出典:近畿日本鉄道 1)
出典:近畿日本鉄道 1)
近鉄にて約15年ぶりとなる新型一般車が発表されてから約2年が経った2024年。1月初旬時点では形式も含め多くが謎に包まれていますが、いよいよそのデビューも目前に迫ってきました。
他方で、デビューから30年を迎えた既存車両にも、A更新とよばれる大幅な更新を受けたものが登場しており、その姿かたちから来る新型車両もある程度イメージできるように思います。
というわけで、今回はかなり今更ですがいわゆるA更新を受けた車両を見ながら、来る新型車両の特に車内を想像してみたいと思います。
※あくまでただの妄想であり、きたる新型車両に実装される要素の説明では一切ありません。
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新型一般車の車内 出典:近畿日本鉄道 1)
A更新車の車内
今回は、
・座席まわり(座席、袖仕切り、握り棒)
・側窓まわり
・ドアまわり
・天井まわり(吊り手、照明等)
を見ていき、あわせて新型一般車の想像をしてみたいと思います。
・座席まわり
出典:近畿日本鉄道 1)
今回の新型車両では、ロングシートとクロスシートの切替が可能なデュアルシートが搭載されるということです。
先程の画像もそうですが、現在A更新を受けた車両にはロングシートしか存在しておらず、座席についてはそもそも別物となっています。
が、その配置について現時点で運用されているデュアルシートを採用したいわゆるL/Cカー同様、車端部がロングシート固定となりデュアルシートとロングシート2種類の座席でデビューするものと思われるため、概観ののち現時点で存在する両者と一緒にみてみます。
・概観
大型化された袖仕切りはイメージと形状が若干異なりますが、座席の形状によるもので新型車両でもほぼ同様のものが登場するかと思われます。
また、イメージで網棚は先端部が握れるものとなっており、握り棒はそこまで到達するものとなっていますが、A更新ではこれまでの更新車同様天井まで到達するものとなっています。これはおそらくA更新車では網棚の交換が行われておらず構造上こうするしかなかったためだと思われます。
ここで、A更新車と同様の網状で荷物を置く事だけに存在するような網棚を採用するとも考えられず、イメージと同様のものが採用されるかと思います。
で、見たまんまではありますが、その場合だと南海8300系に近いものが採用されるかと思います。
南海8300系
握り棒については到達点がそもそも天井か網棚で異なるためイメージ通り、つまりA更新と新型車両で別ものになると思われます。また中間の握り棒もデュアルシートであるためまず採用されないでしょう。が、仮に将来ロングシート仕様のものがデビューした際、採用されるものと思います。
その場合、6人がけの中央部に1本、A更新車で採用されたものに近い湾曲のそこまで大きくないものになるのかなと思います。
また、イメージによると優先席部の色分けがなされていませんが、こちらも実車では更新車と同様凹凸のない黄色になるかと思います。
また、A更新では新型車両のプレスリリースやイメージでも言及されている花柄のモケットが採用されており、こちらはそのまま同じものになると思います。
他方、
現時点で運用されているデュアルシートです。
出典:近畿日本鉄道 1)
イメージと全く同じものが出るわけではありませんが、これをみる限り肘置きとヘッドレストが変更されており、少なくとも現行と同じものとはならないことが予想されます。
ただ、このイメージをそのまま受け取った場合、座面のくぼみが薄いか無いに等しく、その場合考え方としては「長距離乗車でゆったり座れる」、最近登場した「ひのとり」のそれに近い、くぼみ形状ではなく厚めのクッションを用意したものになると思われます。
が、その場合特にロングシート時では乗車マナーの面で不都合が生じることも予想されるため、イメージとは異なるものになる可能性も考えられます。
一方のロングシートですが、こちらはイメージで姿が見えず現時点で全くの未知となっています。
が、従来どおりであれば優先席部がロングシート固定となる場合、以下のいずれかになると思います。
1.シリーズ21と同等のバケットシート
2.阪神5700系あるいは東京メトロ17000系(8連)に近いもの
3.デュアルシート部と同等のものかハイバックシート
