絶対権力とどう戦うか

 

石原慎太郎が亡くなった。私は、政治家としてあれだけ好き放題の事をして来た人が、よくぞ無事に政治生涯を終える事が出来たものだと思う。本人も亀井静香さんに、「畳の上で死ぬのは本望ではない。」と悔しがったそうだが、民主党の野田総理の時、尖閣諸島の領有権を巡ってその島を東京都で買い上げようとして、結局野田総理が日本の国有地にして、中国との関係が危なくなった事があった。野田総理も軽率だったが、石原慎太郎はもっと軽率だった…。

 結局野田総理が腰砕けになり、退陣を早める事につながった…。

 

 日本の政治家はアメリカに逆らうと、全部つぶされていると思う。例えば、田中角栄、小沢一郎、北海の荒熊と言われた中川一郎、近いところでは舛添要一、甘利明。中川一郎はビルから飛び降りて不可解な死を遂げた。後はつまらないスキャンダルを持ち上げられて、マスコミが徹底して叩いた。(田中角栄はアメリカからロッキード事件の裁判を起こされた。)皆アメリカに逆らい、独自の外交路線を開こうとした人達だ。だから日本でこのような気骨のある政治家達は、戦後ことごとく潰されているのだ。誰に…?

 

 “日米合同委員会”というものがあり、米軍と日本の官僚の間で月2回、日米地位協定について論議される事になっていると言う。実はそこで日本に関する重要な事は全て決められているらしいというのだ。そして、それは日本が実質的に米軍に支配されている事を意味し、その力はアメリカの外務省でさえ煙たく思う程のものらしい。

 

 そして、日本のマスコミはこれらの人を叩く時は一斉に、全く容赦なく叩き続ける。その逆の良い例が安倍晋三元総理である。あれだけ次つぎにスキャンダルを持ち上げられても、その事でマスコミが総理を追い詰める事はしなかった…。(舛添要一東京都知事は辞めると言うまでマスコミが決して許さなかったし、甘利さんにしても選挙妨害までされた。この前の衆院選で、甘利さんは落とす運動を相当にやられて、結局比例代表でしか復活できず、その責任を取って自民党幹事長を辞退した。)これらの事が、アメリカに気に入られているかいないかのはっきりした差であるのである。とにかく日本ではアメリカに逆らい独自路線を行こうとする政治家は(影響力が強くなると)ことごとく消されるのである…。

 

 それでもあれだけ好き勝手した石原慎太郎は、なぜ政治家生命を全うできたのだろうか。

 私は石原慎太郎の「弟」という、裕次郎の事を書いた小説を読んだ。その中に若い頃、裕次郎と放蕩しまくっていた頃、裕次郎が片目片腕の男にけんかを吹きかけた話がある。その時横にいたやくざの男に、「君たち学生さんでしょう。学生さんがこのような男にちょっかいを出してはいけない。」と注意されたと言う。その時慎太郎はその片腕の男の本当の怖さがわかった。それですぐに一升瓶を一本買って、おわびに行ったと言う。世の中には本当に怖い男がいると書いていた…。

 おそらく慎太郎はその本能的な勘でもって、日本の本当のボスが誰であるを知っていたのではないだろうか。そしてあれだけ好き勝手な事をしていながらも、決して虎の尾を踏まなかったのではないのだろうかと思うのである…。

 

 私の回りにもそのような権力の姿が垣間見られる事がある。私はそんな時、負けると分かっているけんかはするつもりはない。また相手がどんなに強くても負けるつもりはない。決して屈服すること無く、また先走って粛清される事も無く…、深く静かに潜航するのだ……!