午前6時、インカ帝国の首都クスコ。
空中都市マチュピチュ行きディーゼルカーが発車した。
ペルー国鉄自慢の観光列車だ。
“貴婦人”と呼ばれてはいるが、よ~く見ると、古くて薄汚れている
世界遺産マチュピチュは、クスコから北西へ110キロ。
標高2000メートル余の山頂にある。
インカ古道を除いて、今なお道はない。
この高原列車が唯一の交通手段だが、この旅は退屈知らずだ。
▲空中都市マチュピチュ
なんとぜいたく、女性車掌が1両に3人もいる。
薄いブラウスに超ミニ。寝ぼけまなこもパッチリ、ついつい見とれてしまう。
彼女たちは軽食や飲み物のサービスもしてくれる。
カーブが多く、列車はノロノロ進む。
右はアンデスの高峰、左はウルバンバ川の急流。
高原ではアルパカがのんびり草をはむ。
駅に着くとインディオの物売りが集まってくる。
オカリナが一つ1ドル。土産物店の4分の1くらいだ。
▲美人車掌と記念撮影するアメリカ人
早朝の旅立ち、長い列車移動。マチュピチュからの帰路ではウトウト。
終着駅クスコは近い。日もとっぷり暮れた。
なのに灯りはつかず、車内は真っ暗。
抗議しようにも、スペイン語は話せない。
スイッチバックの急勾配を曲がり終えると、
車窓いっぱいにクスコの夜景が広がった。
夢か幻か、漆黒の闇(やみ)に浮かび上がる幻想世界。
長旅のラストを盛り上げる、心憎い演出だったのだ。
<おわび>この企画は1990年に連載したものです。20年近い歳月が流れ、なぜかオリジナルプリント紛失。そのためマチュピチュの写真は当時の紙面をスキャンして掲載しました。画像が不鮮明なことをお詫びいたします。
■・・・困った困った・その3=トイレはあったが、トイレがない・・・■
壮大な古代遺跡マチュピチュ。すみからすみまで観光すると、半日はかかる。そこで困るのがトイレだ。もちろん、遺跡にもトイレはある。だが、それは歴史遺産だ。
うかつに用を足すと、おまわりさんに捕まっちゃう。遺跡入り口のホテルにトイレはある。ただし遺跡の最奥部からだと20分はかかる。マチュピチュ遺跡観光は有料だ。
入り口にゲートがあり、監視人が目を光らせている。英語が通じないので、身振り手振り「再入場するんだよ」とアピールしておかないと、再び入場料金を取られる破目になる。
<旅ガイド>クスコからマチュピチュふもとのアグアス・カリエンテス村まで、高原列車で約3時間半。そこから山岳バスで約20分。古代インカ道(みち)をガイドとともに歩く、マチュピチュトレッキング(2泊3日)もお勧め。
<マチュピチュ>峻険な山の頂上にある。山裾からは全く視認できないため、空中都市と呼ばれる。総面積は5000平方メートル。斜面には段々畑が広がり、約1万人が自給自足できたとされる。インカの人々は16世紀半ば、さらに奥地へと移動。歴史から消え去り、400年余りの眠りにつく。1911年にアメリカ人歴史学者ハイラム・ビンガムが「再発見」した。マチュピチュにまつわる多くの謎は、未だ解明されていない。