ビルマ国境の街タチレイに足を踏み入れた僕とノッポのロイ。

ビルマ美女の案内で(鼻の下を伸ばして、金ぴか)寺院の観光を終える。
そよ風が心地よい本堂で寛いでいると、ビルマ美女が近寄って来た。


「チップ」「チップ」と声高に叫んでいる。恥も外聞もないようだ。

「そうだったのか」。僕とロイ、顔を見合わせて嘆息する。

やむなく2人で50バーツ(160円)差し出す。


「ノー、ノー」と首を振る美女。

またまた交渉はタフ・ネゴシエーターのロイにお任せ。

ロイと美女、幾度かのやりとりがあり、80バーツ(256円)で決着した。




ビルマ人労働者の日給に相当する額だ。

入国許可でぼったくり、観光案内でぶったくる。

ビルマ人、なかなか商売上手だ。


僕のようなヤワな日本人を手玉に取るのは楽勝だろう。

やはりハード・ネゴシエーターのロイとつるんだのは正解だった。

自慢じゃないが、僕の人を見る目は確かなのだ。



再びトゥクトゥクに乗り、ごみごみとしたマーケットへ。

あてもなくなくブラブラしていると、ビルマ人少年が寄って来た。

「たばこ買わない、安いよ」。雰囲気は怪しいが、巧みに英語をあやつる。


彼が持っているたばこ、一見するとセブンスターやマルボロのようだ。

「1カートンいくら?」。僕は後学のために聞いて見る。

「1カートン200バーツ(660円)でどう」。



セブンスターやマルボロが、そんなに安いはずはない。

パッケージはそれらしく作ってあるが、中身はビルマ性の粗悪なたばこだろう。

「いらない」。僕はきっぱり言い渡す。それでも、しつこく付きまとう少年。


僕はDVDショップに逃げ込む。さすがに店内までは追いかけてこない。

欧米の映画や日本のアニメDVDがずらりと並んでいる。

1枚30バーツ(96円)、タイ製の海賊版だ。




タイと日本はリージョンコードが違うから、日本では見られない。
いやいや、海賊版DVDを日本に持ち込むのは法律違反だ。買ってはいけない。

「ホテルで見るんだ」。ロイは2枚お買い上げ。


あっという間の3時間。僕とロイはトゥクトゥクで国境へ戻る。

ビルマのイミグレーションでパスポートを返してもらい、タチレイを後にする

タイのイミグレに入国カードを提出、再びメーサイの土を踏んだ。