1はやわさが抑えられ、くぼみはやや薄めながらセズリの絶妙な形状により姿勢の保持がしやすく安定性もあるものです。
2については完全に同様ではないものの、概ね固め基調で薄いくぼみが存在するもので、この場合セズリは阪神のそれに近いものになるかと思います。
ただ、これについてはメーカーとなるだろう近畿車輛製の車両でよく見られる形態というだけにすぎず、実装の可能性はかなり低いと思います。
3はいわゆるシリーズ21を除いた、5800系や改造によるL/Cカーで見られるものです。
シリーズ21(3220系)
阪神5700系
東京メトロ17000系(8連)
優先席部に採用されることもあり、特に1,2に関しては加減速時の安定性、立ち上がりやすさに配慮された座席になるかと思います。
余談ですが、A更新車ではモケット以外従来と同様で、座面がやわく、低く、セズリにたいして異様に短い、お世辞にもいい座席とは到底言えないものとなっています。
・側窓まわり
ろくな写真がありませんでしたが、側窓はUVカット効果のあるだろう濃いグリーンガラスとなっています。
この濃さだと正直ブラインドも必要ないくらいで、更新ついでに撤去するものと思っていましたが、すこしきれいになったようです。
ブラインド
クロスシートでも利用される前提であるためブラインドは設置され、かつフリーストップ式のものになると思われます。
ただ一方で、イメージを見る限りクロスシートでは座席にたいする窓割りが微妙であったり、座席配置にかかわらずフリースペースが窓にけっこう干渉しているようにも見え、かつ更新に際して採用されたグリーンガラスが相当に濃いため思い切ってブラインドを廃止する線もあるいは考えられます。
もっとも、クロスシートの窓割りは今回の新型車両に限った話じゃないですし、窓への干渉もそこまで影響しないでしょうけども。
壁面の木目調はそのまま採用されると思います。
・ドアまわり
まず新型車両では大幅な変更点として、車内保温のため長時間停車時に乗客がドア操作を行えるボタンが設置されるようです。
関西圏の私鉄では思いつくところで山陽電車の新型車両や阪神の新造、更新された各駅停車向け電車でみられますが、近鉄でも採用されるそうです。
実際、通過待ちや始発駅での長時間停車はよく見られる印象で、ところによってはドアを手で開け閉めしているそうなので効果はかなりあると思います。
他方で、「戸閉力を制御することで、閉まる扉に荷物が挟まった場合に抜き取りを容易にします。」1)との記述があります。
電車のドア開閉には大きく空気圧を利用するものと電気で制御する2種類があるそうですが、近鉄では現在に至るまで前者が主流となっています。
かつ、前者ではドアを閉めた瞬間から数秒間はドア間に隙間を作り、何かしらが挟まった場合引き抜きやすくする「戸閉減圧機構」というものがあり、従来車から大幅に機構を変えない場合これが採用されるものと思われます。
ただ、屁理屈みたいな話ではあるもののこれが戸閉力の「制御」といえるのか。また、「省メンテナンスを考慮した機器の導入」という記述と併せると、従来の空気圧を利用するものと比較し制御しやすく省メンテナンス性にも優れているとされる電気で制御する機構を採用することも考えられます。
あくまで一例として山手線の新型車両等で採用されたものだと、空気式の機構では必要となる配管が大幅に減り、保守の効率性も向上するということで省メンテナンス性に優れ、空気式では安全性の向上についてもひと手間かかるところ、電気式では比較的容易に成せる。なおかつ従来の電気式と比較しても安全性や効率性は向上しているということで、空気式から転換するメリットは大いにあると思われます。
一方で、ドアの機構を「省メンテナンスを考慮した」ものにするとは明言されておらず、そもそも適用させるかも不明であること、また直近の「ひのとり」を含め、長年採用されてきたこともある信頼性の面で空気式のまま改良していくことが大きなデメリットとはならず、また全く知らない部分ですが日常的に旧世代の車両と併結して運転され、それの置き換えもすぐには行われないだろう近鉄において機構の中途半端な転換が逆に不都合を生じさせる可能性もぶっちゃけないことなさそうなので、実際こちらがありうるとも思います。
ただ、プレスリリースに記述されているところから見ると、いずれにせよドア周りもA更新車を含めた従来車とは異なるものになると思われます。
