僕は、60年続く「老舗果物問屋」の
長男として生まれました。

果物問屋(市場)で、働く父は
世間とは、ほぼ反対の生活をしていて
時間的に、顔を合わさない毎日でした。

だからこそ、小さい頃の
父との思い出は、ほとんど記憶なく…

唯一、覚えているのは年に数回

市場にある「果物いっぱいの冷蔵倉庫に、
連れていってくれること」でした。

そこは、まるで雪国のように極寒。
林檎やバナナ、オレンジなど
カラフルな果物がたくさん並べられていて
果物の良い香りが室内いっぱいに広がっていました。
子供だった私は、そこに入ると
何故かワクワクしていたことを覚えています。

そして、そこへ行った日は
決まって果物を持って帰らせてくれることも
好きだった理由のひとつです。

実は、私はその果物を自分で食べる以上に
友達にあげることが大好きでした。

理由は、どんな友達にあげても
「すごいすごい!美味しい!」と
必ず大騒ぎしながら、喜んでくれるからです。
幼いながらに、果物問屋の息子であることを
私は、誇らしく思っていました。

と、こんな昔の記憶を思い出したのは…
私が、ウェディングプランナーとして
担当しているお客様に父の果物をあげた時でした。
無邪気な笑顔を溢しながら
「こんな美味しい果物はじめてです!」と
父の果物を褒めてもらった時
「あ、昔にもあったあった!」と
眠っていた記憶が一気に蘇りました。

そして、そのお二人から
「可愛くラッピングしてくれれば、
結婚式の引出物、誕生日ギフトとしても
絶対に人気が出るのになぁ…」と言っていただきました。

しかし、「ぜーったいに無理です笑」と
私は即答しました。

なぜなら、父の職人気質な性格と流行の反対を生きている感性(ストレートに言うとダサいです笑)を知っていたからです。

すると、おふたりから
こんな無邪気な言葉が出てきました。

「だったら、森さんがやればいいじゃん!」
目から鱗が落ちた瞬間でした。

確かに、ウェディングプランナーとして
コーディネートやコンセプトを考えることは
仕事の中でも、特に大好きでした。

もし、仮に私の好きなことで父の凸凹を埋めながら
フルーツをもっとたくさんの人に届けることができれば…
それは、父の果物問屋にとってもプラスになるんじゃないだろうか。

そして、父の果物で誰かを幸せにできたなら
それは、私自身この上なく嬉しいことだと
心が言っていました。

と、こんなことがきっかけで
父の手伝いをすることが決まりました。

これから、ウェディングプランナーとして
働きながら、コンセプトやラッピングなどなど
ちょっとずつ考えていこうと思います。
皆さん、温かい目で見守っていただけたら幸いです。

【次回予告】
「市場の歩み」