「私たちが犬と深い絆を持てるのは、一つには犬が遊び好きで自由奔放であるためだ。人の思惑を気にせずにいられるときの、私たちのように」

『犬があなたをこう変える スタンレー・コレン著 木村博江訳 2011年文藝春秋発行』でコレンはこう語っています。

 

一心不乱に遊びに集中している愛犬を見ていると、私たちも思わず口角が緩んで、ふだんのちょっとした不安や悩みなどは忘れてしまいます。愛犬も笑顔になっている飼い主を見るのが好きで、ますます遊びに集中します。

こうしたことが、私たちと愛犬の絆を深めることになっていると思います。

 

ティティもとても遊び好きでした。

好奇心が旺盛で何にでも興味を示し、とにかく近づいてみて、臭いを嗅いでみて、試してみるを実践していました。

 

小獣猟犬であるテリアは、遺伝子にネズミなどの小動物を捕獲する能力と欲求が植え付けられています。

ネズミ退治の名手には猫がいますが、猫は獲物にそっと忍び寄って飛び掛かるタイミングをじっと待つ作戦を得意とします。

一方テリアは、小獣を吠えながら追い立て、巣穴に逃げ込んだ獲物を頭から巣穴に突っ込んで捕まえます。ハンターはテリアの吠え声を頼りに追跡し、巣穴に潜って小獣を仕留めた犬を見つけ出していました。

 

そのためテリアに求められたのは、ほんの少しの刺激や興奮で吠えることでした。そして身体は短足、筋肉質なものに改良されました。

ウエスティのしっぽが真っすぐで固く頑丈なのは、巣穴に突っ込んで小獣に噛みついた犬のしっぽを掴んでハンターが引っ張り出すためと言われています。

そしてテリアが獲物を仕留めるときは、小獣の首に食らいつき、一二度激しく左右に振り回してその首の骨を折ります。

テリアがボールなどを追いかける遊びが好きで、ボールを咥えて振り回すのは、この小獣の狩りの本能によるものです。

 

したがって、テリアが興奮しやすく、ちょっとの刺激や物音で吠えてしまうのは、元来のテリア種の本能の現れであり、心身共に元気な証拠です。このような性格を変えることはできませんし、ぎゃくに叱ってしまうと、愛犬にとっては為すすべがなく混乱してしまいます。

 

テリアを飼う飼い主は、このようなテリアの本能的な性格を理解し、上手に接してあげることが大切です。

テリアは、いかなるときも辺りに動くものや追いかけるものがないかと目を光らせ耳を研ぎ澄ましていますので、静かにしていてもらいたいときは、できる限りそのような刺激がない場所にいさせてあげることです。

 

コレンにはフリントというケアン・テリアの愛犬がいました。

フリントは好奇心旺盛で遊び好きな性格から、コレンの妻のジョーンをいろいろ悩ませたそうです。フリントは一緒に楽しく遊びたいと思ってちょっとした騒動を起こすのですが、ジョーンはそれを嫌がっていました。

 

当時は住まいの周辺にはネズミが多く出没し、フリントは猫の飼い主も羨むほどの忍耐力と熱心さで、ネズミ捕りに没頭したそうです。

フリントはネズミを仕留めるとその場所に死骸を残していたのですが、ある日の朝フリントは寝ているジョーンを前脚でつついて目を覚まさせました。ジョーンが目を開けてみると、胸の上にネズミが置いてありました。

ジョーンは悲鳴をあげて飛び起き、フリントはそれを見てうれしげに跳ね回り始めたそうです。

自分がついにジョーンを喜ばせるとびっきり素晴らしいことをやり遂げたと思ったのでした。

 

最後にコレンは、こう結んでいます。

「ほかのテリアたちと同じく、フリントの人生訓はこうだ」

「あれもこれもがだめならば、もひとつおまけにやってみよう!」

 

進めー!

 

こんにちは。遊びませんか

 

足が届かないところはぜったい嫌

 

いろいろやってみよう

 

山は好き。ときどき獲物の臭いもするし

 

冬もまた楽し