まってきた。
子どもたちは口々に何か話しているが、僕にはちんぷんかんぷん。
そこで「アイムジャパニーズ」と英語で話しかけてみた。

大きな子どもたちから歓声が上がった。高学年になると英語を習うのだろう。
タイでは英語が話せると尊敬されるし、出世の近道ともいう。
僕は木陰のベンチに腰を下ろし、子どもたちを見守ることにした。

どうやらドッジボールを始めるようだ。
子どもたちは輪になって、ジャンケンのような動きを見せ始めた。
「なぜジャンケン?」。小さな疑問を抱きながら、子どもたちの動きを見守る。




子どもたちが出したのは、グーでもチョキでもパーでもなく、手の平か手の甲だった。
それを何度か繰り返すと、二つのチームができあがった。手の平チームと手の甲チームだ。
タイ独自の方法なのか。僕は初めて目撃した。

キンコーン~。鐘が鳴った。時計を見ると午後1時。始業を知らせる合図だろう。
手を降りながら、子どもたちは教室に戻って行った。僕も重い腰を上げる。
爽やかな出会いに心満たされて。だから街歩きは止められない。