氷点 | RYUの生き方、逝き方

氷点

東海林さだおさんという漫画家、エッセイストがおられるらしい。

なぜ「らしい」なのかは漫画は基本的に読まないせいか、故中島らも氏が、「砂をつかんで立ち上がれ」(集英社)でこの作家を紹介するまで知らなかったからだ。

中島らも氏いわく「人間のミジメなあり様をこれほど執拗に何十年も描き続けてきた漫画家は、東海林さだをを除いて誰もいない」らしい。

昨日の記事でミジメさについて書いたから東海林さだおのミジメさを検証してみたい。

どんなミジメさかというと、東海林さだおの「氷点」という作品の要約を例にとって書くと、





「支社」と看板のかかったビルから中年のサラリーマンが出てくる。

髪の毛がかなり淋しい。

50歳前後だろうか。

そとは雪がかなり降っている。

男は思う。

「今夜もいつもの“ひさご”に寄って、里いもの煮っころがしでお銚子を2本、しめくくりに焼きうどん、とこんなとこでいくか」

ここで男は本社から飛ばされて北の支社に単身赴任できたのだということがわかる。

「で、アパートに帰ってコタツにあたりながらテレビを見てションベンして寝ちゃう、と」と思っている間にひさごの前につく。

男はハッとする。

ひさごのガラス戸に張り紙がしてあって、

「雪のため本日臨時休業」

と書いてあるではないか。

男のもくろみはガタガタ崩れてしまう。

里いもの煮っころがし、お銚子2本、焼きうどんの予定がガタガタこわれてしまう。

しかし男は負けない。

自分の手でこの予定を敢行しようとするのだ。

アパートに着く。

電灯をつけ、ガスストーブに火を点けた男は、ちゃんちゃんことももひき姿になって台所に立つ。

そして流しの下から里いもを取り出して、皮をむき始める。

里いもをむきながら男は、

「グス」

と、少し落涙してしまう。

しかし、やがてコンロの上の鍋の中で里いもが、ぐつぐつと煮え始める。

裸足の足先が冷えて、そのせいか男は尿意を覚える。

でトイレにいって小便をする。

トイレから帰って、またコンロの前に立つ。

ここが大事なところなのだが、男はモノをしまうのを忘れて、ももひきから露出させたままになっている。

露出させたまま男は、「んーと今夜の献立は、里いもの煮っころがし、おしんこ、ワンカップの日本酒。素うどん。だいたいこんな感じでいこう」

と考える。

しかしすぐに気がかわる。

「まてよ、いっそめんどうだから」とうどんを里いもの鍋の投入してしまうのである。

ついでに「いっしょにすすりこめば同じだから」

とワンカップも鍋の中に投入してしまうのである。

そして男は台所に立ったまま、この三種混合鍋からずずーっとうどんをすすり込むのだ。

このとき、男はまた落涙する。

泣いたせいで手元が狂って、うどんが大量にこぼれてしまう。

そのうどんは、男の露出していたモノにからまる。

男は「アヂアヂアヂ」

と絶叫し、バスルームの水風呂に腰から下をつからせ、

また静かに泣くのであった。



これが「氷点」のあらましである。

一読してみたいような、したくないような作品である。

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