ついでに、A更新車でもドアエンジンが変更されたとの声が若干聞かれましたが、こちらは一部多少静かになった程度でもの自体は変わっていないそうです。
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また、ドア上部に大型の液晶ディスプレイが設置されるようです。
出典:近畿日本鉄道 1)
液晶ディスプレイ
こちら、更新車では準備工事の状態がしばらく続いていましたが、最近イメージと同様の液晶ディスプレイが搭載された編成も出てきたみたいです。
これまで申し訳程度に搭載されたものとは異なる、横に広く一部は広告も流される大型のものとなっており、新型車両でも同様のものが搭載されると思われます。
一方、更新車では現時点で片側のドアにだけ交互に設置されたいわゆる千鳥配置となっていますが、新型車両では扉上としか書かれておらず、具体的にどう配置されるかは未知です。
・天井まわり
ここでは主に吊手、照明について見ていきますが、まずA更新車ではこれまで付けられていたカバーが廃され、間接照明となっています。
更新の一環で照明のLED化ついでにカバーから間接照明に転換するものはJR西日本でも見られますが、おそらく天井の構造上そうせざるを得ない事もあるようで、新造車両では直管式のものがそのまま配置されています。
新型車両のイメージを見る限り少なくともA更新車に近い間接照明ではなさそうで、この場合直管式か、手元に画像がありませんが東武70000系に近い、細長いカバーのようなもので覆われたものになるかと思います。
https://www.tobu-kids.com/train/70000.html
JR西日本223系
JR西日本323系
末期のシリーズ21
出典:近畿日本鉄道 1)
末期のシリーズ21を含め、近年の関西私鉄における近畿車輛製の新型車両ではおおむね、カーブを描いた天井とくぼみにはめ込まれたように配置された直管式の照明と、その内側に配列された吊り手が特徴的ですが、イメージを見る限り天井はどちらかというと平坦で、吊り手と照明の配列もずれてはいるものの位置が逆転しており、照明が内側となっています。
近畿車輛製でこの配置、照明の形状にもっとも近いのは東武70000系となっており、イメージそのままの場合当然全く同じものにならないとはいえ、それに近いものになるかと思います。
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他方、吊り手に目を向けると、イメージではドア前が丸形、ドア間と優先席部が五角形のものとなっています。
現時点で五角形のものがL/Cカーと一般車の優先席部に、それ以外の部分に丸形が採用されています。
一般的に三角、五角形のものは丸形に比してラクにつかめる、対して丸形はとっさの場合に掴みやすく、ぶつかっても安全というような利点があるそうです。
それを踏まえると、いわゆるちょい乗り層が溜まりやすい傾向のあるドア前が丸形で、それ以外を五角形とするのは理にかなってると思います。
ただ
A更新車では優先席部も含め、まったく新しい形状の吊り手が採用されています。
出典:三上化工材株式会社 3)
「やさしいつり手」というシリーズのひとつらしく、
出典:三上化工材株式会社 3)
従来のものと比較して使いやすさが大幅に向上しているということで、新型車両でもイメージから変わりこちらが採用されるかと思います。
・総合
「15年ぶりの新型一般車」以上のインパクトを与えた新型車両ですが、それに準じた更新のなされた車両と併せてみてみると従来車と比して大幅に安全面でも空間面でも快適な車両になるかと思います。
将来的に仕様変更がなされるとしてもコンセプト自体は近鉄一般車の新たなスタンダードとして引き継がれると思われ、しばらくすればここ30年近くの近鉄像では想像しえないような光景になってるかと思います。
このあたりで終了とさせていただきます。
ありがとうございました。
・参考
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/sinngatasyaryou.pdf
1) 2024年秋 新型一般車両を導入します. 近畿日本鉄道
2) 鉄道の安全運行に貢献する鉄道車両用ドア駆動システム. 富士電機
https://mikami-kakouzai.co.jp/pdf/Yasashiiturite2020.pdf
3) やさしい吊り手. 三上化工材株式会社