【REUTERSより抜粋引用】
米中経済指標の悪化が鮮明となり、ギリシャ再選挙後の欧州情勢が深刻化した場合に景気悪化の緩衝剤となる国がなくなりつつあります。このため各国の金融緩和と通貨安競争が加速する「6月危機」の気配が濃厚となり、日銀への追加金融緩和の圧力は高まりそうです。
----------------------------------------------------
ただ金利はすでに大きく低下、その効果はすでに減衰しているため、世界各国が痛みを緩和するための金利や為替を通じた相対価格の調整は「円高」という形に集約されることになりそうです。6月危機のあおりを受けるにも関わらず「円」は過大評価に苦しむ展開が予想されます。
<米中経済は陰りが鮮明、世界経済見通し下振れ>
6月に入り、日本経済への悪材料が急速に目立ってきました。このところ唯一好調だった輸出先は米国ですが、5月の米国内自動車販売は今年初めて1400万台を割れ、予想を大きく下回りました。5月雇用統計が精彩を欠く内容だったこともあり、米個人消費に不安を感じさせる内容です。最大の輸出先である中国向け実質輸出も昨年秋以降2四半期連続で減少を続けてきましたが、足元でこれまで底堅いとみられていた小売販売も大きく落ち込み、専門家を落胆させています。こうした米中経済の指標悪化を受けて、JPモルガン証券では、2012、13年の世界経済成長率を下方修正しました。
----------------------------------------------------
つい1週間前まで、日本経済は内需に加えて当面米国向け輸出がけん引し、年後半には中国経済の回復で外需も回復軌道を取り戻すというのが、大方の見立てでした。特に、中国経済については、今や世界の成長の源泉であるだけに、RBS証券チーフエコノミストの西岡純子氏は「日本経済の今後について、下振れリスクとして懸念すべきは中国経済の動向」だとみています。
アジア開発銀行研究所の河合正弘所長は、ギリシャ再選挙後のアジア情勢を非常に懸念するとのことですが、それは、輸出減速に拍車がかかることに加えて、香港経由で中国企業に投資されていたホットマネーがこれまで以上に引き揚げられる可能性もあるためです。「中国は景気減速に対応して金利引き下げや内需振興策など政策を打つ用意があるが、ギリシャの再選挙後の情勢次第では非常に深刻な事態に陥る可能性も懸念される」と憂慮を隠hしません。
<グローバルな金融緩和避けられず>
世界経済全体が減速感を強める中、最大の焦点となるギリシャの再選挙がその後の世界経済を一層深刻な事態に陥れる「6月危機」に対する警戒感が一層高まっています。選挙で反緊縮派が勝利すればギリシャの欧州離脱シナリオが現実味を帯び、スペイン、イタリアへと波及すれば欧州の安全網で用意された金額では収集がつかない事態に陥り、金融システムも動揺することになります。
----------------------------------------------------
こうした中で各国とも追加金融緩和を実施するとの見方が強まっています。JPモルガン証券・チーフエコノミスト・菅野雅明氏は、日米欧の中央銀行は金融追加緩和に早晩踏み切る見込みだと予想。すでに市場ではそうした動きを織り込み、対ユーロはもちろん、対ドルでの円高が進行。第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「世界各国の相対価格の調整は全て円で調整することになりそうだ」とみています。
----------------------------------------------------
日米欧がいずれも緩和方向に舵を切るとしても、円の独歩高となりやすいのは、各国の中では復興需要もあって雇用環境や消費動向など内需の好調が極めて明るいこともあるが、デフレの国の通貨が上昇しやすいという定石通りの動きとなっているとの理解もできる。
<「円」の過大評価、止められず>
今のところ為替介入への警戒感が短期的に円の上昇を食い止めている面もあるでしょうが、日銀の金融緩和が為替に与える効果への期待は小さいようです。菅野氏は「金融政策の景気下支え効果が次第に減衰していく傾向にあるのは否めない」と指摘します。「イールドカーブが急速にフラット化する状況の下で、長期金利をさらに低下させることは可能だが、金利低下幅は次第に縮小し、長期金利がもうこれ以上下がらない水準まで低下するのは時間の問題かもしれない」ということです。日銀自身、追加緩和を繰り返しても円高圧力をうまく止められないことは百も承知。高水準に積み上げた資産買入基金をもっと上積みしても、ドル買い圧力に寄与しないため、ごく短期的なインパクトしか行使し得ず、基金の積み増しを繰り返すことになることは、金融市場参加者もわかっています。
----------------------------------------------------
経済ファンダメンタルズは「雇用と消費は日本だけが世界の中で特別に良い状況」(政策当局)にあるとはいえ、米中経済の減速が足を引っ張り、円高で失われつつある企業収益を考えれば、世界の痛みを一手に引き受ける「円」の過大評価には首をかしげたくなる。政府はすでに円高を「一方的な動き」(野田佳彦首相)とみているが、これまでの追加緩和や介入でも円高バイアスは止まっておらず、有効な円高対応策を見つけられずにいます。
