道はある

 

 その人は、信仰が進むに連れて、さまざまな問題が解決して行った。しかし、金銭苦だけは直らなかった。その人は借金が7社に50万ずつぐらいあった。それぐらいあると利子を払うのが精一杯で、元金はちっとも減らない。20年に渡って借金を返し続けていたが、ある時銀行に全部を借りて、一社にまとめようと思った。元は自分のギャンブルで作った借金だった。しかし、銀行で、借金を返すための貸し出しはできない、と断られてしまった。

 今までお金には苦労をして来たので、いつもどこかにお金は落ちていないか、あるいは良い儲け話は無いか、そんな事ばかり考えていた。

 しかしこの時、これは自分が作った因縁だ。自分で作った因縁は、自分で取らなければならない、と教えられている。もう人や物に頼るのはやめよう。どんなに時間がかかっても、自分でコツコツ働いて返して行こうと思った…。

 

 そして今まで以上に信仰で頂いたお役を努めて行った。

 

 そんなある日、同居している嫁の両親に住宅ローンの見直しの話があり、家に銀行さんが来ていた。その時ダメ元で、聞いてみた。多分ダメでしょうが、フリーローンというのができたので、申請してみますか。あなたの年収では十中八九だめだと思いますが…。と言われたが、取りあえず審査だけお願いしてみた。後日「不思議なことに審査が通りました。」と言われた。

 

 銀行に行くと、別室に呼ばれて、今からこのお金を7社に返して行ってください。その時に必ず借用証書を返してもらって来ることと、カードをその場で切って、捨てて来てください、と言われた。

 サラ金会社に行くと、カードはまた使えますから持っていてください、等と言う。そこをいや、切ってください、と切って捨てて来る。借用証書も置いといても構いません、とか言われるが返してもらう。7枚の借用証書を揃えて持って行くと、銀行さんがここで今全部破いてください、と言う。

 破くと、もっと細かく。もっと細かく、と言う。これ以上破けないぐらい、チリチリにすると、それを全部ここへ捨ててください、と言う。ゴミ箱に全部捨てると、「これから二度と借金はしないと、ここで誓ってください。」と言われた。(なんで? 銀行がここまでする?)

 

 銀行のお陰で、借金は順調に無くなり、ある日仕事中にラジオを聞いていると、その頃出始めだった「過払い金請求」ができる、と言う話があった。でも借用証書も無いし無理だろうな、と思ったら、次の日に、「借用証書がなくてもいいですよ。」と言った。でも10年も前だしなと思ったら、次の日に「10年前までさかのぼれます。」と言った。試しに法律事務所に行き、話をした。そのことも忘れていて、2カ月ほどした時に、家のファックスに紙がドンドン送られて来て、それは200枚にも及んだ。嫁が紙代がもったいないと怒った。それは全部、取引履歴だった。委任状というのが入っていたので、それに返事をして、また3か月ほど忘れていたら、ある日銀行に77万のお金が入っていた。これが1社目だった。それから、次々と入金があり、結局7社で800万円の過払い金が返金されたのである…。

 しかし、その人は深く反省し、返金のある度に奥さんにご迷惑をかけましたと、謝ったと言う。そして今は、支部で支部長の下で、専属の教会員になって皆にお話をする仕事をしている。

  

 

 その人は20代で潰瘍性大腸炎になった。これは食べたものがちゃんと便にならず、いつも下痢状態になる。ひどい時は何も食べられず、特に野菜は腸を削るのでいけない。卵サンドしか食べれなかった。一番長くて5カ月、口から物を食べれなかった。5カ月目に口にした重湯(お粥の上澄みのようなもの)が、この世にこんなおいしいものがあったのか、と思えるほどおいしかった…。

 30代で嫁が神様に入って、自分の大腸炎が良くなった。3年目に子宝御祈願というのを頂いて、2人とも不妊症なのに子供ができて、信じる心が強くなった。

 

 しかし40を過ぎて青年部のお役を卒業すると、だんだん気持ちが離れて行き、3年目に大腸がんになった。幸い転移していなく、半年後に人工肛門をやめて、肛門を再生する手術をしに、お腹を開けたら、腸が限りなく癒着していた。これを剥がし切ることができずに、腹を閉じてしまった。そしたら案の上、腸閉塞になった。10日ほどで退院できると聞いていたのに、2週間経っても3週間経っても退院できない。しかも腸閉塞というのは大変苦しいらしい。

 本人、祈っても祈っても神様は助けてくれない。

 

 そんなある時医者は言った。「最近Iさん、笑顔がありませんね。看護婦さんも心配していましたよ。」と。医者がこんなことを言うのだろうか、と思った。御教えに、「笑顔であいさつ」とある。それは自分も知っている。人にも言って来た。しかし、今回は苦しさに負けて、笑顔どころではなかった…。そうだ、どんなに苦しくとも、笑顔の御教えを実践させていただこう!

 そう決めた。

 まだ、ちゃんと笑顔になっていたかどうかわからない。とにかくそう決めた次の日の朝、腸閉塞は治っていた。

 

 その人は、その何年後かにがんが再発した。骨盤の中に3つの影があるという。でも毎年検査するが大きくなっていない。5年したところで、医者が、病院を卒業しましょう、と言った。今もガンはあるかも知れない。再発が見つかってから17年経っている。でも生きている。そして彼もまた、求められて専属の教会員になって、皆にお話している。

 どんな時も、必ずできる御教えがある。それは、人に言われたからではなく、自分で見つけなければならない。そして、生きようと思って欲しい。強く生きると思って欲しい。神様は必ず道をつけてくださると…。